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伯爵家
第7話 リスタート
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少女はいまだに信じられないかのように自分の手のひらを見つめている。何故昨日まで魔力を上手く動かすことさえできなかった自分が魔法を制御でいているのかと考えているのだろう。
「せ、先生。私、私、魔法を使えたんですか! なんであんなに簡単に使えるんですか! これは夢ですか!」
シンシアは自分の頬を抓りながら大声で問う。少女の瞳には驚愕と期待がありありと浮かんでいる。今まで使えなかったものがあっさりと使えるようになり信じられない気持ちと切望していた未来が訪れたことを喜び、信じたいという気持ちがせめぎ合っているのだろう。今までも感情を簡単に読み取れていたが今は輪をかけてわかりやすい。
「少し落ち着け。これは現実であり、偶然でなく必然だ。昨日お前は魔力操作ができてないと思っていたかもしれないがあの段階に行くまで本当なら数か月かかってもおかしくない。つまり、お前は天才で魔力操作の基礎を一日で習得してしまったということだ」
シンシアに俺はそう告げたが実際は彼女自身の技術や感覚が優れているからではなく、その体質が優れているのだ。人間の細胞は魔力を生成し、留める性質はあるが循環させる性質はない。そのため魔力が動くための道がなくどろどろとした不健康な血液のように流れづらい。だから、普通ならその道を作るために何回も魔力を流す練習する。だが、この少女はほんの数時間魔力を動かすだけでそれができてしまったのだ。余程魔力との親和性が高い体なのだろう。まったく羨ましい限りだと俺は一人ごちる。そんな俺の感慨をよそに少女は両の手を強く握りしめ、ぎゅっと目を瞑り、体を丸め込むような姿勢で喜びを表していた。
「私にも才能はあったんだ! これで……これで私は……」
かすれるようなか細い声でシンシアはつぶやいた。不意に届いたその声に俺はぴくりと反応したがその先を聞くことはなかった。続きは大体予想はできている。だが、ここで口に出しても仕方がないことだ。その願いは彼女自身の力で叶えなければ意味のないことなのだから。
「喜んでいるところ悪いがまだ魔法が使えたというだけだ。本来の魔法使いならスタート地点ということだぞ。ここからが本番だということを胸に刻め」
「は、はい! 先生!」
シンシアは慌てて姿勢を正し返事をする。こちらをまっすぐ見つめるその目には陽光に輝く彼女の金色の髪のような艶やかな光を浮かべている。昨日と違い、その雰囲気からは魔法への恐れは完全に消えており早く次のことを教わりたいという意欲さえ感じる。
「まあ、偉そうなことを言ったが大層なことを教えられるわけではないがな。ところで、お前の魔法は光を作り出すという魔法であっているか?」
「はい、そうです。ですが、私も一度しか使っていないので詳しくは分からないですが……」
「そうか。だが、光を作るという魔法でおそらく間違いないだろう。ここで大事なことがある。魔法の効果は術者の認識が反映される。例えば、炎を生み出す術者が火がどんなものでも燃やすというイメージを持っていれば岩や水のような本来燃えないものさえ燃やすことができる。つまり、魔法はあらゆる物理法則を超越し術者によってその性質を変えるものだということだ。少し手本を見せよう」
そう言うと俺の持ちあげた右手の前に黒い穴のようなものが現れる。その中に手を入れると一本の剣を取り出した。その剣は刀身から柄まで真っ黒に染まっており、刀身は普通の剣よりも厚くなっていた。
「これは俺の魔法、空間を操作するというものだ。俺は空間を世界そのものと定義し、魔法を使っている。だから、さっきの魔法は別の世界を作るイメージで異空間を作り、そこにものを収納している。また、世界を繋ぐイメージで……」
そう言うと俺の背後に先ほどと同じような黒い穴ができ、彼はその中に入る。するとシンシアは後ろから肩を叩かれ、振り返る。その目には黒い穴と俺の姿が映っていた。
「このように別の場所に移動できるというわけだ。確かに魔法は複数持つことはできないがイメージの仕方によっては色々な使い方ができるわけだ。特に特異魔法は火力の面では属性魔法に劣る場合が多いため柔軟な発想が必要だ」
「なるほど……よくわかりました!」
少女は満開の花のような笑みを浮かべ元気よく返事をする。だが、すぐに何か疑問が浮かんだのだろう。手を高く上げ、疑問を呈する。
「先生、攻略者は複数使えるのではないですか? 父がそのように言っていたのですが……」
「ああ、俺は使えるぞ。だが、それはもともと魔法を使えた奴が迷宮を攻略してもう一種類使えるようになったというだけだ。全員が複数使えるわけじゃない」
「なんで複数使えるのですか?」
「それはレガリアという武器を攻略者は持ってるからだな。これのおかげでもう一種類の魔法が使える。現代の技術ではどうやって作っているのかさえ不明な不思議な武器だ」
「先生! 見せてもらえませんか?」
少女はきらきらとした瞳を向けてくる。俺はふっと息を吐くと再び黒い穴から一振りの剣を取り出す。その剣は先ほどの剣と同様にすべてが黒く塗りつぶされていた。だが、先ほどの剣はブロードソードに近い形状だったがこれはロングソードの形状に近く、柄頭には幾何学模様が刻まれた真紅の宝石のようなものがはめ込まれている。
「これが俺のレガリア、<虚の剣/アクソナス>だ。触れるなよ。使用者以外が触れると弾かれるからな」
シンシアは触れるギリギリのところで食い入るように剣を見ている。それは美しい宝石や絵画に人が魅入られるようであった。数分経っても微動だにしないため俺は痺れを切らして声をかける。
「もういいか?そろそろ本題に入るぞ」
「はい! いいものを見せて頂きありがとうございます」
「よし、では訓練再開だ。お前には柔軟な魔法の使い方を学んでもらうため俺と模擬戦を行う。もちろん、俺は魔法も武器も使わない。そして、もし一回でも攻撃を当てられたら俺のできる範囲でお前の願いを叶えてやろう」
少女はごくりと喉を鳴らす。緊張と期待が入り混じった雰囲気だ。実際この提案は渡りに船のはずだ。
「準備はいいか?」
少女はこくりと頷き、木剣を構える。
「では、はじめ!」
その宣言をするや否や地をけり、俺に切りかかった。
「せ、先生。私、私、魔法を使えたんですか! なんであんなに簡単に使えるんですか! これは夢ですか!」
シンシアは自分の頬を抓りながら大声で問う。少女の瞳には驚愕と期待がありありと浮かんでいる。今まで使えなかったものがあっさりと使えるようになり信じられない気持ちと切望していた未来が訪れたことを喜び、信じたいという気持ちがせめぎ合っているのだろう。今までも感情を簡単に読み取れていたが今は輪をかけてわかりやすい。
「少し落ち着け。これは現実であり、偶然でなく必然だ。昨日お前は魔力操作ができてないと思っていたかもしれないがあの段階に行くまで本当なら数か月かかってもおかしくない。つまり、お前は天才で魔力操作の基礎を一日で習得してしまったということだ」
シンシアに俺はそう告げたが実際は彼女自身の技術や感覚が優れているからではなく、その体質が優れているのだ。人間の細胞は魔力を生成し、留める性質はあるが循環させる性質はない。そのため魔力が動くための道がなくどろどろとした不健康な血液のように流れづらい。だから、普通ならその道を作るために何回も魔力を流す練習する。だが、この少女はほんの数時間魔力を動かすだけでそれができてしまったのだ。余程魔力との親和性が高い体なのだろう。まったく羨ましい限りだと俺は一人ごちる。そんな俺の感慨をよそに少女は両の手を強く握りしめ、ぎゅっと目を瞑り、体を丸め込むような姿勢で喜びを表していた。
「私にも才能はあったんだ! これで……これで私は……」
かすれるようなか細い声でシンシアはつぶやいた。不意に届いたその声に俺はぴくりと反応したがその先を聞くことはなかった。続きは大体予想はできている。だが、ここで口に出しても仕方がないことだ。その願いは彼女自身の力で叶えなければ意味のないことなのだから。
「喜んでいるところ悪いがまだ魔法が使えたというだけだ。本来の魔法使いならスタート地点ということだぞ。ここからが本番だということを胸に刻め」
「は、はい! 先生!」
シンシアは慌てて姿勢を正し返事をする。こちらをまっすぐ見つめるその目には陽光に輝く彼女の金色の髪のような艶やかな光を浮かべている。昨日と違い、その雰囲気からは魔法への恐れは完全に消えており早く次のことを教わりたいという意欲さえ感じる。
「まあ、偉そうなことを言ったが大層なことを教えられるわけではないがな。ところで、お前の魔法は光を作り出すという魔法であっているか?」
「はい、そうです。ですが、私も一度しか使っていないので詳しくは分からないですが……」
「そうか。だが、光を作るという魔法でおそらく間違いないだろう。ここで大事なことがある。魔法の効果は術者の認識が反映される。例えば、炎を生み出す術者が火がどんなものでも燃やすというイメージを持っていれば岩や水のような本来燃えないものさえ燃やすことができる。つまり、魔法はあらゆる物理法則を超越し術者によってその性質を変えるものだということだ。少し手本を見せよう」
そう言うと俺の持ちあげた右手の前に黒い穴のようなものが現れる。その中に手を入れると一本の剣を取り出した。その剣は刀身から柄まで真っ黒に染まっており、刀身は普通の剣よりも厚くなっていた。
「これは俺の魔法、空間を操作するというものだ。俺は空間を世界そのものと定義し、魔法を使っている。だから、さっきの魔法は別の世界を作るイメージで異空間を作り、そこにものを収納している。また、世界を繋ぐイメージで……」
そう言うと俺の背後に先ほどと同じような黒い穴ができ、彼はその中に入る。するとシンシアは後ろから肩を叩かれ、振り返る。その目には黒い穴と俺の姿が映っていた。
「このように別の場所に移動できるというわけだ。確かに魔法は複数持つことはできないがイメージの仕方によっては色々な使い方ができるわけだ。特に特異魔法は火力の面では属性魔法に劣る場合が多いため柔軟な発想が必要だ」
「なるほど……よくわかりました!」
少女は満開の花のような笑みを浮かべ元気よく返事をする。だが、すぐに何か疑問が浮かんだのだろう。手を高く上げ、疑問を呈する。
「先生、攻略者は複数使えるのではないですか? 父がそのように言っていたのですが……」
「ああ、俺は使えるぞ。だが、それはもともと魔法を使えた奴が迷宮を攻略してもう一種類使えるようになったというだけだ。全員が複数使えるわけじゃない」
「なんで複数使えるのですか?」
「それはレガリアという武器を攻略者は持ってるからだな。これのおかげでもう一種類の魔法が使える。現代の技術ではどうやって作っているのかさえ不明な不思議な武器だ」
「先生! 見せてもらえませんか?」
少女はきらきらとした瞳を向けてくる。俺はふっと息を吐くと再び黒い穴から一振りの剣を取り出す。その剣は先ほどの剣と同様にすべてが黒く塗りつぶされていた。だが、先ほどの剣はブロードソードに近い形状だったがこれはロングソードの形状に近く、柄頭には幾何学模様が刻まれた真紅の宝石のようなものがはめ込まれている。
「これが俺のレガリア、<虚の剣/アクソナス>だ。触れるなよ。使用者以外が触れると弾かれるからな」
シンシアは触れるギリギリのところで食い入るように剣を見ている。それは美しい宝石や絵画に人が魅入られるようであった。数分経っても微動だにしないため俺は痺れを切らして声をかける。
「もういいか?そろそろ本題に入るぞ」
「はい! いいものを見せて頂きありがとうございます」
「よし、では訓練再開だ。お前には柔軟な魔法の使い方を学んでもらうため俺と模擬戦を行う。もちろん、俺は魔法も武器も使わない。そして、もし一回でも攻撃を当てられたら俺のできる範囲でお前の願いを叶えてやろう」
少女はごくりと喉を鳴らす。緊張と期待が入り混じった雰囲気だ。実際この提案は渡りに船のはずだ。
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