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第三章 毒娘、色々と出会う
72:新人パーティーですがメンバー増強が止まりません
しおりを挟む「いえ、結構ですのでお引き取り下さい」
「んまっ!?」
何だろうかこの金髪ドリルは。いきなり現れてパーティーに入れろと?
おまけに何だっておっさんと言い、ドリルと言い、とったばかりの部屋に勝手に入ってくるのか。
「なんでですの! ダンデリーナ様は入られるのでしょう! ワタクシを入れてもパーティーは五名! なんの問題もございませんでしょう!?」
「えっと、何となく嫌だ」
「曖昧ッ!?」
正直言うと知らない仲じゃないし、主席のリーナに次ぐ次席なんだから当然実力もあるって分かってる。
少なくともこの二人はあの学生たちの中でトップレベルだろう。
おまけに斥候職だし、私たちが望む『残りのパーティーメンバーの役割』に該当している。
固有職だからお互いに秘密を守りやすいし、言う事ない。
ただねぇ。
王族を入れた上に公爵令嬢でさらに長子でしょ?
金髪ドリルで常時テンションアゲアゲで高笑いするし、さらに目立つ事請け合い。
もう厄介なのが目に見えてるんだよねぇ。
「だってさ、リーナは冒険者になる理由を聞いたから納得出来たけど、サフィーさんは別に冒険者になる必要ないでしょ? リーナが居なくなるんだし主席とれるじゃん。学生のままでいいんじゃない?」
「ダンデリーナ様が居ない学校で主席をとっても意味ないですわっ! それにワタクシも卒業資格ならばすでにございます! 何の問題もありませんわ!」
「リーナにも言ったけど、それで冒険者になる事ないじゃない。公爵令嬢が冒険者なんておかしいでしょ」
「ご安心下さいな! 我がストライド公爵家は実力主義! 学校より鍛えられる冒険者となる事に異議を唱えるものはいないでしょう!」
ホントかよ、とリーナを見る。
これで公爵家から目を付けられたら困るんですけど。こっちは平民なもんで。
助言プリーズ。
「ストライドが実力主義と言うのは本当です。現当主であらせられるロートレク様はサフィー様の御祖父様にあたりますが、おそらく冒険者となる事に異は唱えないでしょう。しかし御父上のロンダート様はどうか……」
「お父様は問題ありませんわ! お爺様さえ納得すれば問題なし! そうでしょう? アローク」
ん? おっさんと知り合い?
顔を向けると、バツが悪そうな顔で「俺に振るなよ」と言わんばかりの表情を浮かべるおっさんが。
「あー、確かに頭r……ロートレク様なら賛成するだろうし、ロンダート様は反対するかもしれんな。ただ最終的にはロンダート様が折れる形になるだろう。いつものことだ」
「そうでしょう、そうでしょう! つまりワタクシが加入する事に何の問題もないという事ですわ!」
おっさんは前職でリーナの護衛をやっていたと聞いたが、どうやらストライド公爵家とも繋がっていたらしい。
サフィーさんとも面識があり、公爵家の人柄とかも分かっていると。
そこから『サフィーさんが冒険者になっても問題ない』と判断しているらしいが……。
どうしたもんかね、これ。
みんなの意見はどうだろう。ポロリン、ネルト、リーナの顔を順に見る。
「ボ、ボクは全然構いません……けど……お姫様のリーナさんだけでも緊張するのに公爵令嬢のサフィーさんも入るとなると、大丈夫なのかなって。ボクただの道具屋の息子ですし……」
「ん。私なんて孤児。でもサフィーが入るのは問題ない。歓迎」
「わたくしは入れて頂いたばかりで口を開くわけには参りません。リーダーであるピーゾン様の決に従いたいと思います。ただ個人的な事を言わせて頂ければ、サフィー様の斥候としての腕は公爵家でも将来的に史上最高となるだろうと目されるほどです。お力にはなれるかと存じます」
そうでしょう、そうでしょうとサフィーさんは頷いている。
ポロリンが恐縮するのも分かるんだよね。ネルトは孤児で私も村娘だし。
ただリーナを入れた時点でそれは考えちゃいけないんだよね。
『王侯貴族を入れたら余計に目立つ』って考えは今更断る理由にならない。
とは言えサフィーさんが必要以上に目立つ存在なのは確かなわけで……金髪ドリルとか、高笑いとか……。
そうして「うーん」と唸っていると、おっさんが口を挟んできた。
「ピーゾン、俺からも口出していいか?」
「聞くだけ聞くよ」
「んじゃ説明するとだな――」
そう言ってアロークのおっさんは国の機密を語り出した。
■■■
ジオボルト王国には王家の下に公爵家が二つある。
一つがベーラム公爵家。代々宰相や重役を担う家柄で、現宰相もベーラム家の当主である。
表立って立つ事が多く、世間的に公爵家と言えばベーラム家を指す。
言わば『表公爵家』。
一方でストライド家は国の暗部を担う。
国の為の密偵・調査・暗殺などを行う暗部組織【幻影の闇に潜む者】の頭領が代々ストライド家当主となっている。
完全なる裏方、言わば『裏公爵家』。
ストライド家に産まれた子は幼い頃から訓練を施され、その多くが『職決めの儀』で斥候職となる。
仮に斥候職でなくとも将来的には【幻影の闇に潜む者】を支える一員として仕える事となる。
次期頭領と目されるロンダート。その長子、サフィーもまた幼い頃から文武を鍛えられた。
同時に同年である王族、ダンデリーナ第七王女の友となるよう近くに置かれた。
これは純粋に幼い子供同士で友達の縁を結ぶという面もあったが、将来的に王女を影から守る役目をサフィーが負うという意味もあった。
近しいが故に守りやすい。友となれば守る意思も強くなる、と。
確かに幼いダンデリーナとサフィーは事あるごとに一緒に遊び、一緒に学んでいった。
しかし王家にも公爵家にも誤算があった。
幼少期より鍛えられたサフィーより、ダンデリーナの才があらゆる面で上回ったのだ。
学問、武術共に、習い始めたのはサフィーの方が早かったが、ダンデリーナはあっという間に追い抜かした。
サフィーとてその才を見込まれて訓練を施され、尚且つ本人も勤勉で努力家という稀有な人材であった。
将来的には【幻影の闇に潜む者】のエースになるだろうと幼少期から期待されていた。
そのサフィーを上回る才能を、最も近しいダンデリーナが持っていた。
確かにそれは素晴らしい事なのだが、同時に誤算であり、歪みをもたらす事になる。
幼いながらもサフィーとて公爵家の人間。
自分がダンデリーナを守る役割というものを自覚している。
なのに、ダンデリーナは自分以上に強く、逞しく、そして華麗に成長していく。
いつしか『友』は『好敵手』となった。
いつしか『守るべき存在』は『超えるべき存在』となった。
サフィーはそれでも腐らず、公爵家の矜持を持ったままダンデリーナの傍にあり続けた。
時に敵意と捉えられるような言動をとる事もあったが、それでも隣に立ち続けた。
公爵家という責任から逃げはしない。
いずれダンデリーナと並び立ち、追い越し、そして自分がダンデリーナを守る為。
……その真意を知る者は居ない。
■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳
「――という事なんだが」
「アロオオオオオオク!!! ななな何を言ってますの! 何が『真意を知る者は居ない(キリッ)』ですの! 勝手な事言わないで下さいまし!」
「サフィー様……そんな……わたくしは……」
「ちょっとおおおお!!! ダンデリーナ様!? 泣くところでは御座いませんわ! むしろワタクシが泣きたいですわよ!」
たじろくサフィーさんを見るに、おっさんの話は的を射ているのだろう。
顔真っ赤だぞ、金髪ドリル。
私的にはそれより何より【幻影の闇に潜む者】に吹き出しそうなんだが。
やめてくれませんかねぇ、安易な中二ネームつけるの。
どうやらおっさんは元々暗部の人間らしい。
リーナを守っていたって言うのは『影から』って事か。
近衛兵じゃなかったのか……って言うか暗部から管理局って転職できるんだ。
ま、あの『糸』を見ると、確かに近衛兵って言うより暗部の方がそれっぽい気はする。
「とにかく俺が言いたいのはだな、サフィーお嬢を入れないとなれば、【幻影の闇に潜む者】としては誰かが殿下の護衛につかなきゃならんって事だ。俺は管理局として動くけど、それと同時に暗部も動く。常時見張られることになるぞ」
「うわぁ」
「でもサフィーお嬢が殿下と同じパーティーに居れば、そこまで動くとは思えねえ。第一サフィーお嬢が嫌がるだろ」
「当たり前ですわ! それはワタクシを信用していないと同じ事! お爺様にも動かせませんわよ!」
「というわけだ。俺的にも暗部に動かれるとバッティングするから動きにくいってのもある。こないだのロックリッザードの時みたいにな。だからサフィーお嬢を入れるのに賛成するぜ」
ふむ。
「ちなみにおっさんは元【幻影の闇に潜む者】って事かな?」
「おっさんじゃねーけど、そうだな。その時に殿下の護衛もやってたんだよ。当然サフィーお嬢とも面識がある」
「んじゃそっちから暗部に『張り込むな』って言えないの?」
「無理だな。暗部を抜けた俺の言を頭領……ロートレク公爵が聞くわけねえ。おまけにジョバンニ国王陛下は殿下が気掛かりだから、絶対に暗部に監視依頼するだろう。お嬢を近くに置けば監視しているって言い訳出来るし、もっと言えば殿下の能力的にあまり多くの監視の目にはつかせたくないはずだ」
「ん? 監視はしたいけど、多くの監視は置きたくないって事?」
おっさん曰く、国王はリーナに対して過保護だから、心配して絶対に監視を強化するだろうと。
ましてや学校を辞めて危険な冒険者になると、例え拠点が御膝元である王都であったとしても四六時中の監視をつけたがるはず。
かと言って、リーナの能力……特に<パッケージング>に関しては国でも重要秘匿事項にすでになっている状態。
詳しい情報を知る者は極力減らすべきという考えもある。
だから複数人をローテーションさせて監視などさせたくない一方で、何が何でも監視しろという親心もあるのだと言う。
……私らその重要秘匿事項、知っちゃってるんですけどねぇ。
ともかく、そこでサフィーさんが常にリーナの傍に居る状態となれば、暗部的にも国王的にも納得出来る妥協点になるのではと。
【幻影の闇に潜む者】の将来的エースであり、幼い頃から身近に居たサフィーさんであれば、過保護な国王も納得するのではと。
おっさんにしても監視対象は増えるが、今までとさほど変わらない。
暗部に気遣う事なく私たちを監視出来ると……いや、私とかもう監視しなくていいでしょ?
ネルトとリーナを重点的に見てておくれ。
そんなおっさんの話を聞いて、なるほどと思う部分もある。
確かに、国王的にも暗部的にも、そしてリーナとサフィーさん的にも二人は傍に居たほうが良さそうな気がする。
この二人も本当はライバルどうこうじゃなくて『幼馴染』なんだろうしね。
「うん、了解。じゃあサフィー。入れるに当たっていくつか条件があるけど」
「条件? なんですの?」
「まず、私がリーダーなんだけど、年下の言う事聞ける? パーティーとして動けないんだったら入れるわけにはいかないよ」
「ピーゾンさんのお力はすでに知っていますわ! 否はありませんわよ!」
ホントかなぁ。見るからに協調性がなさそうなんだけど。
いや、実際のパーティー戦闘を見る限りは大丈夫そうなんだけどね。普段の話ね。
「ワタクシがリーダーになりますわ!」とか言いそう。だったらリーナに任せたい。
「それと冒険者になるんだったら公爵令嬢とは見ないよ。一人の冒険者として接するから、サフィーも『自分は貴族だ』って吹聴しないでね。絶対目立ち過ぎて厄介な話になる。これはリーナもね」
「分かりました」
「それは分かっていますが……貴女達、今現在も十分に目立ってますわよ?」
言うなし。
ポロリンは苦笑いで肯定している。おっさんは「そうだそうだ」って頷いている。
「それと当然だけど、メンバーの能力を全部知った上で協力体制を布くことになるよ。みんなの能力を他言してもダメだし、サフィーの能力も全部明かしてもらうよ」
「それこそ願ったり叶ったりですわ! ダンデリーナ様もピーゾンさんの助言を受けて何歩も前進したのでしょう! ワタクシも後れをとるわけには参りません! どうぞお好きに考察なさって下さいまし!」
ほうほう、じゃあ見せて貰いましょうか。
サフィーの職の全てを!
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