深淵のリベリオン ~一族から追放されたが真の力に目覚め、最強へと至る~

天野静流

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2話 廃棄洞窟

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ソルはいつの間にか薄暗い場所に移動していた。岩肌にこびりついている苔が発光し、ある程度の視界は確保されている。ヒカリゴケと呼ばれる魔力のもとである魔素を吸収して光を出す特殊な植物だ。



「ここは……どこだ?」



 ソルが周りを見渡すが目の前にある大きな穴以外は頑丈な岩で塞がれている。



「これは追放の儀。生かすことなんて考えられていないはずだ。気を引き締めなくては」



 ソルは右手で腰の刀の柄に触れ、心を落ち着かせる。精神統一を完了させると薄暗い洞穴へと足を踏み入れる。ソル自身の足音が反響し、鼓膜を震わせる。



 十分ほど進んでも一切景色は変わらなかった。だが、単調な音が響いていた空間に微妙な雑音が混ざり始めていた。あと数百メートルも進めば遭遇するであろう予感がソルの頭を過る。腰にさしてある刀の鞘を左手で触り、いつでも刀を抜けるようにしながらゆっくりと歩いていく。徐々に大きくなる音に緊張感が高まる。



 ソルはごくりと喉を鳴らし、暗闇の中を真っ直ぐに見つめる。すると、薄暗い洞窟の中から現れたのは牛の頭に人間のような体を持った化け物だった。いわゆる<牛頭/ミノタウロス>と呼ばれる魔物である。筋骨隆々とした体は筋肉の鎧で守られており斬撃が聞きにくい。



 しかし、ソルはそんな性質お構いなしと言わんばかりに刀の柄に右手をかける。



「魔操流抜刀術<鎌鼬/カマイタチ>」



 ソルは刀に纏わせた魔力を風へと変え、勢いよく抜き放つ。鞘の中で流れる風の対流により抜刀速度を上げ、尚且つその神速の抜刀の勢いを利用し風の刃を飛ばす魔操流の技術の一つである。



 放たれた風刃は一瞬でミノタウロスに到達し、右腕を斬り飛ばした。静寂を切り裂くような野太い叫ぶ声が薄暗い空間に響き渡る。ソルはその騒がしい声に顔を顰めながら一気に距離を詰める。ミノタウロスは腕を落とされた痛みのせいか体の動きが鈍っている。



「魔操流刀術<加具土命/カグツチ>」



 刀に纏われた魔力を今度は炎に変え、刀身を熱する。赤く輝く刀をミノタウロスの首目掛けて振るう。ミノタウロスは残った左腕でその攻撃を防ごうとする。だが、その腕はバターのように切り裂かれ盾としての役割を果たすことはなかった。同時に首も斬り飛ばされた化け物は糸が切れた人形のように地に伏す。



 ソルは愛刀を鞘にしまうと大きく息を吐いた。



(やはり覚醒がなくても俺は十分戦える。もし……もし僕がこの試練を乗り越えられたらまたあの場所に帰ることができるかもしれない)



 ソルは自分の腕前を再確認すると僅かな希望を見出した。先ほどまで薄暗かった洞窟が少し明るく見えるようになったことだろう。ソルは死体には目もくれずどんどん洞窟の奥へと歩を進める。



 すると、一本道が終わり三又に分かれる分岐路に差し掛かった。ソルはとりあえず一番左の道を進んで行く。数分ほど歩くと少し開けた空間に行き当たった。その空間の壁全面にヒカリゴケが群生しており、照明具で照らされているくらいには明るい。しかも、その中央には小さな池のようなものがあるので幻想的な雰囲気がある。



 ソルは池へと近づいていく。水面を覗き込んでみると池の底まで見えるほど水は澄んでいた。だからこそ、底に沈んでいる武具の数々が目に入る。



(この中にある武器たちはかつてここに入ったものたちが所有していたものだろうな。だが、誰が……いや何がここにものを集めているのか……)



 ソルはまだ見ぬ謎の生物がいる可能性に気づき、気を張る。ミノタウロスのような魔物がいるのだから何がいてもおかしくない。



 ソルはできるだけ足音を殺しながらその場を走り去る。



(あの場所にものを集めているのだからあそこがその生物の縄張りの可能性が高い。出来るだけ敵に有利な場所では戦いたくない)



 ソルは行の三分の一の時間で分岐路まで戻ると次は中央の道を進んで行く。すると、大きな槌で何かを叩いているような衝撃が地面を通してソルに伝わる。再び左手で鞘を握り、気を引き締め直す。そこからそらに一分ほど走ると恐ろしいほどの大空洞に行き当たる。反り立つ岩の山がいくつもあり、上の方から水が流れ落ちている場所もある。先ほどの池とつながっている水の源泉だ。



(おそらくあの滝は先ほどの池とつながっているはず。ということはつまり……)



 ソルの頭に嫌な予感が過る。



 その予言が見事的中し、上から黒い影が落ちてくる。ソルは咄嗟に足に力を超えると空洞の中に向かって身を投げる。地面をごろごろと転がるがすぐに立ち上がり、落ちてきたものの正体を確認する。そこにはソルの想像以上の化け物がいた。蜘蛛のような黒い甲殻で覆われた八本の足、胴体は人間のようであるが手が四本生えている。さらに、顔は馬のようでありまさしく怪物という言葉に相応しい容貌をしていた。



 そのあまりにも気味の悪い姿にソルは苦々しい表情を浮かべる。だが、感情に振り回されることなく腰の刀に手を掛けた。



(まさしく怪物、流石は生存者ゼロの追放の儀の番人。だが、ここで恐れるわけにはいかない。大丈夫だ。僕には生まれた時から鍛えてきた肉体と技がある)



 ソルは覚悟を決め、刀を抜き放った。
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