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帝国動乱
第15話 リスタート
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俺は研究室を出て大広間向かった。数日前もここを通ったなと思いながら長い廊下を進み扉を開ける。そこには誰の人影もなくだだっ広い空間が広がっているだけだった。俺は誰もいないはずの場所に向かって声を発する。
「ユニ様、お話しがあるのですが今よろしいですか?」
すると、民家の数倍はあろうかという高さの天井に伸びる柱の影から青い鳥が飛来する。わずかに風を切る音を響かせながら滑空し、俺の右肩に止まる。
「私に何か用かしら?」
静謐な空間に凛とした女性の声が響く。その声は青い鳥から発せられていた。これはユニの持つレガリア<命の杖/アニマ>の力だ。実在する生き物の形をした魔法生命体を作り出し、それを自在に操作する魔法を有する。しかも、その生命体は操作していないときは本物の生物のような動作を自動で行う。
それに食物を摂取することで魔力を生成できるため魔法を発動したものがいなくとも半永久的に存在し続けることができる。そして、この能力を生かして大陸上に自分の使い魔たちを放ち情報収集や連絡を行っているのだ。
「いえ、特に用事があるというわけではないのです。ただ、またしばらくはここには帰ってこないと思うのでユニ様に挨拶くらいはしておこうと思いまして」
「殊勝な心掛けね。親孝行な息子を持って私は嬉しいわ」
ユニはこう言っているが俺はユニの実の子というわけではない。そもそも今のカームベルという組織はユニが各地から拾ってきた孤児でほとんど構成されている。そのため構成員全員が家族みたいなものなのだ。しかし、一部ドクターのような才能を買われて加わった例外もいるため一概にそうとも言えないが俺自身はあまりそのあたりは気にしていない。
「そう言ってもらえると光栄です。では、挨拶も済みましたので私はこれで失礼させていただきます」
俺はそう言うと中空に開けた小さな黒い穴から仮面と外套を取り出し身に着ける。目の前に大きな穴を出現させるとその方向へと歩を進めようとするが何かを思い出したかのように足を止める。
「ないとは思いますがもし私が<天壊>との戦いに敗れたならあとのことはお願いします」
「ええ、その時は私がその場を処理してあげるわ。いつでも私は見ているから安心して戦いなさい」
それだけ聞くと俺は止めた足を動かし暗闇の中に消える。
「あの子はやっぱり素直じゃないわね」
ユニの漏らした言葉は虚しく大気を震わせるだけだった。
それから一日経ち、俺は日が高くなってきたころに少女たちがいる宿に来ていた。この二日間彼女らが何をしていたのかは気になるところだが、そこまで詮索するのは無粋だろう。そんなことを思いながら階段を上りまずはノインの部屋に向かった。ドアを軽く数回叩く。だが、部屋の中からはかすかな音もしない。俺はノインはシンシアの部屋にいるのだろうと思いそちらに向かおうと階段に差し掛かった時、目的の人物たちに出くわした。
「先生、おはようございます。今から下に向かおうとしていたのですがもしかして手間を掛けさせてしまいましたか?」
「いや、手間と言うほどでもない。そもそも俺が時間を指定してなかったのだから迎えに行くのは普通だろう」
「そのとおり。時間を言わなかったにいが悪い。だから私たちは悪くない」
ノインは遠慮なく言い放つ。その言葉に意外にもシンシアも同調する。
「そうですね。確かに言われてみれば私たちに非はないですね。どちらかと言うと先生の落ち度のようです」
その言葉を聞き俺は少し困惑した。シンシアは俺に対して引け目のようなものを感じていたと少なくとも俺自身は思っていた。だが、数日会わないうちにそれがほとんどなくなっている。ノインが何かしたのだろうか。それとも他の誰かが何かしたのか様々な可能性がぐるぐると俺の頭の中を回る。
しかし、明確な答えは浮かんでこない。それもそうだ、この変化についての情報を俺自身何も持っていないのだから。まあ、いい方に変化しているようだし特に詮索する必要はないだろうと俺は結論付けた。俺のその思考を悟ったようにシンシアが手を打ち合わせ子気味の良い音を鳴らす。
「はい、この話はこれで終わり。それで先生、今日はどうするのですか?」
シンシアは話を切り替えるためか俺に疑問をぶつけた。
「今日はグラント平原に向かい、<鎧牛/アーマードブル>を狩る。ある程度の情報は頭に入ってるか?」
「もちろんです。ちゃんと勉強しましたから」
シンシアは自信を覗かせる表情を浮かべている。
「そうか。期待しているぞ」
それを聞きノインの方を一瞥した。そのシンシアの目の奥には覚悟の光が灯っていた。それはノインへの感謝だったのか決意表明だったのかはわからない。だが、ノインは不思議と口元を緩めていた。短い付き合いだがノインがシンシアに対して親近感を覚えていたからかもしれない。ノインはシンシアを見つめ返し、前に向き直り俺に近づいていく。
「にい、私は?」
いつもはこんなことを聞いてこないノインを不思議に思いながらも俺は素直に答える。
「もちろんノインにも期待している」
そう言うと俺はノインの頭を軽くなでる。ノインは首だけ動かしシンシアの方をちらりと見る。その顔にはどこか優越感のようなものが浮かんでいた。それを見てシンシアは少しむっとした表情をしたが数秒後、何か合図があったかのように突然お互いにくすりと笑い合う。
「さて、では行くぞ」
俺は黒い大穴を開ける。三人の姿はその穴に吸い込まれていった。
「ユニ様、お話しがあるのですが今よろしいですか?」
すると、民家の数倍はあろうかという高さの天井に伸びる柱の影から青い鳥が飛来する。わずかに風を切る音を響かせながら滑空し、俺の右肩に止まる。
「私に何か用かしら?」
静謐な空間に凛とした女性の声が響く。その声は青い鳥から発せられていた。これはユニの持つレガリア<命の杖/アニマ>の力だ。実在する生き物の形をした魔法生命体を作り出し、それを自在に操作する魔法を有する。しかも、その生命体は操作していないときは本物の生物のような動作を自動で行う。
それに食物を摂取することで魔力を生成できるため魔法を発動したものがいなくとも半永久的に存在し続けることができる。そして、この能力を生かして大陸上に自分の使い魔たちを放ち情報収集や連絡を行っているのだ。
「いえ、特に用事があるというわけではないのです。ただ、またしばらくはここには帰ってこないと思うのでユニ様に挨拶くらいはしておこうと思いまして」
「殊勝な心掛けね。親孝行な息子を持って私は嬉しいわ」
ユニはこう言っているが俺はユニの実の子というわけではない。そもそも今のカームベルという組織はユニが各地から拾ってきた孤児でほとんど構成されている。そのため構成員全員が家族みたいなものなのだ。しかし、一部ドクターのような才能を買われて加わった例外もいるため一概にそうとも言えないが俺自身はあまりそのあたりは気にしていない。
「そう言ってもらえると光栄です。では、挨拶も済みましたので私はこれで失礼させていただきます」
俺はそう言うと中空に開けた小さな黒い穴から仮面と外套を取り出し身に着ける。目の前に大きな穴を出現させるとその方向へと歩を進めようとするが何かを思い出したかのように足を止める。
「ないとは思いますがもし私が<天壊>との戦いに敗れたならあとのことはお願いします」
「ええ、その時は私がその場を処理してあげるわ。いつでも私は見ているから安心して戦いなさい」
それだけ聞くと俺は止めた足を動かし暗闇の中に消える。
「あの子はやっぱり素直じゃないわね」
ユニの漏らした言葉は虚しく大気を震わせるだけだった。
それから一日経ち、俺は日が高くなってきたころに少女たちがいる宿に来ていた。この二日間彼女らが何をしていたのかは気になるところだが、そこまで詮索するのは無粋だろう。そんなことを思いながら階段を上りまずはノインの部屋に向かった。ドアを軽く数回叩く。だが、部屋の中からはかすかな音もしない。俺はノインはシンシアの部屋にいるのだろうと思いそちらに向かおうと階段に差し掛かった時、目的の人物たちに出くわした。
「先生、おはようございます。今から下に向かおうとしていたのですがもしかして手間を掛けさせてしまいましたか?」
「いや、手間と言うほどでもない。そもそも俺が時間を指定してなかったのだから迎えに行くのは普通だろう」
「そのとおり。時間を言わなかったにいが悪い。だから私たちは悪くない」
ノインは遠慮なく言い放つ。その言葉に意外にもシンシアも同調する。
「そうですね。確かに言われてみれば私たちに非はないですね。どちらかと言うと先生の落ち度のようです」
その言葉を聞き俺は少し困惑した。シンシアは俺に対して引け目のようなものを感じていたと少なくとも俺自身は思っていた。だが、数日会わないうちにそれがほとんどなくなっている。ノインが何かしたのだろうか。それとも他の誰かが何かしたのか様々な可能性がぐるぐると俺の頭の中を回る。
しかし、明確な答えは浮かんでこない。それもそうだ、この変化についての情報を俺自身何も持っていないのだから。まあ、いい方に変化しているようだし特に詮索する必要はないだろうと俺は結論付けた。俺のその思考を悟ったようにシンシアが手を打ち合わせ子気味の良い音を鳴らす。
「はい、この話はこれで終わり。それで先生、今日はどうするのですか?」
シンシアは話を切り替えるためか俺に疑問をぶつけた。
「今日はグラント平原に向かい、<鎧牛/アーマードブル>を狩る。ある程度の情報は頭に入ってるか?」
「もちろんです。ちゃんと勉強しましたから」
シンシアは自信を覗かせる表情を浮かべている。
「そうか。期待しているぞ」
それを聞きノインの方を一瞥した。そのシンシアの目の奥には覚悟の光が灯っていた。それはノインへの感謝だったのか決意表明だったのかはわからない。だが、ノインは不思議と口元を緩めていた。短い付き合いだがノインがシンシアに対して親近感を覚えていたからかもしれない。ノインはシンシアを見つめ返し、前に向き直り俺に近づいていく。
「にい、私は?」
いつもはこんなことを聞いてこないノインを不思議に思いながらも俺は素直に答える。
「もちろんノインにも期待している」
そう言うと俺はノインの頭を軽くなでる。ノインは首だけ動かしシンシアの方をちらりと見る。その顔にはどこか優越感のようなものが浮かんでいた。それを見てシンシアは少しむっとした表情をしたが数秒後、何か合図があったかのように突然お互いにくすりと笑い合う。
「さて、では行くぞ」
俺は黒い大穴を開ける。三人の姿はその穴に吸い込まれていった。
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