カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after1:五人の新人侍女

1-17:五人娘、はじめてのカオテッド大迷宮・前編

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■クェス 狐人族フォクシー 女
■15歳 セイヤの奴隷


「では迷宮組、Aチームがイブキ、サリュ、ティナ、マル、カイナ、ケニ。Bチームがネネ、ウェルシア、シャム、コーネリア、キャメロ、クェスとします」

「うん、師匠とセットって感じだな。いいだろう。リーダーはそれぞれイブキとシャムシャエルな。よろしく頼む」

「「はい」」


 侍女教育が一通り終わり、戦闘訓練重視となって数日、やっと迷宮に潜れる日が来ました。
 前日にはエメリーさんに言われていましたが昨夜の部屋ではみんな嬉しそうで気合いが入っていました。
 二度と入れないと思っていた迷宮ですし、この為に買われ、この為に特訓してきたようなものですからみんなの気持ちも分かります。


 私はどちらかと言うと不安な面が大きいです。

 レイラを喪った迷宮にまた潜る事に対する恐怖。それもあるのですが、【黒屋敷】の先輩方の力を知ってしまった今となってはそれほど恐怖を覚える事はありません。
 むしろ、弱い私がちゃんとついて行けるのか、まともに魔法を使えるのか、そういった不安です。

 ウェルシアさんにも色々と教わってはいるのですが……ウェルシアさんもとんでもない魔法使いですからね。私なんかとは比較になりません。

 私も火魔法用の杖と闇魔法用の杖、二本を持っているので「わたくしと同じように二杖流にしますか?」などと聞いてきましたが全力でお断りしました。
 一本の杖でさえ扱いに困っているのに、二本同時とか無理に決まってます。
 ウェルシアさんは「せっかくお仲間が出来ると思いましたのに」としょんぼりしていましたけど。導珠族アスラの伯爵様と一緒にしないで下さい。こっちは獣人系種族なんですよ?


 ともあれ、朝食後のミーティングでチーム分けも終わり十二人で迷宮組合へと向かいました。
 今日も博物館は盛況なようです。行列の間を抜けて進みます。

 ご主人様とエメリーさんは私たち五人を同時に初探索に行かせたかったようで、それは有り難い事です。一緒がいいですし。
 でも六人パーティーと考えると随伴出来るのが一人しか居ない。だから二パーティーに分けたとの事。

 <カスタム>に関する勉強はかなりしましたので、経験値配分の件についてもある程度は分かっています。
 まぁ目に見えるものではないのであくまで理屈だけですが。理解しているのも私とキャメロくらいですし。
 とにかく七人以上の同時戦闘はなるべく避けようという事です。おそらく迷宮に入ったらチームで分かれて行動するのでしょう。


「サリュとティナが一緒ってのは心強いな! これでヒイノさんが居れば【黒屋敷】の獣人系種族全員集合じゃないか!」

「ですねー。益々私とカイナの出番が怪しくなりますよー」

「どうでしょう、私はほとんど出番ないと思いますけど。ケニさんの<魔力探知>指導役ですし」

「最初の探索は心が折れない事が第一でござる」

「私はいっぱい斬っていいの? イブキお姉ちゃん」

「今日は訓練と経験目的だからな。カイナとケニ次第だな」


 前を歩くAチームの人たちが話しています。

 例の「カイナふるぼっこ事件」の後、私たちとサリュちゃんの関係性は近くなったと思います。
 それに伴いカイナも「さん」とか「ちゃん」付けで呼ぶ人が少なくなりました。私からすれば今までが変に体裁整えてる感じでカイナらしくないと思ってましたけど。
 ちなみに私もサリュちゃんとはお互いに「ちゃん」付けです。同い年ですし。


 そんな感じで和気藹々と話しながら組合に着きました。
 やはりお屋敷からだと結構近い。これだけ組合員が多い街なのに中央区にはお金持ちしか住めないって言うのも納得の便利さです。

 朝一の組合は多くの人で混みあっていますが、入口に私たちが立つなりザザーッと人波が割れます。
 街中で何度か見た光景ですけど、組合員の人たちは恐怖やら畏れ多いやら、そんな表情で逃げるように距離をとる人も多い。

 どういう事でしょうか。英雄じゃないのかと。SSSランクだから畏怖してる感じなのでしょうか。

 ともかく歩きやすくなった組合に入り、まずは受付へ。羊人族サテュロの受付嬢さんの前が自動的に空いたのでそこにイブキさんが向かいます。


「おはようございますイブキさん。その娘たちが噂の?」

「噂かどうだか知らんが新人だ。登録……再登録になるのか。ともかく手続きを頼む」

「はぁ~五人ですか。過去最多ですね」


 私たちは奴隷に堕ちた段階で身分証明をはく奪されています。
 迷宮組合の組合員証も手元にありません。もしかしたら過去の登録履歴があるのかもしれませんが、カードも新しくなるのでどちらにせよ作り直しです。
 私たちは用紙に必要事項を書き込み受付嬢さんに提出しました。

 少し待って渡されたのは真っ黒のカード。
 そこには「ランク:SSS」「クラン名:黒屋敷」「種族:狐人族フォクシー」「名前:クェス」などが書いてあります。
 裏面には何も記載がありません。当然ですけど。

 今までがEランクだったのにいきなりSSSランク……クランがそうだから仕方ないんですけど、それでもやっぱり恐縮してしまいます。みんなも「おおー」と言っています。


「五人共元組合員らしいですから言うまでもないですけど迷宮を走ったり魔物部屋入ったりしちゃダメですからね! イブキさん、いじめちゃダメですよ!?」

「ハハハ、分かっているさ。いつも通り最初は迷宮を経験させるだけだ。無茶はさせん」

「いっつも無茶してるくせに! もうっ!」


 何やら不穏な会話を受付嬢さんと終わらせたイブキさんは私たちを奥へと誘います。
 カオテッドの大迷宮の入口はこの組合の中にあります。
 氾濫とかを考えると怖い気もしますが、建物も堅牢ですし、迷宮入口となっている下り階段の周りは二重三重の防壁となっているようです。
 さらに一番内側は鉄格子。牢屋の中に入口がある感じですね。そこから迷宮に入ります。

 そうしてAチームとBチームで分かれました。


「じゃあシャム、そっちは頼む。私たちは右ルートから行くから」

「分かりました。お任せ下さい」


 そこからシャムさんによる迷宮講習、そして訓練が始まりました。



■コーネリア 熊人族クサマーン 女
■18歳 セイヤの奴隷


「さて、皆さんは迷宮探索の経験がございますし、カオテッド大迷宮の特徴なども博物館で予習されています。今さら『迷宮とはこういうものだ』と説明するまでもないでしょう。もちろんご質問があれば随時伺いますが」


 シャム殿は先頭でフワフワと浮かびつつ、ごくゆっくりと前に進む。


「一先ず、隊列は前衛に私とコーネリアさん、中衛にネネさんとキャメロさん、後衛にウェルシアさんとクェスさんとしましょう。『通路における基本陣形』ですが。ネネさん、それでよろしいですか?」

「ん。問題ない」

「それと今回の探索の目的ですね。今回は新人三名を我々の探索・・・・・に慣れさせる事。これが第一でございます。戦闘技術と斥候技術両方ですね。それに伴い隊列も変化すると思いますのでその都度学んでいきましょう」

『はい』


 自分は盾役だ。最前衛で敵を抑える事が第一。その為には敵の動きと味方の動きを常に把握しておく必要がある。

 それと同時に剣での攻撃も課題の一つ。
 これは剣士の如く斬り掛かるという事ではなく、一度盾受けしてからの反撃という基本的な部分だ。
 【黒屋敷】の盾役は自分から斬り掛かる事も求められるとは聞くが、今日の所は盾受けと位置取りが優先だと聞いている。

 さらに<嗅覚強化>も試さなくてはならない。
 【黒屋敷】に斥候は多いが自分が出来て損という事はない。だから訓練が必要。
 具体的にはどれほどの距離で、どの魔物が何体か、それをこの迷宮での実戦で調べる。屋敷の訓練とは勝手が違うだろう。


「我々が日常的に行っている迷宮探索となりますとその目的は変わってきます。新しい武器やスキル、魔法などの訓練が入る場合もありますが基本的には第一にCP稼ぎ。次いで経験値稼ぎとなります。ここはご主人様からもご説明あったと思いますが」


 そう。【黒屋敷】の侍女は基本的に毎日迷宮に潜っている。ローテーションしながらだが。
 通常の迷宮組合員であれば一度潜れば、次の探索まで数日開ける。
 体調、装備、消耗品、それらが完璧な状態で挑まなければ危険だと、迷宮初心者でも知っているからだ。

 しかし【黒屋敷】の場合、クラン内に優秀な回復役ヒーラーが三人も居るし、専属鍛冶師と専属錬金術師が居る。

 元より資金力に飽かせてご主人様の<インベントリ>には大量の物資が入っているそうだし、継戦能力という意味では群を抜いている。
 だから連日の探索でも長期間の探索でも支障はないというのだ。
 一般の組合員からすれば何とも羨ましい、いや、反則的な戦力と能力に思えるだろう。

 そしてその毎日行う探索の目的は主に<カスタム>する為のCP稼ぎ。
 自分も散々教えられたし、今いち理解出来ずに、夜部屋でクェスに復習などもしてもらった。ご主人様の<カスタム>は【黒屋敷】においてそれくらい重要な要素だからだ。

 その甲斐あってCP稼ぎの手段や用途などは自分も理解している。

 弱い魔物――ゴブリンなど――を我らが倒しても、ご主人様の<カスタム>には【1CP】が溜まるらしい。
 強い魔物ならば【5CP】や【10CP】なども居るようだ。ここの一階層であれば【5CP】というのは【領域主】クラスらしいが。

 ともかく数を倒し、CPを稼ぎ、それを使って我々のステータスやスキル、侍女服を強化したり、お屋敷を改造したりと様々な用途に使っていると。

 実は魔物を倒すよりも『人を殺す』方がCPは貯まりやすいらしい。
 先日の聖戦では獣帝国軍と大量の魔族を倒した事で、現状かなりのCPが貯まっているそうだ。
 それでも毎日探索するのは最早日課になっているのだとご主人様は少し呆れた顔で仰っていた。
 どうも先輩方は迷宮好きな方が多いらしい。


 ともあれ日常的に迷宮に潜り、CPを稼ぎ、経験値を稼いでレベルを上げ、ご主人様に<カスタム>して頂き、強くなる。
 これを繰り返す事で先輩方は尋常ならざる力を得ていると。

 我々も同じように励まなければならない。そう思う。
 正直、訓練場で見せて頂いている力量は我々と差がありすぎるし、このままでは足手まといになるばかりだからな。

 我々にはなるべく迷宮に行くようお達しも出ているし、その期待にお応えしなければならない。
 主君の命に応えるのが騎士の義務だ。うむ。


「ではコーネリアさん、キャメロさん、クェスさんに索敵をしてもらいつつ進みましょう」

『はい』




■キャメロ 猫人族キャティアン 女
■16歳 セイヤの奴隷


「! 前方右通路からゴブリン二体!」


 ボクが元々持っていた索敵スキルは<聴覚強化>と<危険察知>。
 それにご主人様が見出した<気配察知>が加わったけど、どうやらこっちの方が精度は高い。

 <危険察知>は時々ミスるし、<聴覚強化>だと魔物の特定までには至らないケースが多い。
 鳥系の魔物とか飛んで来たら気付けないのが居るしね。
 それに比べると今はだいぶ索敵が出来るようになったと実感している。


「やはりキャメロの方が早いな」

「わ、私も全然です」


 コーネリアは<嗅覚強化>。クェスは<危険察知>と<聴覚強化>を見出された。
 それでもやはり<気配察知>の方が優秀なのだろう。斥候役の面目躍如といった所。


「んー、まだ狭い」


 しかしネネちゃん師匠は納得いってないご様子……。
 いやこれでも随分成長したなって思ってるんですよ? ご主人様の<カスタム>と師匠の特訓の成果で。
 でもパティちゃんの最初期よりも索敵範囲は狭いらしい。
 それはパティちゃんが天才ってだけでは……いえ、なんでもないです。


「ではそこまで進みます。見えた段階でクェスさんは一体倒して下さい。もう一体は引き付けた後にコーネリアさんが盾受けから攻撃で排除としましょう」

「「はい!」」


 攻撃はクェスとコーネリアに任せるという事で、ボクは通路の端に寄って索敵を継続。
 ネネちゃん師匠とシャムさんも一緒だ。
 そうしてゴブリンが通路から顔を出した所でクェスの魔法が放たれた。


「<炎の槍フレイムランス>!」


 以前は<炎の弾フレイムバレット>ばかり使っていたが、今は訓練でもほとんど使っていない。
 より強力になった魔法は、見るからに勢いが違う。
 射程も威力も上がったそれは、手前のゴブリンだけでなく二体目のゴブリンまでをも同時に焼き殺した。


「ああっ!」

「あらら、コーネリアさんの出番がなくなりましたね。次回に回しましょう」

「ご、ごめんなさい! コーネリア!」

「いや、いい。安全に狩れればそれが一番だ」


 クェスの思っていた以上に威力があったらしい。単体魔法一発でゴブリン二体を倒すっていうのは経験がないからなぁ。
 嬉しい誤算って感じだとは思うけど。


「事前にゴブリンが来ると思っていたから必要以上に魔力を練りましたね。理想は杖を構えるのと同時に練って、すぐさま撃つ。この速度です」

「はぁ~、ウェルシアさんのそれはちょっと速すぎかと……」

「数を熟せば慣れるものです。あとは狙う位置ももう少しギリギリを狙うべきですかね。そうすれば二体目のゴブリンは生き残っていました」

「こ、この距離でその精度は……」


 ウェルシアさんに言わせるとクェスの魔法には改善点が多いらしい。
 あの頃に比べると格段に強くなってるんだけどね。それでもまだまだだと。
 実際ウェルシアさんとかアネモネさんの魔法を見てると長距離でも全く避けられる気がしないんだけど。

 そうしてボクたちの特訓メインの探索が続き、やっと自分たちの力が掴めて来たかなという所でシャムさんが言った。


「ではそろそろ魔物部屋に行きましょうか」


 …………は?


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