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第五章 毒娘たち、注目の的になる
120:女六人集まれば姦姦しいようです
しおりを挟む■ソプラノ 【泡姫】 25歳
神殿での生活に不満を覚えた事はありません。
皆さんに良くして頂きましたし、″聖女″として多くの方々を救う機会を与えて下さいました。
時に疎まれる事や、周囲の期待の大きさに潰されそうになる日もありました。
しかし固有職を授かり、人々を救う力を得た。
だからこそ私の為すべき事は一つだと、信念を持って従事出来たのです。
そんな私も今は一人の冒険者。
より自分を成長させる為、より多くの人々を救う為、私は神殿を出ました。
王都の皆さんへの治療施術は休日くらいしか携われなくなり、代わりに神殿の皆さんにお願いする事が多くなりましたが、私自身【輝く礁域】の皆さんと毎日を過ごす中で、確実に成長していると実感しています。
それはやがて人々を救う為の大きな力となる――そんな気がしているのです。
大体、『禁域』で間引きをしつつ実戦訓練を行うか、南の森へ行き個人訓練と連携の確認に当てる事が多いのですが、その日も南の森で訓練を行いました。
パーティーリーダーであるピーゾンちゃんからは、私も杖での防御が出来るようにと口酸っぱく言われています。
ピーゾンちゃんは弱冠十歳ではありますが、リーダーですし、そもそも私よりも数段上の存在ですから、もちろん従います。
戦闘技術はもちろんですが、強敵との戦闘経験、考え方、もっと言えば人間としての器そのものが私よりも上だと感じます。
彼女を十歳とはとても思えません。
リーナちゃんやサフィーちゃんも年齢相応には思えませんが、ピーゾンちゃんは存在自体が遥か上という感じです。
指導も的確。私に不足している部分を、分かりやすく順序立てて教えてくれます。
私としてはそれに付いて行くのみ。
固有職に就いて間もない、右も左も分からずに教えを受けていた十五年前に戻ったような感覚があります。
とりあえず目標はネルトちゃん。
ネルトちゃんも私と同じく杖での防御のみを教わっていますが、その練度は私の比ではありません。
<杖術>も持たず、ステータスは後衛のそれ。私と同じであるはずなのに、サフィーちゃんやポロリンちゃんの攻撃を杖で防ぐ。
ネルトちゃん曰くそれは「慣れ」との事ですが、私も慣れればあのような杖捌きが出来るのでしょうか……不安もあります。
と、そんな特訓を終え、ホームへと帰り、お風呂へ。
毎日お風呂に入るというのは神殿ではありえない事です。
王侯貴族であるリーナちゃんやサフィーちゃんが居るから入れるのかと思いましたが、どうもピーゾンちゃんの強い希望だったようです。
ホームにお風呂は絶対必要と。
今となっては、その考えが正しいものだったと思わされます。
だって気持ちいいですし。特訓で疲れた身体が癒されます。
そしてお風呂から出ると夕食です。
ホームでの夕食はポロリンちゃんの担当となっています。男一人だと言うのに料理まで……本当に男の子なんですよね?
私は国中を巡る旅をしていたので料理も少しは出来ます。
″聖女″だと優遇され調理場に立てない時もありましたが、極力、自分の事は自分でと言い聞かせていましたから。
施しを受けてばかりではいられないと。
というわけで私もお手伝いしたいと申し出たのですが……。
「あー、それはありがたいんですけど、ここの料理ってピーゾンさんのおかげでちょっと特殊なんですよ」
「特殊? ピーゾンちゃんの郷土料理という事でしょうか」
「いえ、ピーゾンさん発案らしいんで郷土料理ってわけじゃないらしいんですけどね、特に揚げ物と混ぜ物が多くて」
揚げ物というと初日で食べさせてもらったアレですね。
国中を巡った私にとっても未知の料理。確かに郷土料理ではないのでしょう。
それもピーゾンちゃん発案ですか……本当にどれだけ才能に恵まれているのでしょうか、ピーゾンちゃんは。
聞けば、単に揚げ物と言ってもレパートリーが多く、揚げる温度やタイミングなど、結構難しいらしいです。
カラッと揚げるには練習が必要だと。
それに付けるソースもまた自家製で、これまたピーゾンちゃん発案。
作るのにずっとマゼマゼする必要があり、もっぱらポロリンちゃんのお仕事となっているようです。
なるほど。それは今後の為にも教えて頂きたい所ですが、お手伝いとなるとサラダやパンの準備などになるでしょうか。
少しでもお力になれれば幸いです。
しかしあの揚げ物は美味しかったですからね……私も自分で作って食べられるようになりたいものですが。
「えーと、揚げ物って食べ過ぎると、その、太るらしいですよ? だからみんな好きなんですけどリーナさんとかサフィーさんは自重してます。ネルトさんは無制限ですけど」
「…………」
私が揚げ物を教わるのはまだ早いですね。
しばらくポロリンちゃんの補佐に専念したいと思います。
■ネルト 【ニートの魔女】 10歳
ソプラノが入って、私たち【輝く礁域】はパーティー上限である六人になった。
私が入った時から「理想的な六人パーティー編成にしたい」ってピーゾンが言ってたけど、結構上手い事いったんじゃないかと思う。
【物理アタッカー】リーナ、【魔法アタッカー】私、【盾役】ポロリン、【回復役】ソプラノ、【斥候職】サフィー、そして【その他(デバッファー兼サブアタッカー)】ピーゾンと。
この中で唯一の懸念材料は私だろう。
【魔法アタッカー】のくせして属性攻撃はないし、範囲攻撃もない。
サフィーが<忍術>使えるから助かってるけど、これが普通の斥候だったら、私は解雇だったと思う。
それでも与えられる役割は多く、色々と考えつつ戦闘や探索を行う必要がある。
その度に「ああ、求められているな」「まだ不要とは見なされていないな」と安心する。
情けないなー。
もっと強くなってお荷物からちゃんと脱却したい。
メンバーからちゃんと必要とされる役割でありたい。そう思う。
「よっ、ほっ、ネルトさんどんな感じ?」
「ん~~~、ポロリン最高」
ソファーにうつ伏せになり、ピンクマッサージを受けながら、そう思う。
超気持ちいい。ナイスセクシー。
あれだよ? 頑張らなきゃなってのは本当だよ? でも気持ちいいものは気持ちいい。
眠くなりそうな目でテーブルの方を見てみれば、夕食後のティータイムを楽しんでいる三人。
リーナ、サフィー、ソプラノ。
「やはりドルティーヌ産ですか。美味しいですよね」
「ええ、ピーゾンさんがわたくしのお部屋にいらした時にお出ししたのですがお気に召して頂けたようで、ここで暮らすようになってからも定期的に買って下さるのです」
「ワタクシはリーブルー産も好きですわ。すっきりした飲み口で」
「ああ、リーブルー産も良いお茶ですよね」
なんだろうか、すごく優雅な感じ。
同じ部屋の中に居るのに、妙な『壁』を感じる。
「王女と公爵令嬢に聖女が加わるとこんなになるんだね」
「華やかですねー。貴族様のお茶会ってこんな感じなんですかね」
「一方こちらは村娘と街娘と道具屋の娘だよ」
「息子です! 息子!」
傍に居るピーゾンと、私の背中を押しているポロリンがそう言う。
私は街娘どころか孤児だけどね。
普通だったら友達になるどころか、話す事さえ出来ない相手。そういう世界の人たち。
それが今は一緒のパーティーで、一緒に暮らしている。
すごいよね、これって。想像もしてなかった。
やっぱりピーゾンとポロリンに入れてもらって良かった。
学校入らなくて良かった。学食少ないし。
「ネルトさん、お茶菓子余りましたわよ。お食べになります?」
「ん!」
元々住む世界が違っても、こうして一緒になれて良かった。
みんな優しい。お菓子くれるし。
だけど、甘えちゃいけないんだよなー。私は弱いから、もっと強くならないと。
お菓子は甘いけどね。もぐもぐ。
■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳
「ファファファ! ようやく出来てきたね! 私の部屋が!」
ベルドットさんから「おごります」と言われて色々と発注し、それが届いた。
あれこれと注文したので、おごってもらったのはごく一部。
それ以外は私の有り余る資産からドバーッと使ったわけだ。悔いはない。そして未だ道半ばである。
ともかくそうして揃えたのはカーテンだったり、ベッドカバー、シーツ、テーブルクロス、絨毯など多岐に渡る。
色合いやデザインを細かく指定し、完全受注生産となったそれは、まさしく前世の私の部屋を再現したものと言って良いだろう。
フリフリアマアマのファンシールーム。基本的に淡いピンクに染まっている。
腰に手を当てつつ見回し、うんうんと頷く私。
そして何事かと廊下から覗く五人。
「はぁ~、ピーゾンさんらしいですわね」
「統一感はありますが……」
「まぁまぁまぁ、ピーゾンちゃん、奇抜なセンスで……」
「んー、目がチカチカする」
「うわぁ、これはひどい」
おいこらそこの美少女(男)。ひどいとは何かね、ひどいとは。
「って言うか、ポロリンちょっと部屋の真ん中に立ってみ」
「えぇぇ……」
嫌がるポロリンをベッドの前、絨毯の上に立たせる。
ピンククマのモフモフ装備を身に付けた、ピンク髪の美少女(男)。
『おおー』パチパチパチ
「なんで拍手なんです!?」
うんうん、やはり似合う。素晴らしい。
「ピーゾンさんのお部屋なのに、すごくしっくりきますわぁ」
「まるでポロリン様のお部屋のようですね」
「可愛さ五割増しですね~、ポロリンちゃん」
「目がチカチカする」
私の部屋なのにポロリンの方が似合うという不具合。遺憾ではあるが認めざるを得ない。
こうなればポロリンの部屋を私の部屋以上にフリフリアマアマに……
「嫌だよ! ボク絶対嫌ですからね!」
「よいではないか、よいではないか」
「そ、そんな事言うとご飯作りませんよ!?」
「すみませんでした」
素直に謝ろう。私にはご飯がなぜか作れない。
なぜかネルトも真剣に謝っていた。
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