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帝国動乱
第3話 本拠地
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食事を終えると、宿に向かっていた。迷宮都市は居住区、商業区、迷宮区の三つの区画からなっており、宿や家が立ち並ぶ居住区を現在二人は歩いている。シンシアは伯爵の遺産をほぼすべて受けとっており金には余裕があったため自分が宿泊している最上級の宿に泊めることにしたのだ。ここなら安全面でも機能面でも屋敷で暮らしていた時に劣らぬものが享受でき、尚且つこちらの情報が流れることもないため安心してここを離れることができる。
「今日はもう修行は行わない。お前はここで明日まで待機だ」
「私は折角冒険者になったのですから何かしたいのですが……」
シンシアはいかにも不満ですという態度を崩さず、半眼でこちらを一瞥した。
「もちろん、やることは用意してある」
そう言うと少女は先ほどとは打って変わって鮮やかな青色の瞳を輝かせ、期待するような視線を送ってくる。実に現金なものだと俺はそっと息を吐く。
「これを読んでおくことだ。ちなみに明日からは依頼を受け魔物の討伐に向かう。そこでそれ本をちゃんと読んでいるかのテストを行うからな。そのつもりで勉強しろ」
俺は黒い穴から一冊の本を取り出しシンシアに渡す。それを見た少女は少し残念な様子を見せたがすぐに切り替え、笑みを浮かべはつらつとした口調で答える。
「分かりました。明日を楽しみにしといてくださいね」
言い終えると小走りで宿に向かっていく。どうやら冒険者には力だけでなく知識も必要なことを理解しているようだ。やはり伯爵から冒険者の心得のようなものを教えてもらっていたのだろう。だが、どうにも聞き分けが良すぎるきらいがある。悩みを抱え込んでなければいいが。そんなことを思いながら少女が宿に入っていくのを見送ると大きな黒い穴を出現させ、移動する。
穴を潜るとそこには等間隔に並んだ石柱と長い廊下が眼下に広がっていた。仮面を外しながら窓の外を見ると濃い霧で覆われている。そのせいか光があまり差し込まず若干薄暗い。俺は甲高い足音を響かせながら廊下を進み突き当りの扉に手を掛けようとした瞬間、柱の影から勢いよく少女が飛び出してくる。その両手には黒い双剣が握られており、鋭い一撃が俺の首筋に吸い込まれるように振るわれる。だが、俺はそれを予見していたかのようにひらりと身をかわし、蹴りで反撃する。少女はそれを剣で受け止め、空中でくるりと回り着地する。
「ノイン、帰ってくるたびに不意打ちするのはやめろ」
俺がうっとおしそうに言うと真っ黒な外套を身に纏った少女はそれに答える。
「にいが中々相手してくれないのが悪い。それに最近弟子をとったとか」
「……やっぱり知ってたか」
「ん。ユニ様が知らないことなんてないから。それにユニ様おしゃべり」
「ああ、俺も嫌というほど知ってるよ」
そう言いながら俺はドアノブを回し中に入る。そこにはだだっ広い空間が広がっており、その中央には白い石でできた大きなテーブルとそれを挟むようにソファーが置かれていた。その片方には身の丈ほどの大きな杖を持った少女が座っており、傍らには輝くような銀髪を靡かせるメイドが立っていた。
「久しぶりですね。アイン。いえ、今は俺だったかしら?」
俺は少女に近づき胸に手を当て一礼する。
「いえ、今は裏組織カームベルの一員アインです。それ以上でも以下でもありません」
「そうですか。それはよかった。でも、そんなに畏まらなくていいのですよ。昔みたいに砕けた口調でいいと思いませんか? ねえ、フィリア?」
ユニは傍に控えていたメイドに問いかける。
「そうですね。私もそう思います。敬語だと少し距離を感じて寂しいですね」
「昔は昔、今は今です。自分の中での切り替えのようなものなのでご容赦ください」
「仕方ないわね。許してあげるわ。カームベルは個人の自由を尊重してますからね」
「ありがとうございます」
俺は恭しく頭を下げる。満足そうな顔をユニはした後一枚の紙を差し出した。
「これは報告書? 黒蟻からか。内容は第一皇子の暗殺……まさか!」
「そう。今回の依頼は黒蟻に代わり帝国の第一皇子の暗殺よ」
俺は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、ユニはうっすらと笑みを浮かべていた。
「今日はもう修行は行わない。お前はここで明日まで待機だ」
「私は折角冒険者になったのですから何かしたいのですが……」
シンシアはいかにも不満ですという態度を崩さず、半眼でこちらを一瞥した。
「もちろん、やることは用意してある」
そう言うと少女は先ほどとは打って変わって鮮やかな青色の瞳を輝かせ、期待するような視線を送ってくる。実に現金なものだと俺はそっと息を吐く。
「これを読んでおくことだ。ちなみに明日からは依頼を受け魔物の討伐に向かう。そこでそれ本をちゃんと読んでいるかのテストを行うからな。そのつもりで勉強しろ」
俺は黒い穴から一冊の本を取り出しシンシアに渡す。それを見た少女は少し残念な様子を見せたがすぐに切り替え、笑みを浮かべはつらつとした口調で答える。
「分かりました。明日を楽しみにしといてくださいね」
言い終えると小走りで宿に向かっていく。どうやら冒険者には力だけでなく知識も必要なことを理解しているようだ。やはり伯爵から冒険者の心得のようなものを教えてもらっていたのだろう。だが、どうにも聞き分けが良すぎるきらいがある。悩みを抱え込んでなければいいが。そんなことを思いながら少女が宿に入っていくのを見送ると大きな黒い穴を出現させ、移動する。
穴を潜るとそこには等間隔に並んだ石柱と長い廊下が眼下に広がっていた。仮面を外しながら窓の外を見ると濃い霧で覆われている。そのせいか光があまり差し込まず若干薄暗い。俺は甲高い足音を響かせながら廊下を進み突き当りの扉に手を掛けようとした瞬間、柱の影から勢いよく少女が飛び出してくる。その両手には黒い双剣が握られており、鋭い一撃が俺の首筋に吸い込まれるように振るわれる。だが、俺はそれを予見していたかのようにひらりと身をかわし、蹴りで反撃する。少女はそれを剣で受け止め、空中でくるりと回り着地する。
「ノイン、帰ってくるたびに不意打ちするのはやめろ」
俺がうっとおしそうに言うと真っ黒な外套を身に纏った少女はそれに答える。
「にいが中々相手してくれないのが悪い。それに最近弟子をとったとか」
「……やっぱり知ってたか」
「ん。ユニ様が知らないことなんてないから。それにユニ様おしゃべり」
「ああ、俺も嫌というほど知ってるよ」
そう言いながら俺はドアノブを回し中に入る。そこにはだだっ広い空間が広がっており、その中央には白い石でできた大きなテーブルとそれを挟むようにソファーが置かれていた。その片方には身の丈ほどの大きな杖を持った少女が座っており、傍らには輝くような銀髪を靡かせるメイドが立っていた。
「久しぶりですね。アイン。いえ、今は俺だったかしら?」
俺は少女に近づき胸に手を当て一礼する。
「いえ、今は裏組織カームベルの一員アインです。それ以上でも以下でもありません」
「そうですか。それはよかった。でも、そんなに畏まらなくていいのですよ。昔みたいに砕けた口調でいいと思いませんか? ねえ、フィリア?」
ユニは傍に控えていたメイドに問いかける。
「そうですね。私もそう思います。敬語だと少し距離を感じて寂しいですね」
「昔は昔、今は今です。自分の中での切り替えのようなものなのでご容赦ください」
「仕方ないわね。許してあげるわ。カームベルは個人の自由を尊重してますからね」
「ありがとうございます」
俺は恭しく頭を下げる。満足そうな顔をユニはした後一枚の紙を差し出した。
「これは報告書? 黒蟻からか。内容は第一皇子の暗殺……まさか!」
「そう。今回の依頼は黒蟻に代わり帝国の第一皇子の暗殺よ」
俺は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、ユニはうっすらと笑みを浮かべていた。
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