カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after3:纏いし炎は最強の証

3-10:纏炎族に適した剣とは

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


 グレンさんとセキメイにあげる武器。
 模擬戦で真剣を使っているのはグレンさんだけだから本当はグレンさんのだけでいいのかもしれないけど、ついでとばかりにセキメイ用も造ってしまう。面白そうだし。

 問題は普通の竜素材の剣にするか、魔竜剣にするか、そしてその素材に何を使うかという所だ。

 悩んだあげく、大人しくグレンさんとセキメイに魔竜剣に関して説明する事にした。
 魔導王国の上層部はすでに知っているし、グレンさんたちもやたら吹聴するタイプじゃないし。内緒でねと言えばいいだろう。


「魔石が付いているのは分かりましたが……装飾ではなかったのですか!?」

「ふむ、竜素材の魔法剣……それで魔竜剣か。凄まじい武器があったものだな」


 竜素材が大量にある事、その加工技術を持つ高レベルの鍛冶師が居る事、同じく高レベルの錬金術師が居る事、その二人の意思疎通が図れる環境である事。
 これらがかみ合わないと魔竜剣なんてものは生まれない。
 だから魔導王国でもメルクリオの報告を受けてパニックだったらしい。

 しかし残念ながらうちの屋敷では標準装備である。
 滅多に使わないエメリーのサブウェポンも魔竜剣だし、魔竜剣より強力な魔剣が六本、神器が二本もある。
 さすがに神器の事は言えないが、改めて見るととんでもない装備だなーと他人事のように感じた。


 で、問題は纏炎族シマァの固有スキル<炎纏>ってやつだ。剣に炎を纏わせるやつ。
 それで戦う事が多いというので、<炎纏>の状態で魔法が使えなければ魔竜剣にする意味がない。

 そもそも火魔法は纏炎族シマァ十八番おはこらしいし、例えば『炎岩竜の剣に火魔法の魔石』とかする意味がない。

 じゃあ風竜か水竜を使うか、となると<炎纏>を使っている状態で風魔法やら水魔法が使えるのか、という疑問がある。
 と言うか火耐性が高いのは炎岩竜か火竜だろうし、そこまで火耐性の高くない風竜や水竜の剣で<炎纏>を十全に使えるのかとも思う。
 炎岩竜や火竜の剣に火以外の属性魔石を付ける事も可能だが……うーん。


「とりあえず試すか」

「いや、セイヤ。試すと言っても下手すれば貴重な魔竜剣を痛める事になるぞ? 壊れるかもしれん」

「そ、そうです! その剣一本でどれほどの価値があるか……」

「まぁ、ダメならダメでジイナとユアに直してもらいましょう」


 素材はいっぱいあるしな。二人の仕事が増えるだけだ。フォローするしかない。

 というわけで訓練場に戻り、グレンさんに色々と試してもらう。
 エメリーのマジックバッグに色々と入っているから素材や属性の違いを見つつ、扱えるのか検証だな。
「武器庫か……?」とセキメイが呟いていたが、エメリーのマジックバッグはまさしく武器庫だと俺も思う。


「うーん、やっぱり<炎纏>が問題ですかね。アダマンタイトの方が実は良いのかもしれない」

「竜素材の剣の方が強いは強いのだがな。火耐性となると限られるのかもしれん」

「父上の【白炎】が強すぎるのですよ。私の<炎纏>では問題ないのですから」


 風竜と水竜の素材で造った剣ではグレンさんの<炎纏>に耐えられなかった。剣身が若干溶ける感じがする。
 竜素材は魔法耐性が元々高い。例え風竜素材であっても風属性以外に弱いなんて事はない。もちろん風耐性は抜群に高いが。
 それでも炎に負けるのはセキメイの言う通り、グレンさんの白い<炎纏>が強力すぎるのだ。

 となると、魔竜剣を造るにあたっては炎岩竜か火竜の素材で造るしかない。これならばアダマンタイト以上に火耐性を持っているのは確実だ。

 しかしそこに組み込む魔法が問題となる。
 炎岩竜や火竜の剣に合うのは火魔法。そして纏炎族シマァは元々火魔法が得意だと。
 わざわざ魔竜剣で火魔法を使う意味がない。


 そんなわけで水魔法の魔石を入れてみる事にした。火属性の剣に水属性の魔石。
 火魔法に比べると魔法の威力は落ちる。しかし使えないという事もないし、普通の魔法剣と同程度の水魔法が撃てる事はすでに確認済みだ。エメリーは聖戦の時にそれで公爵級悪魔族ディーモンと戦ったらしいしな。


「まさか私が魔道具以外で水魔法を扱える日が来るとはな。何ともありがたい話だ」

「威力に期待しないで下さいよ? サブとか牽制とかのつもりでいて下さい」

「火属性以外の手段というのが重要なのだよ、纏炎族シマァにとってはな。特に魔法の属性防御に関しては纏炎族シマァならば誰しも思い悩む所だ」


 魔石に籠める魔法は<水の壁ウォーターウォール>か<氷の壁アイスウォール>にするらしい。
 纏炎族シマァは<炎身>で身体を炎に変える事で物理攻撃を完全に封じる事が出来る。

 だからこそ魔法防御に着目されるのだが、火耐性はどの種族よりも高い。
 問題は水属性に極端に弱いという事だ。どの種族より弱いらしい。

 敵が水魔法や水属性のブレスのような攻撃を仕掛けてきた場合、纏炎族シマァは<炎の壁フレイムウォール>などで防ぐしかない。

 水魔法の威力が高く、<炎の壁フレイムウォール>を抜けられれば終わりだ。
 まぁグレンさんレベルになると<炎の壁フレイムウォール>も強度があるだろうし、抜けられた所で躱しそうではあるが、それでも防御手段があるのとないのでは違うのだろう。
 セキメイに関しては言わずもがなだ。


「んじゃそういう事でジイナとユア、頼むな」

「はいっ!」「は、はいぃ」

「すまんな、よろしく頼む」

「ご面倒お掛けします。よろしくお願いします」


 よし、これで心置きなく模擬戦出来るな。
 グレンさんとセキメイにはなるべく居てもらって、みんなを鍛えてもらった方が助かる。もちろん俺もだ。


 しかし……。

 どうやら俺は不出来な弟子らしい。
 侍女たちは皆、グレンさんやセキメイと模擬戦を繰り返し、それを経験として上達しているのが目に見えて分かる。
 専門的な事は分からないが、武器の振り方や体捌きとかを見る限り、非常に『巧く』なっていると。

 それは集落で落ちこぼれだったネネ、戦闘経験が浅いドルチェやヒイノ、逆に長年の経験があるカイナやコーネリアにしてもだ。

 皆が皆、目に見えて上達している。
 もちろんグレンさんやセキメイのおかげでもあるが、【器用】への<カスタム>も効いているのではないかと予測している。


 で、問題の俺だが、もちろん【器用】にもガンガン<カスタム>している。
 器用特化のエメリーに勝るとも劣らないほどだ。侍女の誰よりもステータスを高くしているのは単純に主人としての威厳を保つ為である。

 だと言うのに俺の剣技は一向に上達しない。
 もちろん前世で剣など握った事はないし戦闘経験などない。転生して初めて戦いを覚えたわけだ。
 しかしそれはドルチェやヒイノ、ティナやエメリーも同じなわけで、経験の浅さというのは理由にならない。


 ではなぜこれほど差が出るのか。
 あまり考えたくないが、種族特性なのではないかと思うわけだ。
 戦闘技術を身に付ける事において、基人族ヒュームは極端に遅い、手間が掛かると。

 確かに最弱種族と言われるだけある。一番戦いから遠い種族であるが故に戦闘技術は身に付かない。

 そう結論付けてしまうと種族に逃げているようで癪なんだが、ここまで差があるとそう思わざるを得ない。

 同じ非戦闘系種族のエメリーやドルチェは訓練が身になっているのになぁ……いやエメリーはちょっと規格外だけども。
 非戦闘系種族の中でもやはり基人族ヒュームは別格という事なんだろうか。
 今さらながら、神聖国の保護区から出ないというのも頷ける話だ。


 ともかくそんな俺でも訓練するとしないとでは違うはずだし、少なからず経験にはなるはずだ。
 結果として現状のように技術差をステータスで誤魔化す事になるかもしれないが、それでもやる。
 グレンさんに若干呆れられつつ、胸を貸してもらう。

 これも主人としての威厳の為なんだよ!
 このままだと侍女たちにボロ負けしちゃうだろうが!
 主人は侍女より強くなければならん!(使命感)


 ……いやもう負けそうなのが居るんだけどね。


「しかしセイヤ、ここの侍女たちは逸材ばかりだな。よくもこれだけの戦力を集めたものだ」

「自分でもそう思います。集めすぎだとも思いますけど」

「はははっ! ただ強いだけでなく伸びしろがまだまだあるというのが素晴らしい。特にティナだな。セイヤが『剣聖を継ぐ者』と推すのも分かる」


 グレンさんも絶賛。ティナはセキメイ相手だと確実に勝ってしまうので、もっぱら模擬戦の相手はグレンさんだ。

 グレンさんはエメリーやイブキ、ツェンあたりを強者として見ているらしいが――ミーティアは後衛と兼用だから短剣のみだとセキメイといい勝負――中でもティナは抜群だと言う。
 それは現在の実力と伸びしろも含めた評価なのだろう。


 ティナをレイピア二刀流とし、<流水の心得>を与えた頃から動きは見違えるようになった。
 単に二刀流に慣れたという事もあるだろう。ガーブの動きを模倣したのも良かったのかもしれない。

 その時点でイブキが負けそうになっていたのだが、さらに【魔剣アドラメレク】を装備してから一段と強くなった。

 雷の魔剣と呼ばれるそれは、行動速度上昇のバフと攻撃力上昇のバフを常に受けているようなものだ。ついでに攻撃に雷属性付与。
 その代わりに自身に継続ダメージと、近くの味方にまで通電を及ぼす。
 魔剣故にピーキーで強力な力だ。

 帯電状態で模擬戦をやられると、俺やエメリーも負けそうになる。
 俺はステータスのゴリ押し、エメリーは多彩な戦術と器用さで何とかするしかない。


「今はまだ直線的で分かりやすい攻撃しか出来ん。その攻撃も体格通りに軽いものだ。しかし<流水の心得>を十全に使い、体捌きと剣の扱いが伸びれば――」

「そうなるともう勝てませんね」

「私もな。いや、魔剣さえ使わせなければ何とかなるかもしれんが」


 と、そういう事だ。
 八歳のティナにはこれから先の時間がいくらでもある。
 装備はすでに最高。スキルも十分。迷宮に行く機会も多いし、模擬戦で戦う相手にも不自由ない。
 これだけ土俵が出来上がっていて、本人に資質とやる気があるのだから困ったものだ。

 しかしそんなティナを鍛えるのが楽しそうなグレンさん。娘以上に気に掛けているようにも思う。セキメイが嫉妬しそう。

 もう一度戦いたいと言っていたガーブの面影をティナに見ているのか、将来の好敵手として楽しみなのか。
 いずれにしてもティナの強化は俺たちにとっても有り難い。
 しばらくはグレンさんにお任せしよう。


 俺はいつまでティナの壁としていられるのか。
 主人としてはなるべく高い壁でありたいものだ。


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