カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第八章 黒の主、復興の街に立つ

186:神々が集いし場所

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■シャムシャエル 天使族アンヘル 女
■5043歳 セイヤの奴隷 創世教司教位


 大変な任務を仰せつかりました。
 【勇者】たるご主人様のお住まいに神殿を作るという壮大なものです。
 ただの神殿ではございません。何柱もの神々を祀る『総合神殿』というものを作れと。

 まさに多種族を率いる【勇者】様ならではのお考えでしょう。

 皆それぞれに信仰を持ち、それでも尚一つの所で共に祈りを捧げようと、そういうお考えなのです。
 何という革新性。いくつもの信仰がこの一室に全て集まるという、未だかつてない奇跡が起きようとしているのです。

 これは本国に報告しないわけには参りません。
 現状を逐一報告し、この崇高なお考えを後世に伝えるべく残してもらわねば。


 ちなみに私とマルティエルがメモしたご主人様のお言葉、そのご様子は、すでに本国へと報告し、新たな備忘録として編纂作業に入っているはずです。

 次の報告を早く寄越せと、せっつかれております。
 今回の総合神殿の件は本国でも大いに賑わうこととなるでしょう。


 とは言え、与えられたスペースはパーティーホール一室。
 これに皆さんが祀る全ての神像を並べ、簡易祭壇を作らねばなりません。

 部屋の内装にしてもとても神殿と呼べるようなものではございませんし、祭壇の配置の問題もあります。


 とりあえずパーティーホールに元々あったテーブルや椅子、【領域主】のドロップ品展示などは撤去します。
 展示は娯楽室でいいですかね、とりあえず。ほとんどがエントランスに並んでいますし、あるのは少数です。


 空になったパーティーホールに立って悩むのは、私とミーティアさん、エメリーさん、マルティエルです。


「配置は決めるにしても【創世の女神ウェヌサリーゼ】様の祭壇は一番大きく、一番目立つようにすべきです。ご主人様の侍女である以上、皆さんが第一に祈るべき場所ですから」

「ありがとうございます、エメリーさん」

「やったでござる! 嬉しいでござる!」

「そうなると窓側の中央に女神様の祭壇。そこから並んでぐるっと部屋を囲うように配置するべきでしょうか」

「数がありますからね……果たしてどれくらいのスペースがとれるか……」


 皆さんが信仰する神様の祭壇・神像ですから相当な数になります。
 一応皆さんにお聞きしまして、どの神様を祀っているのか確認してみました。


※敬称略
【創世の女神ウェヌサリーゼ】【獣神ダルダッツォ】【正義の神アンディロ】【戦神ブルロイ】【豊穣の神エルトフィール】【手工の神ロンジィ】【樹神ユグド】【運命神リンデアルト】【大地の神ディール】【鍛治の神ドンディラウ】【酒神ベヘレテ】【魔法神マギアロード】【商売の神ディーコック】【農業の神バルア】【造形の神ハンナム】【竜神ドラウグル】【海神アクアル】


 十七柱……。現段階で十七柱です。

 この先ご主人様が新たな侍女を引き入れるであろう事を考えますと、その種族によってはもっと増える事になるでしょう。
 これだけの数の神々を、パーティーホール一室で祀らなければならない。
 なんと難しい命題でしょう。


「こう、両手を広げたこのくらいのスペースが限界じゃないでしょうか」

「そ、そんなに狭くでございますか!?」

「いえ、ミーティアの言う通りでしょう。それでさらに祭壇同士がほぼくっつくくらいでなければ並べ切れません」

「神様大渋滞でござる……」


 それほど狭く小さい祭壇であるならば、そこに置く神像はもうマネキン程度の大きさが限界でしょう。
 飾り付けも最小限にせざるを得ません。
 皆さん納得して下さるでしょうか。少し心配になってきました。


「しかし考えてみれば多種族の我々が手を取り合うように、奉ずる神々同士が近しいというのも悪くないかもしれません」

「……なるほど、言われてみれば確かに。では、いっそのこと神像同士が手を繋ぐというのはどうでしょうか。これならば祭壇が近い理由にもなりますし、我々が共に手を取り合うという象徴にもなります」

「「おお!」」


 その発想はありませんでした! それはとても良い考えに思えます!

 やはり神聖国に籠り、女神様だけにしか目を向けていなかったが故なのでしょう。
 皆さんのお考えの柔軟さには毎日のように感心させられます。


「であれば中央の女神様の祭壇を広めに取り、それで尚手を繋げるように、女神様の神像は一回り大きくした方が良いでしょう」

「ええ、その周りに我々と同じ大きさの神像を並べると。想像してみると壮観ですね」

「なんと神聖な空間でございましょうか」

「やっぱり内装も神殿っぽくしたくなるでござる」


 となると問題はその神像をどうやって作成依頼するのかと。
 石材彫刻となれば北西区なのでしょうが、十七柱もの神像、それも作った事がないであろう神の神像を依頼しなければなりません。
 複数の工房に依頼するにしても手を繋ぎ合わせる為に完璧な設計図が必要ですし、そもそも商業組合がほぼ停止状態なので自分たちで探さなければなりません。

 どうしたものかと、しばし四人で悩みます。


「やはり自分たちで作るべきでしょうか……」

「出来ますかね? エメリーさんは器用だから出来るでしょうけど、私は自信ないです……」

「そもそも北西区の職人を探したところで、例えば女神様の姿形も分からないと思いますよ。創世教会が神聖国以外にないのですから。であるならば我々で作ったほうが良いものが出来そうに思えるのですが」

「確かにそうでございますね……私もマルティエルも何千年も毎日女神様の神像を拝顔しておりましたし」

「女神様のお姿はばっちりでござる! 自分で女神様の神像を作るなんてすごいでござる!」

「侍女全員で事に当たりましょう。自らが奉ずる神を自らの手で作るのです。否とは言えないでしょう」


 エメリーさんの一声で決まりました。さすがは侍女長様でございます。
 それから我々は大量のマジックバッグを持って、北西区へと石材の調達に行きました。合わせて彫刻用のノミやヤスリも大量に買います。
 戻ったら地下の訓練場に並べ、そこを作業場とします。

 夜には皆さんにエメリーさんから神像作成の依頼をしました。


「ええーっ!? 私たちで作るんですか!?」

「神像の彫刻だなんて、出来るかしら……」

「無理だよ! あたし絶対出来ないって!」

「何事も経験でしょうか……」

「楽しそう! 私やるー!」


 反対も少数出ましたが、やはりそこはエメリーさん。有無を言わさず全員強制参加となりました。
 そしてその日から作成を開始。地下からコンコンと鳴り続ける日が続きます。

 皆さん【器用】にも<カスタム>してあるのですが、どうもこういう事にはセンスや得手不得手があるようです。

 ネネさん、サリュさん、ティナさんの三人はご主人様とタイラントクイーンを作った経験からか、かなり器用に作っています。
 ツェンさんやラピスさんは大雑把な性格に難があるのか、苦手そう。
 ジイナさんとエメリーさんはさすがの一言。颯爽とご自分の担当を終わらせてお手伝いに回っています。
 ミーティアさんは、その……監督役をお願いできますか?


 この件に関しては不干渉を決め込んでいたご主人様も、さすがに顔を見せるようになりました。
 ご自分で作ったりはしませんが。
 ノミの一振りだけでもお願いしたいのですが、頑なに彫ろうとはしません。

「やったらどうせ『女神の使徒セイヤが手ずから掘った神像だ』とか言われるんだろ? だから絶対やらんぞ」との事。
 まぁそういう報告を本国にしたい気持ちも少なからずあります。


 そのご主人様は皆の作っている神像を見ながら回ります。


「へぇ、獣神って狼っぽいんだな。これは竜神? 竜じゃん。六枚翼はカッコイイけど竜そのままじゃん。……え、それなに? 海神? これ海神なの? SAN値がやばくなるな……って言うか、獣神にしても竜神にしても手、繋げるの? どうやってやるの? 後ろ足で立たせるの?」


 そこは両サイドの神様が身体に触れている感じにするつもりです。
 海神様は触手があるので問題ないと思いますが。

 そしてご主人様は今まで避けていた、私たちの作る女神様の神像をまじまじと見始めました。
 やっとご興味が湧いたのでしょうか。嬉しい事です。


「あー。シャムシャエル、マルティエル、非常に言いにくいんだけどな……女神ヤツはこんな顔じゃないぞ」

「「えええええ!!??」」

「もうちょっと丸顔で目付きがキツイ。鼻もこんなに通ってないな。美人は美人なんだが……」

「そ、そんな! かなりの力作でございますのに!」

「じゃ、じゃあ聖殿の女神様像も全部違うって事でござる!? 大事件でござる!」


 今まで私たちが女神様のお姿として見てきたものが全く違うお顔だと……これはかなりショックです。
 しかし誰であろう、実際にお会いしたご主人様のお言葉なのですから本当なのでしょう。

 どうしたものか……しばらく放心状態になりました。
 これ、本国に伝えたら大騒ぎってレベルじゃありませんよね……。気が重くなります……。


 そんな事があって修正だの何だのがあったある日の事。
 朝食前の早い時間、フロロさんが食堂へと駆けこんで来ました。
 今まで見た事もない様子のフロロさんです。


「エメリー! ミーティア! シャム! たたたた大変だーっ!」

「どうしたのです、フロロ。騒々しい……」

「はあっ、はあっ、し、神託が下りたのだ! たった今! 我の下に!」


 聞けば、毎朝行っている占いの際に、占いとは全く関係のない神託が降ってわいたそうです。
 それも【運命神リンデアルト】様、【大地の神ディール】様の二柱から同時に。


「落ち着きなさい、フロロ。それはどういった内容なのです?」

「あ、ああ、我らの作っている神像、いや総合神殿に関してだ」


 総合神殿に関しての神託!?
 これには食堂にいた全員の顔が険しいものになります。


「三つあるからよく聞いてくれ。『獣神と魔法神を隣に並べてはいけない』『樹神と海神を隣に並べてはいけない』『女神様の両隣を【運命神リンデアルト】様と【大地の神ディール】様にする事』、以上の三点だ」


 なんと……なんと具体的な神託でしょう。
 これほどの神託を受けられるとは……フロロさんの興奮も分かります。
 しかし、神が我らの行動を見て、それに対し指示を出して来るとは……何とも恐れ多く感じてしまいます。


「……すぐに配置は変えましょう。繋ぐ手の位置も微調整が必要かもしれません。……しかしどういう事でしょうか。神々の序列のようなものがあるのでしょうか」

「分からん。我もそんな話は聞いた事がない。巫女であったミーティアや、司教のシャムはどうだ?」

「私はユグド様からそのようなお話は聞いた事はありませんね。女神様以外の神々に上位下位といった区別もないと思うのですが……」

「私も分からないでございます。創世教の聖典では女神様が最初に神々をお作りしたとあります。もしかしたらその順番が関係しているのかもしれないでございますが……詳しくは何とも……」

「シャムの言う事が正解かもしれませんね。リンデアルト様とディール様が先にお生まれになったとしたら、女神様のお隣と言われるのも分かる気がします。何にせよ、取り急ぎ神託の通りにやり直しましょう」


 これは正直、フロロさんが居て下さって助かりました。
 並べて祀る事に固執して、その順番が不敬につながるなどとは考えもしませんでした。
 危うく神々の怒りに触れる所でした。

 今回の神託に関しては本国に伝えねばなりません。
 神々の中のルールなど、今まで知り得もしなかったのですから。
 それもこれもご主人様の周りにこれだけの人材が集まったからこそ。

 やはり我々天使族アンヘルがここへ来て良かった。
 改めてそう思ったのです。







 数日後、完成した神像の並びを見たご主人様が一言。


「マイムマイムじゃねえか……」


 意味は分かりませんが、これも一応報告しておきましょう。


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