カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第一章 黒の主、世界に降り立つ

19:戸惑う斥候少女

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


 装備を整えたい気がする。

 俺は喪服とコートと刀で問題ない。
 着心地の悪いこの世界の服や、鎧なんぞ着たくもないし。
 最高品質でも地球感覚を持ってる俺からすれば寝間着くらいにしか使えないから。
 いや、寝汗とかちゃんと吸わないから寝間着も本当は嫌だけど。

 問題は侍女軍団でね、武器も召喚された建屋からパクったお下がりだし、侍女服も同じだ。
 普通の布素材が原因なのか侍女服を<カスタム>しても成長限界みたいのがあって無限に頑丈になるわけじゃない。

 その点、俺の喪服はさすがは異世界の化学繊維。そこらの鎧以上の強度を誇っています。
 <カスタム>の伸びしろがヤバイ。
 そのうちアダマンタイトを超える喪服が出来上がるかもしれない。


 それで、侍女服なんだが、最初はエメリー用の侍女服なくて穴開けたりしてたけど、二着分の服を縫い合わせてエメリーの四腕用にしたり、サリュとネネが小さいから丈を合わせたり、サリュの尻尾用の穴を開けたり……全てエメリーが裁縫してます。
 エメリーは生産特化の多肢族リームズの元メイドさんってことで、最初から家事スキルとか<礼儀作法>とか持ってたんだよね。

 さらにそこへ<カスタム>による【器用】重視の振り分けと、次々に武器を試させたことで<剣術><短剣術><槍術><盾術><斧槍術>なんかも覚えてしまった。
 器用貧乏はその通りなんだけど、スキルの数だけで言えば間違いなくメンバー内最多だ。
 少しは俺にも分けて欲しい。


 閑話休題。
 ともかくそんなわけで、ちゃんとした生地で戦闘用の侍女服・・・を作ったほうがいいんじゃないかと。

 え? 鎧とかローブとか着させろって?
 バカ言っちゃいけないよ。そんなのどこに浪漫があるんだ。
 俺の侍女であるならば、侍女服が戦闘服でもいいじゃない。

 まぁぶっちゃけると<カスタム>で強くできるし、非戦闘時に襲われても対処できるようにって事なんだけどね。
 ただでさえ俺が基人族ヒュームってだけで、そこら中から喧嘩売られるわけで。
 こっちもやり返すから逆恨みとかされて、エメリーたちが狙われたら怖いしね。
 ステータスと侍女服の<カスタム>は必須なんですよ。


「そんなわけで悩んでるんだが、どう思う?」

「イーリスの街の武具屋は覗いていませんので何とも……」

「カオテッドに行くのでしたら、そちらの方がより良いものがあると思います。広さが段違いですから」

「カオテッドに行くまでの間に合わせは今のままでも十分すぎます」


 なるほど。じゃあカオテッドまで我慢してもらいましょうか。


「となると、イーリスは迷宮でCP稼いでステータスにある程度振ったらカオテッドに向かったほうがいいな」

『はい』


 迷宮でのCP稼ぎが順調すぎてついつい調子に乗ってしまった。
 お試しの迷宮挑戦のつもりだったんだがな。
 新加入のネネの強化も面白かったからしょうがない。

 ネネが能力低くて悩んでいるというのは聞きだしたが、やはりステータス全般が低かったのが問題だったようだ。
 そこを改善すれば闇朧族ダルクネスとしての種族特性が非常に生きる。暗殺系斥候職って感じだね。
 特に察知系や<魔法陣看破>など、迷宮に入る上で欠かせないスキルを持っているので助かる。
 すでに斥候としてはイブキやサリュ以上の性能を見せている。


 ちなみに<魔法陣看破>っていうのは、迷宮におけるギミックのことね。
 トラップの起動スイッチが見えない魔法陣だったり、壁にある見えない魔法陣に魔力を流すと隠し通路が出たり、『宝箱』の代わりに魔法陣が敷かれていて、魔力を流すとお宝が入手できたり、それも罠だったり。
 そういうのを見つけたり、罠かどうかを判断できるのが<魔法陣看破>らしい。


「よし、じゃあ今日は普通に探索してCP稼ぎ。明日は長期探索の準備に当てて、明後日に本格的に攻略してみようか」

「迷宮制覇を目指す、という事でしょうか」

「それは分からないな。安全性を考慮しつつ行けるとこまで行く感じだ。イーリスを離れるまえに悔いは残しておきたくないってだけだよ」

「かしこまりました」


 制覇できれば未練なくカオテッドに行けるんだろうけどね。
 全十階層で四階までしか下りてないからな。無理はしたくない。
 なるべく宝魔法陣の取りこぼしとかないように進みたいところだな。


■ネネ 闇朧族ダルクネス 女
■15歳 セイヤの奴隷


 ご主人様に助けてもらったあの日、私の左手には【創世の女神ウェヌサリーゼ】様の紋が刻まれた。
 まさか自分が奴隷になるなんて思いもしなかった。
 そして奴隷になったことがこんなに嬉しいなんて想像もしなかった。

 普通の奴隷ではこんな気持ちにはならないだろう。
 しかし左手を見れば神に見守られているようで。
 前を向けば誰より強い″使徒″であるご主人様が近くにいるわけで。
 守られる事による安心感、それはこれまでの人生で感じた事のないものだった。


 ……いや、甘えてはいけない。
 むしろ私たち奴隷がご主人様を守らないといけないんだ。
 そう律して今日も侍女服に袖を通し、迷宮へと向かう。


 ご主人様の<カスタム>は本当にすごい。
 まさに女神の使徒にふさわしい超絶スキルだ。

 私はまず<スキルカスタム>という力で察知系スキルの能力を上げてもらった。
 すると今まで近くに行かなければ分からなかった魔物の気配、罠のありかが手に取るように分かる。
 さらには【敏捷】【器用】【攻撃】と上げてもらい、動きも今までとは段違い。
 即座に近づき、即座に魔物を倒すことが出来るようになった。

 魔物を倒すことで経験を積んだのか、それとも能力が上がったことで可能となったのか、<影潜り>というスキルも覚えた。
 これは闇朧族ダルクネスとしての基本スキルのようなもので、暗闇に身体を隠すことで密偵や奇襲を容易にするスキル。
 私が幼い頃から取得するよう特訓を受けさせられていたものだ。


 ここまでがたった一日でのこと。
 私が十五年間苦労して悩んでいたものが、たった一日で晴れたのだ。
 それを悔しいだとか「私の今までは何だったのか」とは思えない。
 全てはご主人様と出会い、ご主人様から授かった力なのだから。


「ネネ、調子はどうだ? いきなり動けるようになって違和感ないか?」

「ん……だいじょうぶ、です」


 ご主人様は優しい。
 奴隷である私にも優しくしてくれる。


「ネネ、ご主人様への返事は『はい』です」

「……はい」


 エメリーは厳しい。
 普段はとても優しいお姉さんだけど、ご主人様に対する侍女の心得を言う時はかなり厳しい。

 そんなエメリーはご主人様のおかげで、戦えないはずの多肢族リームズとは思えないほどの戦闘力を有している。
 速さは私やサリュのほうが速いし、力はイブキに負けるけど、どちらも高水準な上に技術がすごい。

 ただでさえ扱うのが難しそうなハルバードを二本。
 時に左右の上腕・下腕で一本ずつ持ち、時に上下の右腕・左腕で一本ずつ持つ。
 四本の腕を巧みに操り、突いたり斬ったり払ったり……よく頭がこんがらがらないものだと思う。


 イブキは攻撃・防御ともに最高。とくに一撃の威力に関してはご主人様を除けば抜きん出ている。
 さすがは鬼人族サイアンと思ったが、角の折れた鬼人族サイアンは力を失うものらしい。
 失った力を戻し、それ以上に引き上げたのはご主人様の<カスタム>のおかげだとか。

 純粋な前衛はイブキ一人のみ。
 大剣を構える姿を後ろから見ていると、とても安心感がある。
 性格や話し方も頼りがいのある感じだし。


 サリュは狼人族ウェルフィンでありながら回復職。
 ステータスは主に【魔力】に振られているらしい。あとは【敏捷】と【器用】【体力】が少しだとか。
 【魔力】を高めることで、魔法の威力は非常に高い。

 回復魔法もそうだけど、光魔法で魔物を遠距離から打ち抜く。
 その連発速度と豊富な魔力量は、私が今まで見た魔法職の人たちよりはるかに上。
 これが本当に前衛職ばかりの狼人族ウェルフィンなのかと思ったが、ご主人様の手にかかればこうなるのか、と感心してしまう。


 ミーティアも後衛だけど、弓と<火魔法>を使っている。
 ご主人様の<スキルカスタム>によりずっと得意だった<弓術>をさらに強化。
 そして日陰の樹人となった呪いで使えるようになってしまった樹人族エルブスの禁忌、<火魔法>を強化したそうだ。

 樹人族エルブスとして使うことを躊躇していたらしいが、使えるものを使わないとご主人様のお役に立てないと考えたらしい。
 せっかく<火魔法>を使えるのだから扱えるようにならなければと。

 短剣による近接戦も可能なので、エメリーほどとは言わないけれどミーティアも器用貧乏だと言う。
 基本的には【器用】【敏捷】【魔力】を中心に上げているらしいが、ミーティア自身もステータスの管理は難しいらしく、ご主人様にお任せしているとの事。


 私も含め、そしてご自身も含め六人ものステータスを管理しているご主人様は本当にすごいと思う。
 <カスタム>スキルも当然すごいが、それを扱うご主人様もすごい。
 私はステータスやレベルについて色々と説明を受けたが、なんとなくしか理解できなかった。
 みんなもそうらしい。エメリーが一番理解しているらしいけど。

 これからも私はご主人様の手により強くなれるのだろう。
 それがご主人様任せになってしまうところが心苦しくもあるのだが、同時にご主人様の好みで私が作られるような感覚が嬉しくもある。
 私はご期待に応えられるようこれからも努力しよう。
 そう強く思ったのだ。


「ネネ、姿勢が悪いです」

「……はい」


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