魔法が使えず無能と呼ばれていた少女の能力【スキル】は実は最強でした

輝月レイヤ

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第一章・第1話

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**「本の虫の令嬢」**

王立魔法学院に入学してから、一週間が過ぎた。

朝の鐘が鳴り、学院の生徒たちは次々と教室へ向かっていく。
広い廊下にはローブを着た学生たちが行き交い、魔法の話題が飛び交っていた。

「昨日の魔法理論、難しくなかった?」

「新しい教授、めちゃくちゃ厳しいらしいぞ」

「午後は基礎魔法実習だ」

そんな中を、リナは静かに歩いていた。

(まだ……慣れないな)

学院に入ってからというもの、視線を感じることが多い。

「ほら、あれ」

「魔力ゼロの子」

「なんで入学できたんだろ」

ひそひそ声。

最初の日よりは減ったが、完全にはなくならない。

それでもリナは気にしないようにしていた。

(私は私のやることをやるだけ)

自分にそう言い聞かせながら、今日の授業へ向かう。

---

その日の午後。

リナは学院の**図書館**を訪れていた。

王立魔法学院の図書館は、王国最大級の蔵書数を誇る。
高い本棚が迷路のように並び、古代魔法から最新理論まで、あらゆる魔導書が収められている。

「……すごい」

思わず声が漏れた。

(こんなに本があるなんて……)

リナは魔法が使えない代わりに、ずっと**勉強**をしてきた。
魔法理論の本を読むのは嫌いではない。

むしろ――好きだった。

だからこの場所は、少しだけ居心地が良かった。

リナは棚を見て回る。

「基礎魔法理論……」

「魔力循環構造……」

「属性干渉理論……」

そして一冊の本を手に取った。

**『風属性魔法の構造解析』**

(風魔法……)

ページを開く。

すると――

「……違う」

小さな声が聞こえた。

「え?」

リナが振り向く。

そこには、一人の少女がいた。

長い黒髪。
丸いメガネ。
大きな本を抱えている。

制服は上質で、胸元には見慣れない紋章が付いていた。

だがその少女は、壁際の椅子に小さく座り、誰とも目を合わせないようにしている。

いわゆる――**陰キャ**という雰囲気だった。

少女は本を指差した。

「それ……古い理論」

「え?」

リナは本を見る。

少女は静かに続けた。

「風魔法は……圧力差じゃない」

「流体構造」

「魔力の流れと空気の流れを同時に制御する」

リナは驚いた。

(そんな話……授業で聞いてない)

少女はメガネを直しながら言う。

「この本、十年前の研究」

「今は違う」

「本当は……」

そこまで言って、少女ははっとした。

リナと目が合っていることに気づいたのだ。

「……」

少女は真っ赤になった。

そして慌てて本で顔を隠す。

「ご、ごめんなさい!」

「勝手に……話しかけて……!」

リナは慌てて手を振った。

「い、いえ!大丈夫です!」

「むしろすごいです……!」

少女が少し顔を出す。

「……え?」

リナは本を見ながら言った。

「その理論、すごく面白いと思います」

「空気の流れと魔力を同時に制御するって発想……」

「私、初めて聞きました」

少女はしばらく黙っていた。

そして小さく言った。

「……普通は」

「気味悪がる」

「え?」

「私、魔法の話ばっかりするから」

「友達……あんまりいない」

リナは少し笑った。

「じゃあ、私と同じですね」

「……え?」

「私も、あんまり友達いないです」

リナが言うと、少女は少し驚いた顔をした。

その時だった。

近くの席の生徒がひそひそ言う。

「見ろよ」

「あいつ……」

「魔力ゼロの子だ」

少女がびくっと肩を震わせる。

そして小さく呟いた。

「……知ってる」

リナが入学してからの噂は、学院中に広がっていた。

少女は少し迷い、そして言った。

「……でも」

「関係ない」

リナが顔を上げる。

少女はメガネの奥の目で、真っ直ぐリナを見た。

「魔法は……知識」

「魔力だけじゃない」

「だから……」

小さく息を吸う。

「あなたがここにいるの……変じゃない」

リナは、少し驚いた。

学院に来てから、そんなことを言われたのは初めてだった。

「ありがとう」

リナは微笑む。

「私はリナです」

少女は少しだけ迷ってから答えた。

「……アルカイド」

「アルカイド・ベネトナシュ」

その名前を聞いた瞬間。

近くの席の生徒たちがざわめいた。

「ベネトナシュ!?」

「七星貴族だぞ!」

王国には特別な七つの名門魔導貴族が存在する。

その頂点に立つ家系――

**七星貴族。**

ベネトナシュ家は、その一つだった。

だが当のアルカイドは、そんな空気など気にせず本を開いている。

「このページ」

「風魔法の構造……面白い」

リナも横から覗く。

(この人……)

(すごい……)

魔法の知識量が、授業とは比べ物にならない。

そして不思議なことに――

彼女の説明を聞くと、魔法の構造が**はっきり理解できる**。

リナの頭の中で、何かが静かに動き始めていた。

まだ誰も知らない。

この日、図書館で出会った二人が――

やがて

**世界を変える魔導士たちの中心**になることを。

そしてこの出会いが、

リナにとって最初の**仲間**になることを。

第一章は、ここから始まる。
    
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