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第三章 毒娘、色々と出会う
71:毒殺屋ですが不法侵入する担当に困っています
しおりを挟む「いやぁ良いのが買えたねー。最高だわ」
「さすがマリリンさんですね。散財しましたけど。アハハ……」
「もふもふ」
七日前と同じ宿にチェックインすると、どうやら部屋は空いていたようだ。
以前とは違うが同じ二階の三人部屋。
金はあっても部屋は節約。ポロリンを男とは見なしていないのでね。
夕飯まで時間があるので、部屋で時間を潰すつもりだ。
なんせこちとら遠征帰り。荷物も置きたいし手入れもしたい。
そんなわけで三人でワイワイと話しながら部屋へと着いた。
ギィ……
「よお、おかえりー」
「ご無沙汰しております、皆さま。この度は――」
……パタン
つぅぅ…………あ、あれ? デジャブかな?
「えっ、今の……えっ? ボクたち部屋変えましたよね? あれ?」
「ん? リーナ?」
「ポロリン、ネルト、私たち疲れてるのよ。見てはいけないものが見えてるんだわ」
ガチャ
「そういうのいいっつってんだろ、さっさと入れ」
「帰れバカ! 変態! 犯罪者! 独身!」
「おまっ! 辛辣ってレベルじゃねーぞ! て言うかなんで独身って知ってんだ!」
「あんたみたいな変態に嫁なんか来るはずないでしょうが! 孤独死しろ!」
「ひどっ!」
そんなやりとりを部屋の前で繰り広げたあと、ポロリンに促されるように部屋へと入った。
なんなんだこいつは。国はこいつを危険視しろ。私に監視つけてる場合じゃないぞ。
って言うか何で決めたばっかの部屋ですでにくつろいでんだよ。
まさか宿と管理局が結託してるんじゃないだろうな?
と、内心で悪態をつきつつ、丁寧な所作で出迎えるリーナと挨拶を交わす。
当然の権利のように椅子を占拠されているので、荷物をドサッと置いてベッドに腰かける。
「改めましてこの度は急な訪問、申し訳ありません。わたくしもアローク様にご無理を言いまして来た次第です」
「久しぶり。リーナは悪くないよ。このおっさんが勝手に部屋に侵入するのが腹立つだけだから」
「おっさんじゃねーし。お前そうは言うけどな、殿下を隠してここまで連れて来るのも大変だったんだぞ? 食堂で待たせるとか出来るわけねーだろ。騒ぎになるわ」
「また私たちが王城に行けばいいでしょうに」
「いえ、ピーゾン様、わたくしから出向く必要があったのです。スキル考察にご協力頂いた上、今回も出向かせるわけには参りません」
リーナは真剣な顔でそう言う。
この娘は生真面目すぎるんだよなー。金髪ドリルも言ってたけど。
別に王女様に呼ばれりゃ行きますよ。知らない仲でもないんだし。
「そんで今日の用件は? この前のスキル考察の進捗?」
「ええ、おかげさまで数日ではありますが随分と解析が進みました。丸一年停滞していたものが、瞬く間に解析されていく……全てピーゾン様のおかげです」
「管理局もパニックだったぞ。もちろん学校も国も、な」
私がした事は意味不明だった<タンポポ乗せ>の発動条件の発見。
それと<パッケージング>の可能性の提示だね。
これしかしてないけど世間的には大発見だったと。
まぁ特に<パッケージング>はなぁ。
「<タンポポ乗せ>はどうやら『劣化速度を落とす』効果のようです。生肉や魚などでも試しましたが現段階で腐っておりません」
「ん? それ、とんでもなく長くない? 『劣化速度を落とす』じゃなくて『劣化しない』じゃないの?」
「いえ、僅かながら劣化が始まっているようです。それでも冷蔵の魔道具で保管するよりも若干長く保つようです」
へぇ、それはすごいじゃん。じゃあタンポポ乗せて冷蔵したらすっごく保存できるって事でしょう。
流通革命起きるんじゃないか?
ますます危険な存在になるねぇ。<パッケージング>と合わせ技で。
タンポポの力ってすげー!
「それと<パッケージング>ですが、効果範囲は限られるようです。少なくとも鉱山に触れて宝石を抽出するような事は出来ませんでした」
「そりゃ逆に安心したよ。金鉱石とかはやった?」
「はい……純金が抽出できました」
「出来ちゃったか……」
「はい……」
うわぁ……いや、確かに超便利で短期的な国益になる事間違いなしなんだけどさ。
何がまずいって色々と応用が利く上に、他国とかに知られたら拉致対象ナンバーワンでしょう。
分かりやすく利益を生むような能力なわけで。
おまけに国益だからって純金抽出に使いまくったら国の鍛冶産業に大ダメージだよ。
結果的に国益どころか衰退するんじゃないかな。
「国王陛下とかは知ってるの?」
「もちろんです。スキルの活用については長期間の議論と検証が必要になると。くれぐれも軽々しく扱ったり、その上で利益の出るものを市井に流すような真似は慎むよう、わたくしも厳重注意を受けました」
「そりゃそうだよね。陛下が理知的な人で良かったよ」
「俺も同席したが大変だったぞ。『うちの娘がものすごいスキルを得た』って喜んだと思ったら『よくよく聞いたら何このスキルやばい』ってさ。上がり下がりが激しいの」
国王陛下に会ったことはないけど何となく想像つくわ。
私もまさか【サシミタンポポ】がここまで厄介な職とは思わなかったしね。
私の場合【刺身にタンポポを乗せる仕事】のイメージが強すぎるのかもしれないけど。
あれ、そもそも戦闘職じゃないし。それを言ったら【セクシーギャル】もだけど。
「まぁ時間かけて検証とかするんでしょ? それこそ学校もあと二年もあるんだし、国でも本腰入れて考察やら検証やらするでしょうよ。じっくりやってスキルの使い方に関しては国の指示を仰ぐ形でいいんじゃないの?」
「本来ならそれが正解なんだろうな」
「違うの?」
「えっ、お前、こんな国家機密を聞いた上で逃げられると思ってるの?」
…………は?
「ピーゾン様、そしてポロリン様、ネルト様。わたくしを是非ともパーティーに入れて頂きたいのです」
「つまり最速でレベルアップとスキル考察・検証が出来る環境に身を置く、と。ピーゾンが近くに居る環境で戦い続けるのが一番だってさ。殿下的には」
……は、謀ったなああああ!!!
「おお、リーナと一緒」
「えっ、だ、大丈夫なんですか? 冒険者ですよ? 学校はどうするんです?」
ポロリン! よくぞ言った! そうだそうだ、お前学生だろうが!
それに冒険者なんて王族どころか貴族がなるもんでもないぞ!
王族のお遊びじゃねえんだよ! こっちはこれでおまんま食ってんだ!
「学校に関してはすでに卒業資格を得ております。定期テストも含め、今後一切出る必要はありません」
「殿下、超優秀だから。一学年の時点で三学年卒業までの学力持ってたし、武力にしても上級生に勝てるやつが居ねえよ」
この優等生がああああ!!!
「冒険者になる事も問題ありません。わたくしは王女である前に一人の国民。一国民が冒険者になるのに何が問題ありましょう」
「これについては殿下が陛下を説得しまくった感じだ。察してくれ。そして諦めてくれ」
察しないし諦めたくないんですが?
だってさ、リーナがパーティーに入ったら歩いててもギルドでも「ダ、ダンデリーナ第七王女殿下!?」「ははぁーっ!(平伏)」ってなるでしょうよ。
ただでさえ私たち噂されてるらしいのに、ますます話題沸騰になるわ!
私もうこれ以上目立ちたくないんですぅ!
えっ広告塔になる件はって? そういう次元じゃねーだろ! 王女なめんな!
と、ひとしきり脳内で文句を言ってみたけど、これ無理なんだろうなー。
リーナは超真剣に国と自分の職について考えてるし、これで断ったら可哀想だし。
つーか、断ったら「何うちの娘の頼み断ってんだアアン?」って顔も知らない陛下が出て来そうで怖い。
不敬罪がありえる王政怖い。
色々とデメリットは浮かぶが、一言で言えば「リーナが王女様だから」って事だ。
私たちは今現在も目立ち過ぎている。自覚はある。
可愛いもの着たいし、有能な装備も使いたいから、ファンシーを改めるつもりはないが。
さらに言えば固有職だからと狙われた事もあるし、私が魔剣を持っている以上、命を狙われる事もあるかもしれない。
Aランク貴公子のストレイオさんもそう忠告してたしね。実際そういう事もあるんだろう。
さらにさらに言えばポロリンが可愛すぎて男からは注目の的だ。
私の地獄耳によれば、すでにポロリンの名前はギルドに広まっている。私とネルトは「ウサギ」「黒猫」呼ばわりなのに。
そんな中に「王国一の美姫・ダンデリーナ第七王女殿下」が入ってみろ。
ますます目を付けられるし、ますます狙われるんじゃないか?
王女様を危険な目に遭わせるのも……それを言ったら魔物と戦えないか。
まぁいずれにせよ管理局の監視体制は強化されるのかもしれないね。
逆にメリットは『優秀な前衛物理アタッカー』だという事だ。
私が魔剣を持った事で『物理アタッカー』の役割を担ってはいるが、魔剣しか装備出来ないから、これ以上の攻撃力上昇は望めない。
私たちがパーティーとして成長し、アダマンタイト装備とかになった時、私の武器だけが取り残される事になる。
やはり私はパーティーの役割として『デバッファー』が良いのだろう。
となると、リーナの加入は大きい。
学校でも主席を務めるほどの実力者だ。戦闘に関しても護衛依頼で見てるし。
おまけに<タンポポ乗せ>と<パッケージング><解体>はパーティー活動をする上で有用。
パーティーメンバーに居てくれたら便利だなーと。
そんなメリットとデメリットが頭の中で交錯する。
天秤は揺れ続け、そして――。
「はぁ」と溜息ひとつ。私は頭を抱えていた手を下ろしてリーナを見た。
うん、そうだね。リーナは良い子で仲間にしても問題ない。よし!
「分かったよ」
「! ピーゾン様! それでは……!」
「うん、リーナを【輝く礁域】に――
と、そこまで言いかけて、部屋の扉がバーンッ!と開かれた。
何奴!? と皆が入口に目を向けるとそこには……
「ちょおっとお待ちなさぁい! ワタクシも入りますわ!」
……なんか扇子広げた金髪ドリルが居た。
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