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第四章 毒娘、潜り始める
90:新人パーティーですが「亜人の根城」に挑戦します
しおりを挟むダンジョン勝負の一日目は、約七~八時間で制覇できた。
朝から潜って夕方まで。よく走ったものだ。薬のおかげです。
丸一日、二四時間は掛からないと思ってたけど予想よりも早かったと思う。
それでもぐったりはしているので、夕食は外食しながら反省会などを行った。
「それじゃ初日の成功を祝って、かんぱーい」
『かんぱーい』
そうは言っても全員未成年ですので、果実水なんですがね。雰囲気大事。
ネルトは早速とばかりに塊肉にかぶりつく。
「スタミナ回復剤は確かに有効でしたけど、今度は中級ダンジョンですし本当に丸一日潜る事になりますわよ? 恐ろしい数が必要になると思いますわ。錬金術ギルドで確保しませんと」
「疲労の問題もそうですが、わたくしはやはりダンジョン内でのパーティー戦闘に多少の難があると感じました。今回は魔物が弱かったので、パーティー戦という感じではありませんでしたし」
「あ、それボクも思いました。並び的にどうしてもサフィーさんとネルトさんが下がるより先にボクとリーナさんが前に出る方が早いですよね。そうすると前衛過多でピーゾンさんが出る隙間がないんです」
「んー、私が最初から後ろに行く?」
「どうしよっかね。ポロリンとネルトの位置を変えてもいいんだけど……『亜人の根城』の情報を洗い直してからかな。まさか今日と同じようにすいすい進めるとは思えないし」
と、こんな感じで盛り上がる。
非常に結構ですな。こうした議論はパーティー的にありがたい。
第二戦はまた三日後にある。
そこまでに下調べと準備を万全にしておかないといけないね。
ゴミ野郎側の今日の成績とか教えて貰えれば対策とりやすいんだけどね、まぁサフィー経由で聞いたところで無理でしょう。
どうやら公平な立会人でいるつもりらしいし。
まぁ、なるようにしかならないかね。
■サッチモ 【隠密剣士】 34歳
私の名前はサッチモ。【幻影の闇に潜む者】に所属している。
主に諜報や密偵をする事が多く、そこそこのベテランだと自負している。
……いやもうベテランとか言うのはやめよう。悲しくなる。
ダンジョン勝負の立会人として【輝く礁域】に一日くっついてダンジョンを制覇したわけだが、それは驚きの連続だった。
そもそも一日と言ったものの、半日も掛かっていない。
三分の一日程度の時間で、初級とは言え、十階からなるダンジョンを走破したのだ。
いくらお嬢やダンデリーナ殿下、そして優秀な固有職が集まるパーティーとは言え、まさか制覇するとは。
しかもそんな短時間で制覇するとは夢にも思わなかった。
はっきり言って、個人で見てもパーティーとして見てもDランクの域ではない。
それは単にダンジョン制覇をした事のみにあらず、その戦いぶり、落ち着いた状況判断、精神力、もろもろを鑑みての事だ。
これで見た目は本当に十歳・十一歳の少女たちなのだからタチが悪い。
……いや、少年も混じっているのだが、私としては疑っている。
間近に見ても、どう見ても美少女だ。
しかも王国一の容姿端麗と称されるダンデリーナ殿下と並んでも勝ってしまうのではないかという程の美貌。
これが男だと言うのならば、戦闘能力以上の詐欺だ。
私、訴えたら勝つと思う。
話が逸れた。
ともかくそうした異常な戦闘能力を維持したまま、ダンジョンボスである黒狼王までをも危なげなく倒した。
そうした事を頭領やロンダート様に報告したのだ。
「ほう、それほどですか」
「な? 儂が言ったとおりじゃろう」
「父上もここまで早いとは思っていなかったでしょうに」
「ハハハッ! まぁな! しかしスタミナ回復剤か、一考の余地があるな」
「道具はさておき戦いぶりもですよ。サフィーやダンデリーナ殿下の力量は把握しているつもりでしたが、他の三名は話だけでしたからね。まさか十歳にしてそこまで戦えるとは」
「核を為していたのはやはりピーゾンか。メンバーの職とスキルを考察し、戦い方を伝授する。そしてそれを集団戦闘に落とし込み戦術を練る。はぁ……注視すべきと言った儂が言うのもなんだが……こいつおかしいだろ」
全くもってその通りだ。この目で見て報告した私もそう思う。
ダンジョンの道中では指示だけで、前に出て戦う事はなかった。
しかしボス戦では変貌していた。
身の丈ほどの巨大な魔剣をまるで手足の如く操り、縦横無尽に動きつつ、周りの四人に的確な指示を出し続けているのだ。
相手がEランクのブラックウルフだとしても、それは異常な戦い方だと言わざるを得ない。
異常にして異端。
このピーゾンという少女が一人居るだけで、他の四人の思考も戦闘力も爆発的に成長したと、そう思わせるものがある。
一日共に居ただけでそう感じてしまった。
かつてサフィーお嬢やダンデリーナ殿下に感じた″才能″という敗北感。
それ以上の何かを味わったのだ。
敗北感なのか、恐怖感なのか、劣等感なのか……定かではないが。
しかしそれは私の感想にすぎない。
報告書から何を読み取るのか、何を感じるのか、それは頭領とローランド様次第だろう。
そして翌日、ゴミス側の立会人となった者からの報告を聞いた。
七階らしい。
丸一日、ザザルディ家の衛兵団長らと共に潜って、中級ダンジョン『亜人の根城』地下七階層でフィニッシュらしい。
「あいつマジ無能。ビビリまくってんし、鎧はガチャガチャうるせーし、しょっちゅう休憩するし、夜は普通に寝るし、衛兵にいびりまくってんし、マジ無能。俺が衛兵だったら速攻でブチ切れからのフルボッコですわ。衛兵つえーのにマジ宝の持ち腐れ。こんなつらい密偵滅多にない。俺有給とります」
……こいつ結構冷静キャラだったんだけどな。
そんなに酷かったのか。
もうこの時点で私は【輝く礁域】の勝利を確信した。おめでとうお嬢。
という事で、あとは彼女たちが中級ダンジョンに対してどう立ち向かうのか、どう立ち回るのか、それを見届ける事だけに目的は絞られた。
ここまで来たら楽しみである。
彼女たち……いや、彼女は今度はどんな驚きを見せてくれるのだろうか。
■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳
そうして迎えた第二戦。舞台は北東部にある中級ダンジョン『亜人の根城』。
うちのホームからも結構近かったりする。多分王都にある中で一番近いんじゃないかと。
これで今日の探索がしやすかったら常連になっても良いかもしれない。
着いてみれば、それなりに冒険者の姿は見えるものの、行列を作るほどではない。
三日前の元旦初詣に比べると雲泥の差だ。
「ザザルディは手を回してないのかな」
「っぽいですね。別の手を使って来るのか……」
「すでに負けを認めたのかもしれませんわぁ」
「楽観するわけにも参りません。油断はせずに行きましょう」
「ん」
サッチモさんがまた居たので聞いてみた。
ザザルディの動きは把握していないし、仮に把握していても第一戦の結果も含めて教える事は出来ないと。
前回の嫌がらせがあからさま過ぎたんだよね。
サフィーの言う通り、負けを認めて素直に潜らせてくれるんならいいんだけど。
ともかく手続きをしてダンジョンへと入る。
内部構造は『はじまりの試練』と若干違う。高さ4m、幅7mほどと広さは変わらないが、薄暗く不穏な印象。
壁や床も、所々苔むしていたり、デコボコだったりと微妙に廃れた雰囲気だ。
ちなみに初級だの中級だのって言うのは、ダンジョンが生成されてから魔剣をとるまでに掛かった時間により、ダンジョンが成長した結果で変わってくるらしい。
魔剣をとる事でそれ以上成長せず、管理が可能となる。
逆に言えば、魔剣をとらない状態でおけば初級から中級へと成長し、その段階で成長を止める事で″管理された中級ダンジョン″となるわけだ。
それ以上放置した上級ダンジョンというのも王都内に一つある。
王都内最古のダンジョンである『セントリオ・ダンジョン』というそのままの名前。
魔剣はすでに取られているので私たちが行く事はおそらくないだろう。
金策か経験か、それくらいの用途しかない。
王都外には未だに魔剣を確保できずに管理できていない上級ダンジョンもあると言う。
さすがに一定のところまで成長するとほとんど成長は止まるらしいが、それでも未だに魔剣がとれない程の難易度と言う事だ。
魔剣には興味があるので、挑戦したい気持ちはあるんだけどね。
いや、私の武器じゃなくてパーティーメンバーのね。
余談はさておき、地下一階から探索を開始。
この『亜人の根城』は全三〇階らしい。
しかも徐々に広く、徐々に魔物も強くなっていく。
さすがに丸一日で制覇は無理だと思うが、どこまで行けるか挑戦するのも楽しみだ。
隊列は前列にサフィーとポロリン、中列にネルトとリーナ、後列に私というポジションにした。
これは『はじまりの試練』のように、走りながら、敵をなぎ倒しながら進むという事をせず、サフィーと私が前後の感知をして、魔物が出た場合はポロリンにまず当たらせる事を想定しているからだ。
もちろん曲がり角などではネルトのグリッドを多用する。
が、それは中列からでも問題なさそうというのが前回からの改良点。
このダンジョンは『亜人の根城』という名の通り、ゴブリン、コボルト、オークなどの亜人系魔物が多く出現する。
しかも地下一層からゴブリンの群れにはゴブリンメイジやゴブリンリーダー、コボルトの群れにもリーダー格の個体が混じっているらしい。
どう見てもFランクやEランクパーティーでは苦戦するレベルなので、そこはさすがに中級ダンジョンという事なのだろう。
「むむっ! この先出ますわよ!」
「<グリッド>……ゴブリン六体。杖持ちが居る」
「サフィーはメイジ狙って! ポロリンとリーナで削っていくよ! ネルトは<念力>で後方のやつね!」
『了解!』
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