ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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最終章 毒娘、故郷の為に戦う

147:私たちの見えない所でも何か白熱していたようです

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■ベオウルフ 【操獣士】 18歳


 俺たち【幻惑の蛇ステルスネーク】の全員が持ち寄った最高戦力。
 スタンピードの切り札として育て上げていた自慢の魔物たちは、次々に倒されていった。

 妙な装備やガキみたいな見た目に惑わされていたつもりもない。
 相手はAランク上位のパーティーだというつもりで、それでも尚、確実に勝てるはずだった。


 ――しかし。


 プップルのグラトニースライムは白ウサギに何かしらの魔法を食らって萎んだ。

 フロストンのクリスタルゴーレムは近づいただけで倒れた。

 イグルのグリフォンはダンデリーナと白ウサギに倒され、フレスベルグも狐の忍者にやられた。


 プラティのユグドレントは不可解な攻撃に転び続け、その後は白ウサギからの攻撃を受ける。
 やはり何かの魔法を放ったし、それ以上に回避と剣技が図抜けている。
 強いとかすごいとか、そういう表現が出来ないほどの異次元・理外の動きだ。

 ふとフロストンの呟いた【勇者】という言葉が脳裏を横切るがすぐに振り払った。


 手塩にかけた魔物たちが次々に倒れていくのを見るのは辛い。
 勝算を持っていたにも関わらず、瞬く間に討ち取られて行くと、理解が及ばなくなってくる。
 俺の周りの四人にもはや言葉はなく、ただ崖の上から戦況を覗く事しか出来なかった。


 俺の従魔はと言えば、サンダーライガーはピンクのくまとダンデリーナに順々に倒された。

 サンダーライガーと真正面から近接で戦うなんて正気の沙汰じゃねえ。
 いくら【七色の聖女】から回復やらバフやら受けていたとしても、痛みに怯むはずだし、かなりのダメージを食らうはずだ。

 それが倒された事に驚きつつも、最強の手札であるケルベロス、フェンリル、マンティコアを同時に解き放った。

 これはもうAランクパーティーだろうが即座に逃げ出すレベルの戦力。
 そして仮に逃げ出しても魔物の足の方が断然速いし、追いついた後に殺すつもりだった。


 しかし初手の猛攻は【七色の聖女】が展開した結界に阻まれた。


「な、なんですかあれ! Aランクが四体掛かりで破れない結界!?」

「どのブレスも通さないんでふか!? その上物理障壁でもあると!?」

「あんなのズルじゃない! ふざけんじゃないわよ!」


 周りに合わせて俺も悪態をついた。いくら【聖女】だからってあんな理不尽な結界があって堪るか!
 連中は結界に守られながら回復を行っている。

 【聖女】が踊っているのを見るに、それが結界を展開する鍵なのだろう。
 つまりいつまでも展開出来るものではないとは思うが……。


 そう思っていたら連中は攻撃に転じて来た。
 Aランクの魔物四体に対して正面から一対一を仕掛けるという、誰がどう見たって無謀。
 連中の強さは嫌と言う程味わったが、それでも悪手だと言わざるを得ない。

 逃げられない、戦うしかない、そう思って一か八かの攻撃に賭けたのだろう。
 俺だけじゃなく周りの四人も「これなら勝てる」と踏んだに違いない。


 しかしそんな希望もすぐに崩れ去る。


 ユグドレントは再び転び始め、狐の忍者から一方的に火魔法の連撃をくらう。
 俺のフェンリルは白ウサギの魔法と剣技によって見る見るうちにダメージを負い、従魔内最速の攻撃を仕掛けても躱され続けた。

 ほどなくしてユグドレントとフェンリルが倒れるのを、唖然となって見る事しか出来なかった。


 マンティコアとケルベロスは圧倒出来ていたように思う。
 しかしそこに狐の忍者と白ウサギが駆けつける。


 どうする……このままでは……!


 目が離せない戦況、混乱する頭――そうした時に誰かの声が上がった。


「うわあっ!」

「な、なによこれ!」


 何だ!? と振り返る事も出来なかった。
 ほぼ同時に俺もそれ・・を食らっていたからだ。

 俺たちの背後から突如として現れた糸の束・・・。それが蛇のように襲い掛かり、瞬時に俺たちに巻き付き、縛り上げる。

 手足はもちろん、口にも猿轡のように巻き付き、声を上げる事すら出来ない。
 自由を失くした俺たちは、ただ芋虫のように転がるだけだ。


 突然の事態に慌て、もがいていると、俺たちの近くにシュタッと一人の男が降り立った。


「よしよし、五人全員確保だな」


 そのスラムにでも居そうな風貌は、間違いなく【七色の聖女】の隣にずっと居たヤツだ。
 さっきまで″庭″の入口に居たはずなのに……こんなに離れた崖の上まで一瞬で来ただと!?
 しかも口ぶりからすれば、この糸はこいつの仕業であり、俺たち五人がここに居たと知っていた。

 馬鹿な! どんな察知能力だろうがこの距離で探る事なんて出来ないし、″庭″からじゃ絶対に視認出来ないはずだ!

 目と耳しか動かせない状況で、俺たちは何も発せず、何も行動を起こせない。
 訳の分からない展開に、悪態をつく事すら出来ない。


「さて、どいつが【操獣士】か聞くわけにはいかないか。かと言って【操獣士】を殺した所でケルベロスとかが止まるとは思えねーしなー。って言うか――」


 ――カカカッ!!!


「やっぱまだ居たか。わざわざ出て来てくれるとは親切じゃねーか。そんなにこの五人を捕らえられたくないのかい?」


 男の不意を突いて投げられたナイフは、男の短剣によって防がれた。
 始めから俺たちが五人だけじゃないと予想していたような言い方だ。

 そのナイフを投げたのが誰か、俺たちには全員分かる。

(マニュエズさん!)

 言葉を発する事は出来ないが、皆がそう叫んだだろう。


 本来なら俺たちが捕まった時点で部隊長のマニュエズさんは退くべきだ。それが暗部として当然の行動。
 だと言うのに姿を現したのは、やはり俺たちを守る為か、それとも侵入者七名・・を自分の手で確実に殺すつもりなのか。

 マニュエズさんは男から視線を外さずに言う。


「やはり貴様だったか、アローク」

「は? 別に俺は有名人じゃないはずなんだけどな……んん? もしかしてあの時のヤツか?」

「ふっ、思い出したか。覚えてもらっていて光栄と言うべきかな」


 どうやらマニュエズさんとアロークという男は顔見知りらしい。


「なるほど、ダンデリーナと【七色の聖女】、さらにあれだけ力を持った集団だ。王国も相応の護衛を付けていたという所か」

「別に護衛じゃねーよ」

「ならば弟子か? 年端もいかぬ子供に固有職ユニークジョブの何たるかを伝授する。貴様ほどの男であれば確かにそれは可能だな。あれほど強くもなるわけだ」

「随分と過大評価だな。あいにくと的外れだが」


 あのマニュエズさんがこれほど評価し警戒する男だと……?
 俺たちをあっという間に捕らえた糸は確かにすごい。
 固有職ユニークジョブの能力を完全に活かさないと出来ない操作技術なのだろう。

 そうか、そうした自分の経験と技術をあの六人に……!
 だからあれほど規格外な強さを……いや、あいつら以上にこのアロークという男が規格外の強さを持っているという事か!
 それでマニュエズさんが自ら……!


「的外れかどうかはこれから確かめさせてもらおう。貴様は俺が殺す。ダンデリーナたちは……」


 そう言ってマニュエズさんは指を鳴らした。これは仕掛けの合図・・だ。

 ″庭″に大きく開いた『従魔門』。そこから大きな音がし始める。
 ガリガリと岩壁を削るような音。ガラガラと崩落するような音。そしてドスドスと何か・・が歩く音。


「ギヤアアァァァァァアアアア!!!」


 一帯に響く咆哮。
 その巨体は大きく開かれた『従魔門』を無理矢理通り、崩落させつつ前進し、ついに″庭″へと顔を出した。


「おいおいおい……」


 アロークという男はマニュエズさんから視線を外さずに、視界の端にそれ・・を見たのだろう。
 言葉にならないほどの畏怖。それを感じているはずだ。


 マニュエズさんは【幻惑術士】。
 自身の戦い方も敵を惑わせるようなそれだが、同時に魔物を″幻惑″させる事も出来る。

 とは言え操れる魔物は同時に一体限り。
 俺たち五人のように『魔物を操る事に特化したジョブ』ではなく個人の戦闘力もあるが故なのか制限がある。


 操れる魔物も一系統のみではある――が、その一系統が『竜種』であるという規格外。


 俺たちが合流する前に王国でもワイバーンやロックリザードといった『亜竜』も操ったらしいが、本分はあくまで『亜竜』ではなく『竜種』だ。

 最強の魔物たるドラゴンを操る能力。
 帝国がマニュエズさんを危険視して王国に派遣するのも頷ける、理不尽な力だ。


 そのドラゴンが今、″庭″に姿を見せた。
 スタンピードの王都侵攻までとっておきたかった最大戦力を出した。
 アロークという男の弟子であるダンデリーナたちを確実に殺す為に。


「向こうはアレでいい。こちらはこちらで始めようか」

「……ったく、洒落にならんぞこれは。しかしお前を放っておく方が危険なのはよく分かった。はぁ……やるだけやるか。ご期待にそえるか分からねーけどな」


 互いに短剣を構えた。戦意が高まっているのが傍目でも分かる。


「貴様はここで終わりだアローク!!!」

「死んでたまるかよ! 俺の未来の平穏な日々の為にな!!!」


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