6 / 48
第一章・第1話
しおりを挟む
#**「本の虫の令嬢」**
王立魔法学院に入学してから、一週間が過ぎた。
朝の鐘が鳴り、学院の生徒たちは次々と教室へ向かっていく。
広い廊下にはローブを着た学生たちが行き交い、魔法の話題が飛び交っていた。
「昨日の魔法理論、難しくなかった?」
「新しい教授、めちゃくちゃ厳しいらしいぞ」
「午後は基礎魔法実習だ」
そんな中を、リナは静かに歩いていた。
(まだ……慣れないな)
学院に入ってからというもの、視線を感じることが多い。
「ほら、あれ」
「魔力ゼロの子」
「なんで入学できたんだろ」
ひそひそ声。
最初の日よりは減ったが、完全にはなくならない。
それでもリナは気にしないようにしていた。
(私は私のやることをやるだけ)
自分にそう言い聞かせながら、今日の授業へ向かう。
---
その日の午後。
リナは学院の**図書館**を訪れていた。
王立魔法学院の図書館は、王国最大級の蔵書数を誇る。
高い本棚が迷路のように並び、古代魔法から最新理論まで、あらゆる魔導書が収められている。
「……すごい」
思わず声が漏れた。
(こんなに本があるなんて……)
リナは魔法が使えない代わりに、ずっと**勉強**をしてきた。
魔法理論の本を読むのは嫌いではない。
むしろ――好きだった。
だからこの場所は、少しだけ居心地が良かった。
リナは棚を見て回る。
「基礎魔法理論……」
「魔力循環構造……」
「属性干渉理論……」
そして一冊の本を手に取った。
**『風属性魔法の構造解析』**
(風魔法……)
ページを開く。
すると――
「……違う」
小さな声が聞こえた。
「え?」
リナが振り向く。
そこには、一人の少女がいた。
長い黒髪。
丸いメガネ。
大きな本を抱えている。
制服は上質で、胸元には見慣れない紋章が付いていた。
だがその少女は、壁際の椅子に小さく座り、誰とも目を合わせないようにしている。
いわゆる――**陰キャ**という雰囲気だった。
少女は本を指差した。
「それ……古い理論」
「え?」
リナは本を見る。
少女は静かに続けた。
「風魔法は……圧力差じゃない」
「流体構造」
「魔力の流れと空気の流れを同時に制御する」
リナは驚いた。
(そんな話……授業で聞いてない)
少女はメガネを直しながら言う。
「この本、十年前の研究」
「今は違う」
「本当は……」
そこまで言って、少女ははっとした。
リナと目が合っていることに気づいたのだ。
「……」
少女は真っ赤になった。
そして慌てて本で顔を隠す。
「ご、ごめんなさい!」
「勝手に……話しかけて……!」
リナは慌てて手を振った。
「い、いえ!大丈夫です!」
「むしろすごいです……!」
少女が少し顔を出す。
「……え?」
リナは本を見ながら言った。
「その理論、すごく面白いと思います」
「空気の流れと魔力を同時に制御するって発想……」
「私、初めて聞きました」
少女はしばらく黙っていた。
そして小さく言った。
「……普通は」
「気味悪がる」
「え?」
「私、魔法の話ばっかりするから」
「友達……あんまりいない」
リナは少し笑った。
「じゃあ、私と同じですね」
「……え?」
「私も、あんまり友達いないです」
リナが言うと、少女は少し驚いた顔をした。
その時だった。
近くの席の生徒がひそひそ言う。
「見ろよ」
「あいつ……」
「魔力ゼロの子だ」
少女がびくっと肩を震わせる。
そして小さく呟いた。
「……知ってる」
リナが入学してからの噂は、学院中に広がっていた。
少女は少し迷い、そして言った。
「……でも」
「関係ない」
リナが顔を上げる。
少女はメガネの奥の目で、真っ直ぐリナを見た。
「魔法は……知識」
「魔力だけじゃない」
「だから……」
小さく息を吸う。
「あなたがここにいるの……変じゃない」
リナは、少し驚いた。
学院に来てから、そんなことを言われたのは初めてだった。
「ありがとう」
リナは微笑む。
「私はリナです」
少女は少しだけ迷ってから答えた。
「……アルカイド」
「アルカイド・ベネトナシュ」
その名前を聞いた瞬間。
近くの席の生徒たちがざわめいた。
「ベネトナシュ!?」
「七星貴族だぞ!」
王国には特別な七つの名門魔導貴族が存在する。
その頂点に立つ家系――
**七星貴族。**
ベネトナシュ家は、その一つだった。
だが当のアルカイドは、そんな空気など気にせず本を開いている。
「このページ」
「風魔法の構造……面白い」
リナも横から覗く。
(この人……)
(すごい……)
魔法の知識量が、授業とは比べ物にならない。
そして不思議なことに――
彼女の説明を聞くと、魔法の構造が**はっきり理解できる**。
リナの頭の中で、何かが静かに動き始めていた。
まだ誰も知らない。
この日、図書館で出会った二人が――
やがて
**世界を変える魔導士たちの中心**になることを。
そしてこの出会いが、
リナにとって最初の**仲間**になることを。
第一章は、ここから始まる。
王立魔法学院に入学してから、一週間が過ぎた。
朝の鐘が鳴り、学院の生徒たちは次々と教室へ向かっていく。
広い廊下にはローブを着た学生たちが行き交い、魔法の話題が飛び交っていた。
「昨日の魔法理論、難しくなかった?」
「新しい教授、めちゃくちゃ厳しいらしいぞ」
「午後は基礎魔法実習だ」
そんな中を、リナは静かに歩いていた。
(まだ……慣れないな)
学院に入ってからというもの、視線を感じることが多い。
「ほら、あれ」
「魔力ゼロの子」
「なんで入学できたんだろ」
ひそひそ声。
最初の日よりは減ったが、完全にはなくならない。
それでもリナは気にしないようにしていた。
(私は私のやることをやるだけ)
自分にそう言い聞かせながら、今日の授業へ向かう。
---
その日の午後。
リナは学院の**図書館**を訪れていた。
王立魔法学院の図書館は、王国最大級の蔵書数を誇る。
高い本棚が迷路のように並び、古代魔法から最新理論まで、あらゆる魔導書が収められている。
「……すごい」
思わず声が漏れた。
(こんなに本があるなんて……)
リナは魔法が使えない代わりに、ずっと**勉強**をしてきた。
魔法理論の本を読むのは嫌いではない。
むしろ――好きだった。
だからこの場所は、少しだけ居心地が良かった。
リナは棚を見て回る。
「基礎魔法理論……」
「魔力循環構造……」
「属性干渉理論……」
そして一冊の本を手に取った。
**『風属性魔法の構造解析』**
(風魔法……)
ページを開く。
すると――
「……違う」
小さな声が聞こえた。
「え?」
リナが振り向く。
そこには、一人の少女がいた。
長い黒髪。
丸いメガネ。
大きな本を抱えている。
制服は上質で、胸元には見慣れない紋章が付いていた。
だがその少女は、壁際の椅子に小さく座り、誰とも目を合わせないようにしている。
いわゆる――**陰キャ**という雰囲気だった。
少女は本を指差した。
「それ……古い理論」
「え?」
リナは本を見る。
少女は静かに続けた。
「風魔法は……圧力差じゃない」
「流体構造」
「魔力の流れと空気の流れを同時に制御する」
リナは驚いた。
(そんな話……授業で聞いてない)
少女はメガネを直しながら言う。
「この本、十年前の研究」
「今は違う」
「本当は……」
そこまで言って、少女ははっとした。
リナと目が合っていることに気づいたのだ。
「……」
少女は真っ赤になった。
そして慌てて本で顔を隠す。
「ご、ごめんなさい!」
「勝手に……話しかけて……!」
リナは慌てて手を振った。
「い、いえ!大丈夫です!」
「むしろすごいです……!」
少女が少し顔を出す。
「……え?」
リナは本を見ながら言った。
「その理論、すごく面白いと思います」
「空気の流れと魔力を同時に制御するって発想……」
「私、初めて聞きました」
少女はしばらく黙っていた。
そして小さく言った。
「……普通は」
「気味悪がる」
「え?」
「私、魔法の話ばっかりするから」
「友達……あんまりいない」
リナは少し笑った。
「じゃあ、私と同じですね」
「……え?」
「私も、あんまり友達いないです」
リナが言うと、少女は少し驚いた顔をした。
その時だった。
近くの席の生徒がひそひそ言う。
「見ろよ」
「あいつ……」
「魔力ゼロの子だ」
少女がびくっと肩を震わせる。
そして小さく呟いた。
「……知ってる」
リナが入学してからの噂は、学院中に広がっていた。
少女は少し迷い、そして言った。
「……でも」
「関係ない」
リナが顔を上げる。
少女はメガネの奥の目で、真っ直ぐリナを見た。
「魔法は……知識」
「魔力だけじゃない」
「だから……」
小さく息を吸う。
「あなたがここにいるの……変じゃない」
リナは、少し驚いた。
学院に来てから、そんなことを言われたのは初めてだった。
「ありがとう」
リナは微笑む。
「私はリナです」
少女は少しだけ迷ってから答えた。
「……アルカイド」
「アルカイド・ベネトナシュ」
その名前を聞いた瞬間。
近くの席の生徒たちがざわめいた。
「ベネトナシュ!?」
「七星貴族だぞ!」
王国には特別な七つの名門魔導貴族が存在する。
その頂点に立つ家系――
**七星貴族。**
ベネトナシュ家は、その一つだった。
だが当のアルカイドは、そんな空気など気にせず本を開いている。
「このページ」
「風魔法の構造……面白い」
リナも横から覗く。
(この人……)
(すごい……)
魔法の知識量が、授業とは比べ物にならない。
そして不思議なことに――
彼女の説明を聞くと、魔法の構造が**はっきり理解できる**。
リナの頭の中で、何かが静かに動き始めていた。
まだ誰も知らない。
この日、図書館で出会った二人が――
やがて
**世界を変える魔導士たちの中心**になることを。
そしてこの出会いが、
リナにとって最初の**仲間**になることを。
第一章は、ここから始まる。
0
あなたにおすすめの小説
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?
しょくぱん
恋愛
「お前の魔法は石を積むだけの土木作業だ」と婚約破棄されたので、城を支えていた『構造維持結界』をすべて解除して出て行きますね。今さら「城が崩れる!」と泣きつかれても、私は隣国で氷結の皇帝陛下と「世界最高の聖域」を造っていますので、一切知りません。
王国唯一の建築魔導師アニエスは、その地味な見た目と能力を理由に、王太子シグムンドから婚約破棄と国外追放を言い渡される。 彼の隣には、派手な光魔法を使う自称聖女の姿があった。
「お前の代わりなどいくらでもいる。さっさと出て行け!」 「……分かりました。では、城にかけていた『自動修復』『耐震』『空調』の全術式を解約しますね」
アニエスが去った直後、王城は音を立てて傾き、噴水は泥水に変わり、王都のインフラは崩壊した。 一方、アニエスは隣国の荒野で、呪われた皇帝レオンハルトと出会う。彼女が何気なく造った一夜の宿は、呪いを浄化するほどの「聖域」だった。
「君は女神か? どうか私の国を救ってほしい」 「喜んで。ついでに世界一快適な住居も造っていいですか?」
隣国がアニエスの力で黄金の国へと発展する一方、瓦礫の山となった母国からは「戻ってきてくれ」と悲痛な手紙が届く。 だが、アニエスは冷ややかに言い放つ。 「お断りします。契約外ですので、ご自分で支えていればよろしいのでは?」
これは、捨てられた万能建築士が隣国で溺愛され、幸せを掴む物語。 そして、彼女を捨てた者たちが、物理的にも社会的にも「崩壊」し、最後には彼女が架ける橋の『礎石』として永遠に踏まれ続けるまでの、壮絶な因果応報の記録。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。
木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。
不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。
当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。
多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。
しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。
その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。
私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。
それは、先祖が密かに残していた遺産である。
驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。
そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。
それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。
彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。
しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。
「今更、掌を返しても遅い」
それが、私の素直な気持ちだった。
※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
