ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第二章 毒娘、王都デビューする

39:準備を整えたので本格的に冒険者はじめます

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 冒険者ギルドの二階へと階段を上ると、一気に人の気配が少なくなった。
 二階は資料室の他に、会議室などの個室が並ぶ。どうやら利用者が少ないらしい。
 通路の奥に『資料室』と書かれた扉を見つけたので、そこへと入る。

 ギィと響く音を立てて扉を開けると、そこはまぎれもなく『図書室』だった。

 図書館ほどの大きさはない。が、棚に並ぶ本の数は、今まで私がこの世界で見て来た全ての本より多いと思う。
 オーフェンの資料室とはレベルが違う。
 思わず「おお」と口に出してしまった。

 入ってすぐに受付のようなカウンターがあり、中には職員だろうお爺さんが静かに読書していた。


「おっ、お嬢ちゃんたち新規登録したばかりかい?」

「いえ、一昨日に王都に来て拠点変更したとこです。近隣の魔物の情報が知りたくて来たんですけど、何か資料とかありますか?」

「おお、それは感心じゃな。最近は調べもせずに依頼に当たる冒険者が多くてのう」


 そうお爺さんは嘆く。
 どうやら下調べをする事自体、他の冒険者はあまりしないようだ。
 受付で少し聞いたり、先輩冒険者に聞いたり、もしくは何も聞かなかったり。
 そうして依頼を受けて失敗する若年冒険者が後を絶たないと言う。

 王都でこんな調子だと考えるとオーフェンのギルドは講習の教官がちゃんと教えてくれていたから、良い所だったのかもしれないね。
 集まる新人の数の問題なのかもしれないけど。
 というか王都のギルドで講習をやっているかどうかも知らんけど。


 憧れの冒険者になれたからってイキってるガキどもにはビシッと言ってやらねばなるまい。
 危険な冒険者だからこそ安全第一に考えなければいけない。その為の下調べは基本だと。

 無知のまま突貫とか自分の命が惜しくないのだろうか。リスクを考えない若者が多すぎる。私は悲しい。


「いや、ピーゾンさん、山賊の住処でダンジョンに突っ込んで……」


 あーあー聞こえなーい。

 コホン。気を取り直してお爺さんに資料室のルールを聞いた。
 本の貸し出しはしていないらしく、その代わりメモなどに写すのはオーケー。
 破損させた場合の料金は本によって変わるらしい。
 あと飲食禁止。ここら辺はオーフェンと変わらない。

 とりあえず王都近郊の魔物の情報が載っている本を教えて貰う。
 その本を探す時に色々と本棚を見て回ると、なるほど冒険者に必要な資料が満載だということがよく分かった。
 そしてオーフェンとの蔵書の差に驚く。


「あ、ジョブとスキル大全だって。これ欲しいなぁ」

「ダンジョンの情報もダンジョンごとに本になってますよ。これ売ってるヤツと違うんですかね」

「王都グルメ特集……見たい」

「ああっ、トンファーマスター・ジャッキーですって! 何この英雄譚!」


 だんだんと横道に逸れていく私たち。
 読みたい本が多すぎる。ここは日を改めて来たいところだ。
 今は魔物の情報を洗いださなければ。

 そうしてお爺さんオススメの魔物資料を探し出す。
 冒険者ギルド王都セントリオ支部発行となっているので、おそらくこれだろう。
 私たちは席に座って、その分厚い資料を広げた。


「うわっ、量多すぎ」

「これ範囲が広いんじゃないですか? とりあえず王都近郊だけに絞ったほうが良さそうですよ」

「だね。手分けして情報をメモろう」


 その資料は近隣の平原や森の他に、さらに遠くの山や谷や丘陵などなど、とにかく王都の依頼に出されそうな場所を全て網羅した魔物情報誌となっていた。

 おまけに魔物の特徴、どういった攻撃をしてきて、何が弱いだとか、討伐証明部位がどこだとか、冒険者的にありがたい情報が目白押し。

 つまりはメモる量が半端ないので、とりあえずは東・西・南の各城門から出た先、すぐに出現しそうな魔物のみをピックアップすることにした。まだ遠出するつもりはないからね。


 さらに採取の情報も必要だ。
 こちらもお爺さんに教えて貰い、資料を見せてもらう。
 これもまた種類が非常に多い。私の日課であった毒草(ネネリ草)も王都近郊に生えているらしい。

 毒草以外にも薬草類や木の実、花、茸、鉱石など、王都近郊だけをピックアップしてもかなりの種類がある。

 しかし、こんなに便利な資料があるとは……こんなもん宝の在り処が分かった宝探しみたいなもんじゃないか。
 なぜ他の冒険者たちは利用しないのか、勿体ないねぇ。


 こんな感じでポロリンと手分けしてメモる時間が続く。
 途中、お爺さんからメモ用紙を買い、かなりの情報量になった。
 王都近郊の討伐・採取依頼だけならば、これで問題ないだろう。


「ほっほっほ、よぉ勉強しとったのぅ」

「疲れました……」

「お邪魔しました……」

「またいつでも来るがいいぞい」


 そうしてやっと資料室を出た時には、すでに太陽が真上に昇っていた。
 何時間メモってたんだ……討伐依頼以上に超疲れたんだが……。
 受験勉強だってここまで真剣にやらなかったってのに……。





 ともかくギルドの酒場スペースで昼食を……というのは止めておいた。
 こないだギャル男に絡まれたので良い思い出がない。

 そのまま南の大通りを歩き、露店で売っているオーク串とコッコ肉と野菜が挟まったナンサンドのようなものを買って、簡単に済ます。


 で、結局ギルドでの依頼は受けずに、適当に狩ろうかという話になった。
 今日の主目的は自分たちの新しい装備を試す事が第一。
 その上で狩った魔物も解体し、ギルドへ帰って来た時に依頼が残っているようなら、それを報告しようという事だ。

 南側を選んだのは、来る時に通ったのが南門だからだ。一応知っているというだけ。
 ちょっとした平野と丘陵、そして近くに森があったはずだ。


 私たちの戦い方はいかにも「固有職ユニークジョブです!」って感じだから、あまり人目に付きたくはない。
 となるとやはり森が望ましいんだけど、私の魔剣がねぇ……大きいからねぇ……森は戦いにくい。
 ま、人目につきにくい場所を探すか、森の中で拓けている場所を探しましょうという事です。





「……ピーゾンさん、動きが変なんですけど」


 魔剣でコボルトの腹を真っ二つにし、「うーん」と今の動きを反芻していたところで、ポロリンがそう言う。
 私としては動きどうこうよりも、魔剣の威力が高すぎて魔物の素材をダメにしてしまうのが悩ましいのだが。
 腹を斬ったはずのコボルトなんて胸から腰にかけてミンチになってるじゃないか。


「というか、よくそんな大きな剣……鉈持って動けますね。重くないんですか?」

「言い直さないでよ。重いよ? でも私的にはちょうど良いかな。前の鉈とか木剣は軽すぎたし」


 VRMMOの『クリーチャーハンター』は装備重量で動きに制限がかかるのが常だった。
 私は大剣を愛用して動きにくい中で回避特化プレイしていたので異端と言えば異端なのだと思う。
 グロい上に重量設定の細かさとか正確な動きを要求されたりとか、そんなんだから『変態ゲーム』とか言われてたんだけど。

 まぁそれはともかくその動きをなぞるに当たって、片手剣タイプの鉈とかは軽すぎたのだ。
 そこへ行くと今の『魔鉈ミュルグレス』はちょうどいい。

 おそらく普通に売っている大剣よりもだいぶ軽い。分からないけど多分魔剣だからだろう。
 とは言え当然、片手剣よりだいぶ重いわけで、そこら辺が私の感覚としてはちょうど良いものなのだ。


「なんで大剣持ったまま速く動けるのかも謎ですし、避けられるのかも謎ですし、振れるのかも謎ですよ」

「謎ばっかだね」


 動けるのは単に敏捷値が高いからだよ。【毒殺屋】補正で敏捷ばっか上がるからね。
 避けるのと振るのはPSプレイヤースキルだから説明が難しいんだよなぁ。


「大剣は重さがあるから、その重さを利用して避けたり振ったりしてるんだよ」

「……意味が分からないです」

「うーん、自分を軸として武器を振るんじゃなくて、時々武器を軸にして自分を動かす感じ」

「……意味が分からないです」


 ダメかー。通じないかー。
 ま、感覚的な事だから伝わらないのもしょうがない。


「私のほうはいいけど、そっちは? トンファーと武術着の調子は?」

「すっごくいいですよ! 動きやすいし振りやすいし、威力も高くなってます!」


 チャイナに付与された<ウォークライ>も試してもらったけど、どうやら戦闘時に「うおおおおお!!!」って感じに自分を鼓舞するだけで発動するらしい。
 スキル名を発声しないタイプのアクティブスキルって事かな。

 しかしポロリンがやると「はぁーっ!」とか「やぁーっ!」って叫ぶから非常に可愛らしい。
 それで発動しているから何も言えない。本人は乗り気だし。


「ほぉ、そりゃいいね。防御面も知りたいとこだね」

「ここら辺の魔物だとまだくらう事はないですかね。ピーゾンさんの防具は?」


 私のウサウサセットも防御力が極端に上がったけど試せていない。
 単に攻撃をくらいたくないからだ。
 グローブについた<状態異常耐性>も試していない。
 自分で毒るのは嫌な思い出しかないからだ。


「ブーツの<跳躍強化>は便利だね。回避に便利だし、ピョンピョンして面白い」

「面白さは別にいいんですけど……」

「ケープの<気配察知>は言わずもがな」

「それが一番の収穫かもですね」


 <気配察知>は生物の気配が分かるのだが、より集中すればかなり広い範囲で、なんとなく分かる。
 まぁ常時その状態をキープ出来るわけでもないので、あくまで可能という話だけど。

 敵意とかも何となく分かる。
 狙って来る魔物とか分かるし、冒険者ギルドの人混みで奇異の目で注目を浴びる中、悪意のある人間も混じっていた。
 だから昼食を酒場でとりたくなかったんだけども。

 ちなみに<気配察知>を使っている時はウサミミがピコピコする。
 これチャームポイントです。


「ピコピコして目立つのが弱点ですよねぇ……」

「チャームポイントです」


 常時ピコらさせる所存。


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