カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第五章 黒の主、未知の領域に立つ

104:考えるな、感じろ!

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 B:前衛:イブキ【大剣】・ヒイノ【盾・直剣】・ティナ【レイピア】
   後衛:フロロ【土魔法】・アネモネ【斥候・闇魔法】


■ティナ 兎人族ラビ 女
■8歳 セイヤの奴隷 ヒイノの娘


風の槍ウィンドランス!」


 レイピアの先っぽから出た風の槍ウィンドランスが少し離れたコボルトに当たりました。
 一応倒せたけど……うーん、なんか不満。
 これだったら自分で突っ込んで行ったほうが速い気がします。

 ご主人様がくれた【風撃の魔法レイピア】は、レイピアの突きの動作で『風の槍ウィンドランス』が撃てるというものです。
 魔法を使えない私でも魔法を使えるんだ、と喜びましたが、まだ全然使いこなせている感じがしません。
 使い方が悪いんだと思います。
 せっかくスゴイ武器をもらったのに。


「ティナ、大事なのは威力じゃないぞ。遠距離攻撃の手段を得たという事と、物理攻撃以外の手段を得たという事だ。所謂『幅を広げる』ってやつだな」


 そう、ご主人様は言います。
 でも突っ込んで斬りつけた方が速いし、敵も倒せる気がするんです。
 物理攻撃以外の手段を、というのは分かるんですが。
 なんかこうグッときません。

 ちらりと一緒に戦っているみんなを見ます。


「ははははっ! 見よ! これぞ【魔剣イフリート】の力だ!」

『おおー』


 イブキお姉ちゃん絶好調。魔剣カッコイイ。
 剣自体もゴツゴツして赤黒く光っててカッコイイんですが、刀身が燃えています。カッコイイ。
 後ろで見ているAパーティー、Cパーティーのみんなが拍手しています。


「イブキー、調子にのるなー、取り上げるぞー」

「ハッ! す、すみませんっ! 真面目にやります!」


 ご主人様に怒られました。
 実際の話、扱いが難しいそうなので、ご主人様も「早く使いこなせ」と発破をかけているのです。

 炎を纏った状態で剣を薙ぐと、その軌道上に炎が残って炎の壁フレイムウォールのようになります。
 それは広範囲魔法攻撃と変わらない上に剣自体の威力もあって、さすがは魔剣って感じなんですが、同時に接近している前衛のみんな――私も含めて、当たりそうで怖いんです。
 近づくだけで熱いんです。この侍女服、耐熱効果もあるはずなんですが。

 イブキお姉ちゃん単騎で攻めるならまだしも、パーティー戦闘となると使うのが難しい。
 だったら炎は使わない状態で素直に剣戟したほうがいいんじゃないかと。

 ……でもイブキお姉ちゃんは炎を使いたいみたいなんですが。
 ……私も気持ちはよーく分かりますけど。


「とりあえず炎使うなら振り下ろしか切り上げ、突きだけ纏わせるようにしろ。細かい制御も練習だ」

「ハッ! 精進します!」


 だそうです。
 細かい制御……魔力を普段使わない私も苦手です。
 でも魔法のレイピアを使う以上、私も精進しなければ!

 ふんすと意気込む私ですが、いまだBパーティーはコボルト数体と戦闘中。


「よっ、ほっ。……なるほど弱い相手であれば盾を使うまでもないのね……」


 私のとなりではお母さんがコボルトの攻撃を受けています。
 バックラーじゃなく素手で。

 お母さんは【守護の腕輪】というものをもらいました。
 防御力が上がるというものだそうですが、ご主人様曰く「単純故に強力」だそうです。
 確かに私やイブキお姉ちゃんみたいに、戦闘スタイルを変えずに効果が出るっていうのは羨ましい気がします。

 でも、コボルトの剣を素手で掴むのはどうかと思うけど……お母さん、すごいなぁ……。
 私はいくら【防御】にカスタムされたとしても、素手で受けるのは怖いです。
 とても真似できません。さすがはお母さんです。


「ヒイノー、試すのはいいけどこれ以上は禁止なー。見てて怖いぞー」

「は、はい! 申し訳ありません、つい!」

「魔物で試すくらいならイブキやツェンに攻撃してもらえよー、サリュ付きでなー」

「は、はいっ!」


 怒られました。
 お母さん、防御性能にこだわる所があるからなぁ。
 私が魔物部屋に入るとはしゃいじゃうのと同じだね。


岩の槍ロックランス!」

闇の弾ダークバレット……」


 後衛から放たれた魔法がコボルトを次々に倒していきます。


「ふむ、アネモネも調子良さそうだのう」

「はい……この杖は素晴らしいです……本当に私なんぞにはもったいない……」

「たわけ。それを使いこなせるくらいに強くなれというご主人様からのメッセージみたいなものだ。種族的に我より魔法が得意なのだから、少なくとも我くらいは越えてもらわねばな」

「ふふふ……それはつまり私に死ねと……?」

「言うとらんわ」


 フロロお姉ちゃんとアネモネお姉ちゃんは好調みたいです。
 フロロお姉ちゃんは【震脈の杖】という黄色い魔石がついた、ゴツゴツした見た目の杖になりました。
 アネモネお姉ちゃんは【暗黒魔導の杖】。いかにも『呪われた杖』って感じでカッコイイです。実際は呪われてないそうですけど。残念。

 どっちも土魔法と闇魔法を強くしてくれるらしいです。
 威力や精度、速度、消費魔力とかそこら辺が違うんだとか。
 私にはよく分かりませんが。

 フロロお姉ちゃん曰く、使ってみると全然違うと言ってました。


「ティナに分かりやすく言うとな、グッとやるとスーッと魔力が広がってゾゾッとなってバーンッとなるのだ」

「なるほどー」

「わ、分かったのか、そうか……すごいのうティナは……」


 私も魔法レイピアで風魔法を使わないといけなくなったので、やっぱ魔法使いの人たちは参考になります。
 今まではグッとやって、そのままバーンッでしたが、スーッのゾゾッが抜けていました。
 だからいまいちだったんでしょうか。


風の槍ウィンドランス!」


 あ、ちょっと良くなった気がします。
 出が鋭くなったような、速くなったような。


「あれ? どうしてあのアドバイスで改善するのだ? 我にはもうよく分からんぞ……」

「ふふふ……ティナちゃんは天才……私なんぞとはモノが違う……」


 なんか後ろでフロロお姉ちゃんとアネモネお姉ちゃんが何か言ってますが、よく聞こえません。
 魔法使い同士の打ち合わせでしょうか。


「ティナー、なるべく魔法だけで倒してみろ。魔力の限界までな」

「はいっ!」

「遠くの敵を意識して、どこに命中させるのか考えろ。それと足を止めないように」

「はいっ!」


 足を止めずに魔法だけで、遠くの敵を倒し続ける。
 ほっ! よっ! これは、難しいっ!
 でもみんな頑張ってるんだし私も強くならないとね!





「ご主人様よ、結構鬼畜だのう」

「そうか?」

「動きながら魔法を撃つのは難しいのだぞ?」

「ふふふ……遠くで動く相手に、こっちも動きながら狙いをつけるなんて……私には無理……」

「ティナの一番の強みは”敏捷”だからな。動かずに固定砲台になるなんてダメだ。そうなるくらいなら普通のレイピアにする」

「うむぅ、鬼畜ぅ……」

「ティナちゃんの速度で風魔法とか……ふふふ……速すぎる……」

「こういうのは最初が肝心だからな。慣れる前に戦闘スタイルは決めないと。じゃないと<カスタム>のステ振りも迷うしな」

「なるほど」





「よっと! 風の槍ウィンドランス!」


 あー外れたー。どうやれば当たるんだろ。
 あ、ミーティアお姉ちゃんが走りながら弓撃ってるから、それっぽく……。
 どうやってるのか聞いてみようかなぁ。

 よーし、私も頑張って強くなるぞー!
 お母さん、私がお母さんを守るからね!


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