カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十一章 黒の主、博物館に立つ

263:最凶の見た目詐欺軍団、現る!

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■パティ 小人族ポックル 女
■13歳 セイヤの奴隷


「では今日の迷宮組はこのような形で」

「おお? なんかすごいメンバーになったな」

「問題はないと思いますが」

「うん、バランスもいいし戦力的にも問題はないんだが……」


 あたいは今日も迷宮組に選ばれた。

 やっぱりレベルが低いって言うのと、迷宮に数多く潜る事で実戦経験を積ませたいという師匠からのお願いも考慮されているらしい。
 なんか一日置きに潜っているような気がする。

 師匠との訓練を経て、迷宮への初探索をし、三階層の【領域主】マラソンを経験した。

 それからもCP稼ぎの名目で魔物部屋マラソンをやっているわけだが、さすがに小慣れてきた感がある。

 ろくに戦う事をしらなかったあたいがここまで出来るようになるなんて、考えもしなかったなーと遠い目をしたくなる時も多い。


 と言っても、未だに師匠の索敵範囲には敵わないし、魔物を倒すにしても攻撃面では一番弱いんだよな。多分。

 あたいより後に入ったリンネさんも、魔物と戦っていた経験があり、レベルもあたいみたいに1だったわけじゃない。
 それでも【黒屋敷】のみんなの中に入って戦うのは苦労しているみたいだ。

 あたいは戦う事自体がここに来てからだったから、リンネさんよりも出遅れている感じがする。

 逆に言えば、そんなあたいでも少しは戦えているんだから、やっぱり師匠の特訓と、ご主人様の<カスタム>のおかげなわけだけど。

 元々、逃げ足は速い方だと思ってたけど、今じゃ全然違うからなー。それは最初に<カスタム>して貰った時にすでに驚いた。


 それから毎日のように<カスタム>され、自分の身体の動きに慣れつつ、みんなとの戦闘や迷宮自体にも慣れつつ。
 誰かも言ってたけど、やっぱ数をこなすと非日常も日常になるようで、今じゃあたいも普通に魔物部屋マラソンしていたりする。


 さて、そんなわけで今日も迷宮に行くのだが、迷宮組としてエメリーさんが選んだメンバーにご主人様が少し不安気な顔をしたのだ。


 前衛:ネネ【短剣・斥候】、ティナ【細剣】、パティ【短剣・斥候】
 後衛:サリュ【神聖・斥候】、ポル【水土魔法】、マルティエル【神聖・弓】


「パラダイスか!? ちょっと、私も一緒に行くわよ!」

「貴女は今日はお屋敷ですよ、ラピス」

「ちくしょおおおおお!」


 ラピスさんが身を乗り出して叫んだ所をエメリーさんに止められた。
 ラピスさんはよくあたいの頭を撫でたり、抱っこしてきたりする。ちょっと恥ずかしい。

 あたいはスラムの孤児だから王女様とか恐縮しまくってたのに、ラピスさんのおかげであんまり緊張しなくなった。


「見事にちびっ子どもが揃ったのう」

「戦力的には十分すぎるのに、なーんか心配になるな」

「この六人だけで四階層にも行けるんですがね。なぜか不安になるでございます」


 フロロさん、ツェンさん、シャムさんが追従する。
 あたいはチビの小人族ポックルで年齢も若いから不安なのも分かるんだが、他の五人はとんでもなく強いんだけどな。
 確かに他の人に比べて背は低いけど、あたいの数倍強いってのは、もう嫌ってほど身に染みている。


 とは言え、お屋敷で家事だったり、警備だったり、買い出しだったり色々とあるからこの面子なんだけど。

 リンネさんは訓練だし、ジイナさんとユアさんは工房で忙しい。
 ご主人様は例の博物館とやらの件で忙しそうだ。


 そんなわけで見送られながら屋敷を出て、組合へと向かう。ちびっ子六人衆(フロロさんが言ってた)でテクテクと。


 いつも迷宮組はパーティー規定の六人で行く事が多い。二パーティーを装って行く事もあるけど。
 それはパーティーで潜ってますよという組合に対するアピールも目的の一つらしい。
 Sランクだし、組合員が大勢いる組合ホールの中で、変な事してませんよと体裁を保つためだとか。

 んで、迷宮に入ってから、二~三人に分かれる。
 それぞれ一階層の魔物部屋を順々に回って、マラソンするという流れだ。

 さすがに受付嬢さんには「【黒屋敷】は魔物部屋を回って変な探索をしている」とバレているそうだが、組合員の人たちの前では「六人パーティーで探索しているだけ」という認識がされているだろうと。希望的観測も含む。


 という事で、組合までは六人が一塊で行く。
 あたいが言うのも何だが、本当に子供の集団みたいだ。
 いつもよりも、どこか楽し気にワイワイしているから余計にそう見える。


「サリュお姉ちゃん、今日は二組に分かれる? 三組?」

「うーん、斥候が三人いるから三組でもいいんですけど、パティちゃんも居るし安全に二組ですかね。みんなどう思う?」

「私はどっちでも大丈夫です。誰と組んでも速い人ばっかなんでそっちのが心配です」

「私は二組でいいと思うでござる。回復役ヒーラーは二人でござるし」

「んー、パティを二人で回らせるのが不安。経験って意味でいいとは思うけど」


 あたいはやっぱ二人より三人がいいかなー。何があるか分からないし。油断出来るほどあたいは強くない。
 そんな感じで話し合った結果、三人二組で回る事になった。
 ちなみに今回の迷宮組のリーダーはサリュさんだ。結構気合いが入ってるっぽい。


 そうこうしているうちに組合に到着。
 もう大通りに出た時点から「【黒屋敷】だ」と騒がれたり、遠目でヒソヒソ言われてたりする。
 最近はさすがに目立つ事にも慣れてきた。奇異の視線にも。


「あー【黒屋敷】は今日も探索か。勤勉だな……って、何この面子!?」
「うわぁ……この六人は初めてじゃねえか? 思い切るなぁ……」
「【黒屋敷】じゃなかったら許されざるな」
「背だけ見れば鉱人族ドゥワルフのパーティーとかも変わらないんだが、あいつら髭もじゃだからな」
「対してこっちは見事に子供だ。いや、年齢がよく分かんないのが混じってるけど」


 組合に入ればヒソヒソ話はもっと多くなる。
 やっぱ【黒屋敷】はSランクだし変な目で見られる事も多いらしいんだが、その上であたいたちみんな侍女だからな。

 さすがにこれが変だって事はあたいだって分かる。
 さらにちびっ子六人衆で来れば、いつもよりヒソヒソ話が多いのも当然。

 そして受付嬢さんがあたいたちを見つけるなり、声を出した。


「ちょっ! ちょっと!? サリュちゃん、ネネちゃん! きょ、今日はこの六人で潜るの!?」

「こんにちはメリーさん。そうですよ?」

「ん。問題ない」

「い、いや、問題ないのかもしれないけど問題だらけって言うか何と言うか……」


 受付嬢さんはあたいたちを止めたいけど、止められないみたい。
 この羊人族サテュロの受付嬢さんは、みんなに一番近しい受付嬢さんなんだそうだ。
 だから力を知っている反面、心配しているのだろう。

 でも、受付嬢さんに言われたからって探索を止めるわけがない。
 リーダーのサリュさんが受付嬢さんに「大丈夫ですよ」と説明し、渋々納得させる。


 と、そんなやりとりをしている時に、組合の入口から笑い声が聞こえた。


「ガハハハハ! おい見ろよ! メイドがいるぜ! ガキのメイドだ!」
「おいおい、ガキの遊び場じゃねえんだよ! ここが組合だって分かってんのか!?」
「わざわざカオテッドくんだりまで来たかいがあるじゃねえか! いきなり面白い見世物だぜ!」
「笑わせてくれるよ! こんなガキの遊び場が組合本部だってんだからな! ハハハ!」


 うわぁ……ここまで面と向かって嘗められたのは、あたいは初めてだな。【レッドなんとか】の時とは少し違うし。

 いくらあたいが弱っちい小人族ポックルでも、【黒屋敷】の名前が売れてたから喧嘩を売られた事はない。
 ご主人様には最初から「俺が基人族ヒュームってだけで絡んでくるやつがいる」とは言われてたが。

 どうやらカオテッドに来たばかりっぽい、背の高い岩人族ロックルスを中心としたパーティー。
 そいつらはニヤニヤしながら大股で近づいてくる。
 周りの組合員の「うわぁ」という声があちこちから聞こえた。


「ん。ちょうどいい。パティ、よく見てて」

「えっ」


 小声で師匠からそう言われた。
 イブキさんがやったように、また投げ飛ばすんだろうか。師匠が? この体格差で?


「いっちょまえに武器ぶら下げて組合員のつもりか? ああん? ガキは帰っておままごとでもしてろや! おら、どきやがr――」

 ――ガシッ――ドゴッ――ビューン――ドシャアアアン

「え、え、な、何しやがったコラぁ!」
「ガキが! 嘗めんじゃねえぞ!」
「お仕置きしてやるよオラァァ!」


 そんな事を言いながら次々に襲い掛かる輩は、次々に投げられた。

 あたいとマルちゃんは後ろで見ているだけ。師匠、サリュさん、ティナちゃん、ポルちゃんが壁のように立ちはだかった。

 よく見てろと言われたから集中して見てみたが、みんなこういった荒事に慣れているのか、とてつもなく速い。

 イブキさんが獅人族ライオネルの人を投げた時と大差ないように見えた。

 師匠はともかく、年下のティナちゃんや後衛のサリュさん、ポルさんまで同じように攻撃出来るなんて……やっぱとんでもないな。


 投げられた人たちは強制的に組合の外に放り出され、寝たまま起きる気配はない。気絶しているようだ。

 そして周りからは拍手喝采。
「さすが【黒屋敷】!」「小さくてもやっぱ投げるんだな!」「久しぶりに見たぜ!」などなど遠くから褒める。

 近くに居た受付嬢さんも特に心配はしていなかったようで、「大丈夫?」と軽く確認してから放り出された組合員の処理をしていた。


「はぇ~、私、また何も出来なかったでござる」


 マルちゃんが隣でそんな呑気な事を言っている。
 あたいが今のをやれと言われたら出来るだろうか。……自信がない。
 しかし、いつの間にか隣に戻っていた師匠がこう言うのだ。


「だいじょぶ。パティももう投げられる」

「えっ」

「そういうステータスに、もうなってる。だから出来る」


 つ、つまり、次に絡まれたらあたいが今みたいに攻撃するのか……?
 出来るって言われても……。いや、師匠が「出来る」って言う時は、確実に出来るようになれって事だ。
 今までの訓練でもさんざん言われた。

『だいじょぶ。もう目を瞑ってても投げられたナイフを避けられる』とか。

 全力で拒否したかったけど、師匠の中では「出来る事」らしく死にもの狂いで避けたものだ。……ちょっと現実逃避したくなる。


「帰ったら投げ飛ばす訓練する。今みたいに」

「は、はぁ」


 やっぱ投げるのかー、あたいも。
 訓練するって言うからぶっつけ本番じゃないだけマシかな……なんか段々と師匠の考えに染まって来たようで自分が怖い。


「とりあえず今は迷宮に集中」

「はい」

「今日は魔竜剣に慣れるために、攻撃は魔法以外禁止」

「ええっ!?」


 そ、そんなっ! あたいまだ短剣で普通に戦う事すら苦手なんだけど!?
 ますますみんなの足手まといになるイメージしか湧かない!
 ちょ、ちょっと師匠!? 考え直して……ああ、ダメですよね、そうですよね、やっぱ。


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