カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十章 黒の主、黒屋敷に立つ

233:スキルオーブ大放出スペシャル!

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「―――というわけで、おかげさまでお店は大丈夫そうなんですが……」

「まじかぁ……」


 コスプレ衣装を提案したのは俺だから今さらやめてくれとか言えないんだが、正直予想外です。
 客寄せの一つと思っていたものが、まさか主力商品になるだなんて。

 なんかますます北西区は歩きづらくなるなあ……いや、コスプレが増えれば俺たちが歩いても紛れるか? むしろ目立たなくなる?

 ともあれ、ドルチェの実家が安定してくれればそれでいいか。
 さすがに不景気続きだとこっちも心配になるし。
 とりあえずドルチェには経過観察として見に行かせよう。


 他の報告として、ポルも南東区のコゥムさんの所にお礼をしに行ってきたらしい。お土産を持って。
 あの人はやっぱりプロと言うか、さすがと言うか。庭や畑の手入れも完璧だったらしいしな。
 これからも何かあれば頼りたいところだ。

 お土産に渡したのは魔道具の『肥料作成キット』。前世で言う、生ごみ処理機みたいなものだ。
 屋敷用にも一つ買って、ポルに運用を任せてある。


「なにこれ! ゴミとか落ち葉入れると肥料になんの!? すっごーい! 助かるよ! アチシ大満足!」


 どうやら喜んでもらえたらしい。アチシ大満足で何よりだ。


 で、今日の報告のメインは俺が本部長から貰ったスキルオーブ十個について。
 当然みんなに配るんだが、誰に何のスキルを与えるか、非常に悩ましい。


 <剛力><鷹の目><瞑想><演算><毒耐性><魔力感知><味覚強化><忍び足><螺旋剣><空拳>


 この十個だな。俺の中で決まっている所から渡していくか。


「まず<味覚強化>はヒイノでいいだろう」

「ありがとうございますっ!」


 これだけは迷宮探索に関係ないものだしな。本部長も数合わせのつもりだったんだろうが。
 やはり料理を主体に考えるべきだし、そうなると料理長であるヒイノになる。
 本人も嬉しそうだからいいだろう。


「<剛力>はイブキか」

「ハッ! ありがとうございますっ!」

「いいなぁーイブキー」


 ツェンがぼやいているが、やはり<剛力>はイブキらしいと思う。
 これは『スキル使用後、短時間、攻撃力上昇』という単純なスキルではある。しかし単純が故に強力。
 前衛の中でも一撃の攻撃力に秀でたイブキかジイナと思ったが、特化する意味でイブキにした。


「じゃあ<空拳>はツェンで」

「おっしゃああ!!」

「ツェン?」

「ひっ……あ、ありがとうございますっ!」


 別にぼやいていたから渡したわけじゃなく、<空拳>はツェンしかいないのだ。
 これは俺の<飛刃>の拳バージョンといった感じらしい。殴った衝撃波みたいなものが飛ぶと。
 当然、体術メインのツェン以外に使えるわけもないので、大人しくツェンに渡す。


「<螺旋剣>はティナだな」

「やった! ありがとうございますっ!」


 <螺旋剣>は剣で突くと、その周りが回転するようにえぐれるらしい。
 風魔法みたいなものなのか、衝撃波みたいなものなのかは知らん。とにかく突きの威力が格段に増す。
 ティナはレイピアで突くのが基本スタイルだから、使いやすいだろう。


 さて、ここから少し悩む。


「<忍び足>……ネネはすでに持ってるな。となればアネモネか? 斥候的に」

「誰にでも使えそうなスキルではありますが、迷宮探索のみを考えればやはり斥候役でしょうか」

「うーん、よしアネモネにしよう」

「ありがとう、ございます」


 アネモネは斥候だが密偵のような事はしないんだがな。ネネ以外で強いて言えば俺かサリュなんだが、俺には<空跳>があるし、サリュは迷宮で単独行動なんてまずしないだろう。
 宝の持ち腐れかもしれんが、使わなけりゃ使わないでいいし、とりあえずアネモネでいいや。


「<毒耐性>はパッシブだよな。やっぱり前衛の方がいいだろう。となると……ジイナか?」

「ツェンの次に敵に接近するのはイブキかジイナでしょう。ドルチェかヒイノというのもありますが」

盾役タンクは【抵抗】も高くしてあるからな。ジイナにしておこう」

「ありがとうございますっ!」


 誰が持っても有効なスキルっていうのは実に悩ましい。
 迷宮で敵が毒攻撃をしてくる、もしくは毒の罠に誤って掛かってしまう。それらを考えるとやはり前衛にはなるんだが。
 ツェンは『防毒のイヤリング』があるし、そうなるとジイナかな、と。


「<鷹の目>……遮蔽物を越えた敵を発見し、遠距離攻撃を命中させるスキル、だよな。どうしたものか」

「普通に考えればミーティアかマルでしょうが」


 遠距離攻撃でも曲射のできない魔法は無理だ。だから弓がいいというのは分かる。
 しかし斥候スキルとしても優秀じゃないのか? 弓を構えてないとダメなのか?
 例えばネネに持たせて……ああ、ネネだと<気配察知>の範囲の方が広そうだ。


「……うん、ミーティアにしてみようか。ものは試しだ」

「ありがとうございます」


 元々【神樹の長弓】で命中精度が高いから、<鷹の目>でさらに性能が上がるなら儲けものだ。
 いくら神器でも視認できなければ攻撃出来ないわけだからな。


「<演算>……これはエメリーの<並列思考>と似たようなものだよな、多分」

「私自身よく分かっていないのですが、おそらく思考速度を上げるのだと思います」


 自分じゃ分からないものなのか、スキル使ってるのかどうか。パッシブだしな。
 迷宮探索で考えれば色々な役割を担う人に持たせるべきだろうな。
 エメリーはなしで、今までスキルオーブを上げてない人……。


「ラピスにしようか」

「よっし! ありがとうございます!」


 前衛後衛と動けるユーティリティな人の方が使いこなせるだろう。
 そういう意味ではポルもそうなんだが……ポルは単純バカで天才肌のままの方が良い感じで作用しそうだし。<演算>とかキャラ違い甚だしいだろ。


「<瞑想>は魔力回復速度上昇だな。これこそ誰でも使えそうだが……やはり純魔が無難かな。フロロにするか」

「おっ、我か。ありがたく頂く」


 迷宮の三階層限定とかだったら一番魔力を使うのはサリュなんだが、逆にそこ以外だとあまり使わないしな。
 全体的に常に魔法を使っている純粋な魔法使いの方が無難。

 そうなると<魔力凝縮>で余計に魔力を使うウェルシアなんだが……最近ウェルシアに何かと上げてばかりだし。ここはフロロで。


「で、最後が<魔力感知>だ。これが最高に悩ましい……」

「すでに持っているアネモネ以外でしたら、誰でも有効ですね」


 普通に考えれば斥候スキルなんだから、ネネだ。しかしネネの<気配察知><危険察知>はすでにそこいらの闇朧族ダルクネスが尻尾を巻いて逃げ出すレベル。
 その上で<魔力感知>を入れても宝の持ち腐れになりそう。だからネネは除外。


「んー……」


 また<魔力感知>が魔法使い系種族に発現しやすい事から、魔力の扱いに慣れている者ほど察知能力が高くなるのかもしれん。
 そう考えると前衛は除外。


『あー』


 後衛で尚且つ、察知能力、斥候能力を上げるべきは……


「サリュかな。<嗅覚上昇><聴覚上昇>の上乗せにもなるし」

「はいっ! ありがとうございます! やった!」


 おお、尻尾ブンブン振れてるねえ。でもまぁ無難っちゃ無難だと思う。
 よしよし、とりあえずこんなとこかな。


「貰えなかった人には申し訳ないが、今度スキルオーブが手に入って迷うようなら優先的に使うから勘弁してくれ」

『はい』

「スキルを新しく覚えた人は、こぞって迷宮に行くような事をしないように。徐々に慣らすように手分けしてな」

『はい』

「明日はティサリーンさんの所に行ってから、南東区で服飾屋と、マルティエルの弓を受け取りに行く。そのつもりでいてくれ」


 さて、また明日からみんなには頑張ってもらおう。
 俺はまずは奴隷の受け取り……いや買い付けに行かねば。逃げていても仕方ない。
 楽しみのような、不安のような……。


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