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第四章 毒娘、潜り始める
83:毒殺屋ですが今はこんな感じで過ごしてます
しおりを挟むいかれたメンバーを紹介するぜ!
【毒殺屋】!
【セクシーギャル】!
【ニート(の魔女)】!
【サシミタンポポ】!
【スタイリッシュ忍者】!
以上だ!
いやもうこれ『以上』じゃなくて『異常』なんですよねー、いかれすぎでしょう、どうしてこうなった……。
ともかく五人での新人冒険者活動を始めた我ら【輝く礁域】。
新人にしては破格の魔装具を着ていたり、豪華なホームを持っていたり、王侯貴族がなぜか居たりするけど気にしたら負けだ。
大剣を担いだ白ウサギ、超絶美少女チャイナ野郎、黒猫魔法使い、二刀流エプロンの紺イヌ、金髪ドリル狐忍者という見た目でぞろぞろと歩けば、王都の皆さまからの熱い視線を感じる日々。
冒険者ギルドでも注目の的らしく、すでに有名人の模様。
困っちゃいますね、ホント……いやホント……困っちゃいますよ……。
気を取り直して、ホームを手に入れたことだし、何日かに一度は休日をちゃんと入れる事にした。
冒険者って毎日仕事するもんじゃないって最近知ったよ。
特訓と依頼ばかりじゃ気が滅入るし、買い出ししたいものもまだ多い。
王都の観光とかもしてないしね。行く所はいつも決まってるから全然王都を回れていない。
掃除と庭の管理に関してはリーナに頼んで、侍女のセラさんに毎日来てもらっている。
個人的には住み込みでもいいくらいなんだけど、セラさんから王城への報告とかもあるらしく、遠い所を毎日足を運んでもらっている。申し訳ない。
しかし当のセラさんはリーナのお世話がしたいらしく、楽しんでお掃除してくれているようだ。
気合いが入りすぎて、私たちの仕事まで奪う勢いだったから、そこは自重してもらった。
最低限は自分たちでやらないとね。我ら新米社会人なり。
リーナとサフィーにも色々と教えないといつまで経っても箱入り娘だからね。
この日も朝一から来たセラさんにホームを任せ、南門へと向かう。
いつもの特訓を終えて、昼休憩。
そこから依頼報酬になりそうな魔物や採取物を探す。
私たちはDランクパーティーなので、この王都近辺だとDかEランクの依頼が狙い目だ。
Cランク依頼も受けられるけど王都から離れるし、特訓の意味合いから少し外れる。
となると、やはりDランクのオークかファングボア、悪くてもEランクのブラックウルフが望ましい。
特訓場所から少し奥に入っての探索、もしくはポロリンの<呼び込み>を使う。
ポロリンまじ使える。あと森が拓けた場所ならネルトの<ホークアイ>ね。
連携の実戦訓練も含まれるので、色々と試行錯誤しながらの魔物討伐。
五人で話し合いながら成長できる環境というのは非常にありがたい。
特に王侯貴族の二人は新人ながらも年上だし、質問や反対意見などバンバン言うタイプなので助かる。
ポロリンは私に口答えなんてまずしないし、ネルトは「ん」か「ん?」だけだ。
そういう意味でもパーティーとして成長していると感じる。
「レベルが上がりましたわっ!」
「お? 20? って事はスキルとかアーツとかあるよね? 詳細はよ」
「ピーゾンさん、考察モードにいくの早すぎですよ……」
―――――
名前:サフィー・フォン・ストライド
職業:スタイリッシュ忍者Lv20(+1)
スキル:忍びの直感Lv3(+1)、スタイリッシュ忍術Lv3(+1)、短剣術Lv3(+1)、必中投擲Lv2(+1)、忍びの歩法(New)
S忍術=火遁、水遁、土遁、影縫い、分け身(New)
短剣術=アクセルエッジ、アサシンエッジ(New)
―――――
ぐいぐい迫りつつ聞いたり、試させたり、考察したりした結果。
まず<忍びの歩法>は普通の【忍者】でも覚えるスキルらしい。
気配遮断、臭気遮断、魔力遮断、無音歩行、跳躍強化の複合スキル。かなりぶっ壊れている。
<暗殺歩法>や<歩法術>のようなスキルもあるらしいが、完全上位互換だと言う。
【忍者】とか反則だろマジで。
<スタイリッシュ忍術>の五つ目は<分け身>。つまり分身だ。
スキル発動後にサフィーが二人になる。もちろん片方は『幻影』。
攻撃ではフェイント的に使えるが、どちらかと言えば防御で敵に『幻影』を攻撃させるといった使い方が良いかもしれない。
ちなみに『幻影』が消える時にはスターマインのような無駄なエフェクトが入る。眩しくて邪魔。
<短剣術>の新アーツは<アサシンエッジ>。
いわゆる『急所特攻』という感じで、狙い所が良ければ大ダメージが期待できる。
普通に使い勝手が良い。<アクセルエッジ>も素早く動けるし<短剣術>は有能だ。
さらに言えば<忍びの直感>の中に<急所察知>が内包されているので、併用すればクリティカル祭りになる。
やはり【忍者】は反則。QED。
これでサフィーがリーナのレベルに並んだわけだが、リーナもLv20になった時にスキルとアーツを覚えている。
―――――
名前:ダンデリーナ・フォン・ジオボルト
職業:サシミタンポポLv20
スキル:タンポポ乗せLv3、解体Lv3、包丁術Lv3、パッケージングLv2、流水の心得Lv1(New)
包丁術=ぶつ斬り・短冊斬り(New)
―――――
こんな感じ。
<包丁術>の<短冊斬り>は一閃するだけで『三閃』になるといった感じ。剣戟の数が三本になる。
非常に強力で対人だったら相手は防御するのが困難なはず。
ほぼ確実に斬れる攻撃というのは素晴らしい。
問題は<流水の心得>だ。
これはある意味固有職以上にレアな職、【剣聖】で確認されたスキルらしい。
身体の動きをまるで流水のようにし、攻撃にも回避にも絶大な効果を発揮すると。
すなわち『掴み所のない極めて滑らかな体捌き』という事だ。
それだけ聞けば「【サシミタンポポ】すげー」ってなるんだけど、私が思うにこれ……『流れ作業』からきてるんじゃね?
だって【サシミタンポポ】で【剣聖】並みに強力なスキルなんてありえないでしょ。
私には『刺身のパックを作っている流れ作業のライン工』を意識しているとしか思えん。
……まぁ言えないんですけどね。
みんなに混じって「やっぱ【サシミタンポポ】ってすごいねー!」とか言っておいた。
実際、素晴らしいスキルではあるからね。
有能なんだけどどうも『刺身にタンポポを乗せる仕事』のイメージが強すぎる。私だけの弊害です。
♦
狩りや採取が終わり、まだ夕方の混雑が始まる前の冒険者ギルドへ行く。
依頼ボードをチェックして、達成できそうな依頼があればゲット。
なければそのまま買い取り窓口へ。
ちなみに当然のように注目を浴びている。
動物モフモフシリーズの四人とチャイナ美少女である。慣れていない人には二度見・三度見される。
私、ネルト、リーナは無視。ポロリンは諦め顔。
唯一「目立ってなんぼ」とばかりに胸を張るのはサフィーだ。どこから出したんだその扇子。忍べよお前。
「おお、相変わらずいい量だな! 助かるぜ!」
買い取り窓口や解体室のおっさんもだいぶ毒されてきたらしい。喜ばしいことだ。
魔物はリーナが<パッケージング>で血抜きし、解体したものに<タンポポ乗せ>で鮮度を保ち、それを魔法の鞄に詰めている。
魔法の鞄は私の腰についているウサギポーチの他、リーナもサフィーも持っている。自前だ。
さすが王侯貴族、魔法の鞄ごとき家にいくらでもあるのだろう。
おかげで持って帰れる量が増えたのは嬉しいことだ。
オーク肉などはうちで食べる分を、これまた<パッケージング>して持ち帰る。
タンポポと一緒に<パッケージング>すれば、そのまま保存が利くのだ。リーナまじ歩く冷蔵庫。
ホームに帰ると、出迎えたセラさんとはお別れ。
セラさんは仕事帰りのリーナのお世話をしたいらしく、一緒にお風呂に入って洗ってあげたりしたいらしい。
が、勘弁してもらっている。
洗濯もお風呂も夕食も、装備の手入れも自分たちでさせて下さい。
そんなわけで、まずは部屋着に着替えて夕食……の前に色々と身綺麗にする。
お風呂を沸かすのはリーナとサフィーの仕事。
と言っても魔石に魔力を流すだけのお仕事だけどね。
何も出来ないお嬢様、でも何かやりたい、そんな気持ちを汲んだお手伝い仕事だ。
ついでに地下保冷庫や室内灯、水道やトイレの魔石に魔力注入も任せている。
尚、一番風呂はポロリンに固定させている。
一応思春期の少年(?)である事を考慮している。
十歳の少年(?)ともなればアレをナニしていてもおかしくはない。
二番目に入る私がキレイに掃除してバトンタッチするのだ。
もちろんナニかがあっても気付かぬフリでね。
少年心をちゃんと理解してあげる私ってば有能リーダー。
と言うかリーナの後の残り湯にポロリンが浸かろうものなら国王が黙っていなさそうなんで。不敬罪がありえる。
お風呂に順番に入る間に、洗濯と自室の掃除を行う。
基本的にはネルトの<生活魔法><洗浄>だ。
家事はネルトの負担が一番大きいので、出来る限りのところは自分たちでやろうと王侯貴族も魔力注入や自室の掃除をしているのだ。
シーツなども<洗浄>した後で自分たちにベッドメイクさせる。これも勉強。
セラさんがやりたがっている部分だが……多分やってないと信じるしかない。
「こう折って、こう畳むでしょ? そうすると、こんな感じで棚に仕舞いやすい。で、取る時はこっちから取ると古い順から使えるわけだよ」
「なるほど、畳み方と収納の仕方ですか。勉強になります」
「ピーゾンさん、下着の畳み方が上手くいきませんの」
<洗浄>はネルトに任せても洗濯物を畳んで仕舞って、また自分で出して使う……っていう当たり前の事が出来ない二人。
これを教えるのも私の仕事。
ホントは料理の方で貢献したかったんだけどね。なぜか出来なかったんだよね……。
一方でポロリン料理長は風呂上りからキッチンに籠っている。ふんふ~んと鼻歌交じりで楽しそう。
基本的には朝市で買ったものや狩った魔物肉などをポロリンの好みでメニュー化しているが、時々私も口を出して前世料理を作ってもらっている。
『作っている』じゃなくて『作ってもらっている』。これ重要。
「ピーゾンさん、絶対触らないで下さいね!」
料理長は厳しい。私だって本当は作りたいのに……おのれ【毒殺屋】!
え? 職のせいにするなって? HAHAHA聞こえなーい。
リーナやサフィーもすっかりポロリン風家庭料理に慣れたようで、美味しそうに食べている。
そりゃいつもコース料理とかだと飽きそうだよね。知らんけど。
食べ終わると後片付け。これは全員でやる。
と言ってもやはりネルトの<洗浄>が大活躍。一家に一台、生活魔法。
棚に食器を戻したりとかはリーナとサフィーになるべくやらせている。
それから寝るまでは装備の手入れだったり、談話室で喋ってたり、マッサージ受けたり、リバーシしたりしている。
パーティー内でリバーシが強いのは、ネルト・リーナ・私・ポロリン・サフィーの順です。今のところ。
あ、あれ? 私、考案者のはずなんだけど?
リーナは分かる。この娘天才。万能すぎるタイプの天才。
しかしネルトはその上を行くという驚愕の事実。
いや、頭は良いと思ってましたよ? 訓練とか見てても吸収力も応用力も判断力も高いわけで。
でもろくに勉強できない環境にいた孤児が天才王女を上回るかね。
どうやら無口の裏側で脳内が高速回転しているらしい。
だが、一つ言わせてほしい。
じゃあ山賊なんかに捕まるなよと。
一方で努力家の秀才、サフィーはこういったゲームに向いていないらしい。
勢いで目先の石をひっくり返そうとする。
「ほぉら御覧なさい! 黒に変えましたわ! オーーッホッホッホ! ……んなっ!?」というのがパターン。
終いには地道な凡人ポロリンにも負ける始末。見ていて面白い。
ちなみにリバーシが発売されてまだ数日ではあるが、商業ギルドのメルルさんに会ってきた。
どんなもんかなーと様子見だったが、早くもぼちぼち売れているらしい。
ベルドットさんの根回しが上手くいっているのだろう。
私の口座への入金は月を跨がないと入ってこないらしいが、メルルさんの予想だと、おそらくその入金時の税金だけでEランクへの昇格となるだろうという事だ。
おいおい、どんだけ金入ってくるんだと戦々恐々している。
ともかく、そうして寝るまで和気藹々と過ごす。
こうした時間も悪くない。改めてパーティーに入ってくれたみんなに感謝だ。
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よろしくお願いします!
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