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伯爵家
第8話 終わりと始まり
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あれから数時間、幾度となく模擬戦を繰り返した。結果的に言えばシンシアは一度も攻撃を当てるどころか触れることさえできなかった。当然と言えば当然のことだ。最高位冒険者と貴族令嬢、戦闘経験には天と地ほどの開きがあるのは明白なのだから。だが、少女の剣術はなかなかのものだった。現時点でも中級冒険者並みの腕前はあるだろう。相手もおらず、ただ単に木剣を振っているだけでこれだけできるのだから大した才能である。才能だけならば自分も超えるのではないかとさえ俺は考えている。
模擬戦をしているうちに日が傾いてきたので二人は部屋に戻り、その後夕食の席についた。この時もアイヴァー夫人はいなかった。何事もなく手早く食事を済ませると老執事と少女に挨拶して部屋に戻る。こんな変わり映えないしない日々が最終日まで続いた。だが、その中で唯一変わったことと言えばシンシアがついに一撃俺に当てたのだ。当てたといってもほんの剣先がかすった程度のものだったが少女は歓喜に身を震わせていた。その時、老人が屋敷のほうから歩いてくるのが見えた。
「俺様、時間でございます。門に馬車を用意していますのでお越しください」
それだけ言うと屋敷の中に消えていく。振り返ると先ほどまで喜びに浸っていた少女が真剣なまなざしでこちらを見つめていた。
「先生、約束通り一撃当てたのでお願いをかなえてくださいますか?」
「ああ、いいぞ。言ってみろ」
俺は心臓はいつもより少し大きな音を鳴らしていた。迷宮都市までついて行きたいとか言われても今すぐどうこうするのは厳しい。
「もし……もし、私が迷宮都市を訪れたならまた指導してくれませんか?」
意外な願いだ俺はそう思った。別に迷宮都市に行く当てがあるわけではないだろうに。だが、とても都合がいい願いだ。
「わかった。お前が来たときは歓迎しよう。そうだ、その証と俺に一撃を入れた記念としてこれをやろう」
俺は黒い穴から前に出したブロードソードの形状をした漆黒の剣とその鞘を取り出し、剣を鞘に入れ差し出す。少女は目を輝かせ剣を受けとる。
「先生、いいんですか!」
「別にいい。その剣は何本かあるからな。実を言うとその剣はお前に見せていないもう一つの魔法で作ったものだ。切れ味、耐久性どちらも一級品だぞ。大切に使えよ」
「はい! 一生大事にします!」
少女は剣を抱きしめるように抱え込む。まるで愛おしい子供を母親が抱きしめるようだ。
「まあ、これでしばらくさよならだな。お前が迷宮都市に来ることを期待している。その剣を冒険者ギルドで見せれば俺に会える。待っているぞ」
「はい!」
元気のよいその声を背に俺は門に向かった。屋敷を抜け、門の近くまで行くと大きな馬車と馬型のゴーレムが見えてきた。魔道馬車だ。
「お待ちしておりました。迷宮都市まではこれでお送りいたします。それと伝えることがあるのですが……」
「そこからは私が話すわ」
そこにはこの一週間姿を見なかったアイヴァー夫人がいた。その装いは初めて会った時と違い黒を基調とした地味なドレスに代わっていた。
「私も迷宮都市に行く用事があるの。だから、同じ馬車に乗ってもらうことになるのだけれどいいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとう助かるわ」
夫人はふんわりとした美醜を浮かべ答える。俺の仮面で覆われた顔は対照的に歪んでいた。予想していたとはいえ面倒なことになるだろうと一人ごちる。
「話はついたようですので出発いたしてもよろしいですか?」
二人は頷き、馬車に乗り込む。中は無駄に華美な意匠が施されており、かなり揺れる魔導馬車とは思えない作りであった。
「では、出発いたします」
そう言うと独りでに馬車が動き出す。魔力で強化されたゴーレムは力強い足取りで進んでいく。これが無事、迷宮都市までは続けばよいと俺は思っていた。
模擬戦をしているうちに日が傾いてきたので二人は部屋に戻り、その後夕食の席についた。この時もアイヴァー夫人はいなかった。何事もなく手早く食事を済ませると老執事と少女に挨拶して部屋に戻る。こんな変わり映えないしない日々が最終日まで続いた。だが、その中で唯一変わったことと言えばシンシアがついに一撃俺に当てたのだ。当てたといってもほんの剣先がかすった程度のものだったが少女は歓喜に身を震わせていた。その時、老人が屋敷のほうから歩いてくるのが見えた。
「俺様、時間でございます。門に馬車を用意していますのでお越しください」
それだけ言うと屋敷の中に消えていく。振り返ると先ほどまで喜びに浸っていた少女が真剣なまなざしでこちらを見つめていた。
「先生、約束通り一撃当てたのでお願いをかなえてくださいますか?」
「ああ、いいぞ。言ってみろ」
俺は心臓はいつもより少し大きな音を鳴らしていた。迷宮都市までついて行きたいとか言われても今すぐどうこうするのは厳しい。
「もし……もし、私が迷宮都市を訪れたならまた指導してくれませんか?」
意外な願いだ俺はそう思った。別に迷宮都市に行く当てがあるわけではないだろうに。だが、とても都合がいい願いだ。
「わかった。お前が来たときは歓迎しよう。そうだ、その証と俺に一撃を入れた記念としてこれをやろう」
俺は黒い穴から前に出したブロードソードの形状をした漆黒の剣とその鞘を取り出し、剣を鞘に入れ差し出す。少女は目を輝かせ剣を受けとる。
「先生、いいんですか!」
「別にいい。その剣は何本かあるからな。実を言うとその剣はお前に見せていないもう一つの魔法で作ったものだ。切れ味、耐久性どちらも一級品だぞ。大切に使えよ」
「はい! 一生大事にします!」
少女は剣を抱きしめるように抱え込む。まるで愛おしい子供を母親が抱きしめるようだ。
「まあ、これでしばらくさよならだな。お前が迷宮都市に来ることを期待している。その剣を冒険者ギルドで見せれば俺に会える。待っているぞ」
「はい!」
元気のよいその声を背に俺は門に向かった。屋敷を抜け、門の近くまで行くと大きな馬車と馬型のゴーレムが見えてきた。魔道馬車だ。
「お待ちしておりました。迷宮都市まではこれでお送りいたします。それと伝えることがあるのですが……」
「そこからは私が話すわ」
そこにはこの一週間姿を見なかったアイヴァー夫人がいた。その装いは初めて会った時と違い黒を基調とした地味なドレスに代わっていた。
「私も迷宮都市に行く用事があるの。だから、同じ馬車に乗ってもらうことになるのだけれどいいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとう助かるわ」
夫人はふんわりとした美醜を浮かべ答える。俺の仮面で覆われた顔は対照的に歪んでいた。予想していたとはいえ面倒なことになるだろうと一人ごちる。
「話はついたようですので出発いたしてもよろしいですか?」
二人は頷き、馬車に乗り込む。中は無駄に華美な意匠が施されており、かなり揺れる魔導馬車とは思えない作りであった。
「では、出発いたします」
そう言うと独りでに馬車が動き出す。魔力で強化されたゴーレムは力強い足取りで進んでいく。これが無事、迷宮都市までは続けばよいと俺は思っていた。
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