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伯爵家
第2話 少女と出会い
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部屋を出てもと来た通路と逆の方向にまっすぐ進むと中庭にでた。先ほど見た庭と同じように草木はきれいに切りそろえられ管理が行き届いていることがよくわかる庭である。中央にそびえるように建っている噴水もその優美さを助長している。そして、そこには金色の髪をなびかせ木剣を振るう少女が一人いた。白い陶器のような肌には無数の水滴流れており、長いこと剣を振っていたのだろうとうかがえる。
「シンシア様、指南役の俺様をお連れ致しました」
少女はこちらを見ると宝石のような目を見開き、ほんの少し後ずさった。無理もない話だ。仮面で顔を隠し、漆黒の外套で体を覆った人間なぞ不審者以外の何ものでもないのだから。普段なら胸のプレート、いわゆる認識票で態度は軟化されるが世間知らずであるだろうお嬢様には期待できない。まずは自分から歩み寄る姿勢が必要だろうと俺は感じた。
「はじめまして私はブラッドと申します。最高位冒険者にして、迷宮を攻略した英雄にございます。この度はシンシア様の指南役に選ばれ大変光栄にございます。浅学菲才の身でありますので態度に些か問題があるかと存じますが平にご容赦ください」
俺は無機質な声で精いっぱいおどけたようにちぐはぐな自己紹介をしてみせた。シンシアは目を丸くし、ぷるぷると震え、我慢できなくなったのかぷふっと空気が漏れるような音をさせた。
「ふふっ、すみません。あまりにもおかしくて。てっきり真面目な方に見えたので。」
少女はひとしきり笑うと、ごほんとせき込み背をただす。
「申し遅れました。私はシンシア・フォン・アイヴァ―と申します。短い期間ですがご指導ご鞭撻のほどお願いいたします」
シンシアは服のすそをつまみ嫋やかに頭を下げる。その流麗な仕草は煌びやかなドレスを幻視させるほどだ。流石と言わざる負えない。少女の美しい所作に圧倒されたが、目的は十分に達成できたといえよう。
「ええ、宜しくお願い致します。それで剣の訓練をされていたようですが日ごろからされているのですか」
「ただやみくもに剣を振るっているだけです。大したことではありません」
「いえ、継続的な鍛錬ができるということは一種の才能ですよ」
「本当に大したことはしていないんです。それに私一人ではこれくらいしかできませんから」
少女は自嘲的な笑みを浮かべ剣を見つめた。どうゆうことだろうかと思っていると不意に声がかかる。
「それではシンシア様、私は業務に戻らせていただきます。ブラッド様のお部屋につきましてはお食事の後にご案内いたします」
それだけ言うと一礼し、屋敷の中に入っていく。俺はそれを無言でその背中を見送る。少女との距離感に疑問を持った俺は少女に問いかける。
「さきほどのクロムさんでしたか。あの方は昔からこの屋敷にいらしたのですか」
「いえ、つい最近入った方ですよ。前任者が倒れられたので。すごく優秀なのであの人は重宝しているようです」
あの人と呼ぶ当たりアイヴァ―夫人との仲はあまりよくないようだ。だが、それも仕方がない。彼女は実母ではないのだから。この子の母親は確かずいぶん昔に亡くなっているはずだ。しかもシンシアの母親は妾であったため正妻である夫人とは折り合いがよいほうが不自然と言える。
「そうですか。不躾な質問に応えて頂きありがとうございます」
「ブラッド様、口調が固いですよ。私は教えを乞う身なのですからそんなにかしこまられると困ってしまいます」
シンシアは先ほどのお返しだとばかりにおどけてみせた。俺はその様子から初対面のマイナスな印象を払拭できたなと心の中でほくそ笑む。
「それは失礼。貴族のお嬢様相手に最初から無礼な口を叩くわけにはいかないからな。どんな人間か少し探らせてもらっただけだ」
「そうでしたか。それなら安心してください。私は貴族であって貴族でないようなものですから」
俯きがちに発せられた言葉からやはりこの屋敷には問題があるな思いと俺はそっとため息ついた。
「シンシア様、指南役の俺様をお連れ致しました」
少女はこちらを見ると宝石のような目を見開き、ほんの少し後ずさった。無理もない話だ。仮面で顔を隠し、漆黒の外套で体を覆った人間なぞ不審者以外の何ものでもないのだから。普段なら胸のプレート、いわゆる認識票で態度は軟化されるが世間知らずであるだろうお嬢様には期待できない。まずは自分から歩み寄る姿勢が必要だろうと俺は感じた。
「はじめまして私はブラッドと申します。最高位冒険者にして、迷宮を攻略した英雄にございます。この度はシンシア様の指南役に選ばれ大変光栄にございます。浅学菲才の身でありますので態度に些か問題があるかと存じますが平にご容赦ください」
俺は無機質な声で精いっぱいおどけたようにちぐはぐな自己紹介をしてみせた。シンシアは目を丸くし、ぷるぷると震え、我慢できなくなったのかぷふっと空気が漏れるような音をさせた。
「ふふっ、すみません。あまりにもおかしくて。てっきり真面目な方に見えたので。」
少女はひとしきり笑うと、ごほんとせき込み背をただす。
「申し遅れました。私はシンシア・フォン・アイヴァ―と申します。短い期間ですがご指導ご鞭撻のほどお願いいたします」
シンシアは服のすそをつまみ嫋やかに頭を下げる。その流麗な仕草は煌びやかなドレスを幻視させるほどだ。流石と言わざる負えない。少女の美しい所作に圧倒されたが、目的は十分に達成できたといえよう。
「ええ、宜しくお願い致します。それで剣の訓練をされていたようですが日ごろからされているのですか」
「ただやみくもに剣を振るっているだけです。大したことではありません」
「いえ、継続的な鍛錬ができるということは一種の才能ですよ」
「本当に大したことはしていないんです。それに私一人ではこれくらいしかできませんから」
少女は自嘲的な笑みを浮かべ剣を見つめた。どうゆうことだろうかと思っていると不意に声がかかる。
「それではシンシア様、私は業務に戻らせていただきます。ブラッド様のお部屋につきましてはお食事の後にご案内いたします」
それだけ言うと一礼し、屋敷の中に入っていく。俺はそれを無言でその背中を見送る。少女との距離感に疑問を持った俺は少女に問いかける。
「さきほどのクロムさんでしたか。あの方は昔からこの屋敷にいらしたのですか」
「いえ、つい最近入った方ですよ。前任者が倒れられたので。すごく優秀なのであの人は重宝しているようです」
あの人と呼ぶ当たりアイヴァ―夫人との仲はあまりよくないようだ。だが、それも仕方がない。彼女は実母ではないのだから。この子の母親は確かずいぶん昔に亡くなっているはずだ。しかもシンシアの母親は妾であったため正妻である夫人とは折り合いがよいほうが不自然と言える。
「そうですか。不躾な質問に応えて頂きありがとうございます」
「ブラッド様、口調が固いですよ。私は教えを乞う身なのですからそんなにかしこまられると困ってしまいます」
シンシアは先ほどのお返しだとばかりにおどけてみせた。俺はその様子から初対面のマイナスな印象を払拭できたなと心の中でほくそ笑む。
「それは失礼。貴族のお嬢様相手に最初から無礼な口を叩くわけにはいかないからな。どんな人間か少し探らせてもらっただけだ」
「そうでしたか。それなら安心してください。私は貴族であって貴族でないようなものですから」
俯きがちに発せられた言葉からやはりこの屋敷には問題があるな思いと俺はそっとため息ついた。
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