【完結】異世界召喚されたのに命を狙われまくるなんて聞いてない。

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王子の宮殿に招待される

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    いくら頭を枕で隠そうとしたところで朝勃ちを好きな人に処理させてしまったという事実は変わらない。アルウィンが洗面所から戻ってきたような気配がしてこの体勢のままどうしたらいいのか分からず固まる。
    よくよく考えればアルウィンは浄化魔法ですぐに手を綺麗に出来ただろうに、わざわざ洗面所まで行ったのはアルウィン自身も気まずさを感じていたからなのか、俺への配慮のためなのか。
    彼が俺のいるベッドまで戻ってきたことが足音で分かり、俺は恐る恐る枕の下から顔を上げた。

「…フッ、可愛いすぎるぞ、ミト」
「へ!?か、からかわないで!今すっごく恥ずかしいんだから!アルウィンにあんなことさせちゃうなんて…」
「俺が強引にやったんだからミトは何も悪くない。イくときのミトの顔があまりに可愛くて俺もヤバかったけどな」
「な、ななななに言ってるの!」

    "ヤバかった"とは何がヤバかったんですかね!?俺がイく瞬間の顔をバッチリ見られていたことも頭から湯気が出そうなほど恥ずかしいのに、意味深なことを言わないでほしい!

「でも自分1人でするよりも気持ちよかっただろう?またやってやるからな」
「はい!?し、しないから!もう大丈夫だから!ってかこんなこと俺以外にもやったことあるの!?」
「あるわけないだろう。ミトが初めてだしミト以外のものを触るなんて反吐が出る。ミトのだから愛おしく思えるし触れたくなるんだ」
「ほ、ほぇ…」

    なんか凄いことを言われているような気がするが、もうキャパオーバーで魂が抜けたような声しか出ない。そんな俺をクスクスと笑いながら見守るアルウィンに枕を奪われ、俺は完全に隠れ場所を失った。

「ミト、もう使用人が扉の外で待機している。恥ずかしいのは分かるが着替えて朝食にしよう」
「…はーい」

    まだ全然アルウィンの顔を見ることは出来ないが使用人を待たせてしまうのも申し訳ないのでさっさとベッドをおり、着替えを箪笥から出す。ちらりとアルウィンを見ると俺の方に背中を向けていて見ないように配慮してくれているのが分かった。
    俺は素早く着替え終え、アルウィンに合図を出すと扉が開き使用人が挨拶をしながら中に入ってくる。そうして今日も俺たちの朝は始まった。

    アルウィンと2人きりの朝食がこんなにも気まずいのは初めてだ。アルウィンは涼しい顔をして食べ進めているが俺は彼の顔を見るたびにベッドの上でのことを思い出してしまい、中々食べ物が喉に通らない。
    昨夜はこの部屋で刺客に襲われそうになったというのに、その恐怖も羞恥心がすべて覆い尽くしてしまったようだ。無言の空気にも耐えられず、俺は昨夜のことを切り出した。

「そういえば、昨夜の侵入者はどうなったの?」
「…あぁ、それについてはミトは知らなくて大丈夫だ。何も心配することはないし結界も張り直したからもう二度とあんなことは起こらない」
「結界と言えばさ、この部屋にかけられている結界はどんなものなの?聖魔法の結界しか聞いてなかったけど聖魔法がなくても他の結界が作れるの?」
「もちろん作れる。結界というのはその人の魔力量によって強度が決まる。聖魔法持ちというのは一番魔力を保有しているから聖魔法の結界が一番強いとされている。俺は俺の魔力で結界を作っているからそれなりの強度だ。しかし疲れや精神的に不安定になると綻びが出てしまう」
「え…じゃあ昨夜人が入り込めたのはアルウィンの不調が原因ってこと?」
「そうとも言えるが…まぁ、最近は少し情緒の乱れがあったからな。もしかしたらその緩みを突かれたのかもしれない。すまない、俺のせいだ」
「謝らないでよ。むしろそんな凄い結界をこの部屋に張ってくれているなんて知らなかった。ありがとう」
「本来はミト自身に結界をはれれば一番いいんだが、結界というものは対象が動かないものであることが前提で発動する。人や動物など自我を持って動くものには張れない。しかし馬車のように人が動かしているだけでその物自体が自ら動くものでなければ張れる。だがかなりの魔力を消耗するからあまりないけどな」
「へぇ、そうだったんだ」

    結界についてはおじいちゃん先生から何も教わっていなかったから国を守っている聖魔法の結界しかないものだと思い込んでいた。
    しかしあまりに強い結界は確かに魔力消費量が凄そうだし、本人が強いなら必要とされない場面も多いだろうなと察する。何の力もない無力で弱い人間は俺だけだと思うし。
    昨夜の刺客がどうなったのかは聞けなかったが、一瞬だけ見えたあの様子からしても答えは予想がつく。アルウィンは俺に物騒な話を聞かせたくないのだろうと考え、それ以上追求することはやめた。

    今朝の醜態を思い出す余地を与えないためにも俺は無理やりいろんな話をしながら、アルウィンとの朝食の時間を終えた。
    午前中の授業でおじいちゃん先生にまた結界について詳しく教えてもらおうと思いながら、個人訓練をするアルウィンを窓から見つめる。
    そういえば普段なら昨夜のようなことがあったらすぐに玉座の間に行き報告をしているのに、今回はそんな様子がなかったなと不思議に思う。
    俺が寝たあとに終えたのか、刺客は牢獄から抜け出したビンスカースの人間だったから報告の必要もなかったのかと思いながら、おじいちゃん先生が入室してきたことにより思考は分散された。

***

    午前中の授業を終え、午後の魔力訓練も終えると珍しくライナス王子がそそくさと帰らずに何か言いたそうに俺を見ていることに気が付いた。昨夜の刺客に襲われたことを心配してくれているのかなと首を傾げて見せると、王子はそっぽを向きながらも口を開いた。

「きょ、今日の夕食は僕の宮殿で食べてもよいぞ!お前を僕の宮殿にいつか招待してやると言っていただろう」
「え?突然どうしたの?」
「だから!美味しい御馳走を食わせてやると言っているんだ!」
「それは嬉しいけどもう東塔の料理長が作ってくれていると思うし…」
「とっくにお前の夕食は作るなと伝えてある!だからお前は僕の宮殿に来なければ夕食を食べれないぞ!」

    地団駄を踏むように言い募る王子の様子がどこかいつもと違くて怪訝に思う。王子の宮殿は見たくないものを見てしまった記憶で止まっておりあまり近付きたくはないが、もしかして友人として何か相談事でもあるのかもしれないと思いつき、俺は頷いて見せた。

「それなら王子の宮殿にお邪魔しようかな。前行った部屋にだけは行かないけど」
「あ、あそこには行かん!ふん、さっさと行くぞ」

    そう言って踵を返す王子の後ろを当たり前のようにアルウィンと共に着いていこうとして、王子がくるりと凄い勢いで振り向いて驚く。

「そこの騎士は招待しておらん!来ていいのはこいつだけだ!」
「え…でもアルウィンは俺の護衛で」
「うるさい!お前の護衛など僕でも務まるしそもそも僕の宮殿には僕の強力な結界がはってあるのだから危険なことなど何もない!」
「しかし殿下、私はミトのそばを離れるわけには…」
「この僕に口答えするな!僕がそうと決めたのだからお前はこいつの帰りを大人しく待っていろ」
「…かしこまりました。では宮殿の正門前でお待ちしております。何もないとは思いますが万が一に備えてすぐに動けるようにしておきます」
「アルウィン、ごめんね」
「謝るな。酒は出されても飲まないように」
「うん、ありがとう」
「ふん!さっさと行くぞ!」

    小声で俺にだけ聞こえるように酒は飲むなと忠告してきたアルウィンに向けて小さく頷く。ライナス王子の手前、直接アルウィンには伝えられなかったが、なるべく早く食べてさっさとアルウィンの元に帰ろうと思いながら先を急ぐ王子の後ろを着いていく。
    ぞろぞろと王子の侍従や護衛騎士に囲まれながら歩くのは居心地が悪かったが、今朝のアルウィンとの気まずさに比べたらまだ可愛いものだった。

    王子の宮殿に着き、案内されたのはバルコニーが広い部屋だった。空が穏やかな薄い紫ににじみ出るようなわずかの金色を湛える。夏の夕焼けを映し出したバルコニーにそのまま案内され、テラステーブルには豪華な料理が用意されていた。

「うわ、美味しそう!」
「ふん、思う存分食べてよいぞ」
「ありがとう!えー、いつもこんなに豪勢な食事を食べてるの?」
「僕はこの国の第一王子なのだから当たり前だ」

    イスに座り、使用人が飲み物をグラスに注ぐのを眺めながら王子に問いかける。さもありなんと言った様子で王子は煌びやかなイスに腰掛け、ナイフとフォークを手に取った。

「ほら、僕が取り分けてやるから皿を出せ」
「えっ!いいよ、自分でやるよ!王子様にそんなことさせられないって」
「つべこぺ言わずにさっさとしろ!僕がしてやると言ってるんだから遠慮などするな」
「じゃ、じゃあ…お願いします」
「酒もあるぞ。どうせあの過保護な騎士に酒など飲ませてもらえていないのだろうが、今日は飲みたいだけ飲むがいい。童顔のちんちくりんだが酒は飲める年齢なのだからな!」
「うっ…いや、お酒はやめとく」
「遠慮するでない」

    強引な王子は使用人にワインを持ってこさせると勝手に別のグラスに注がれて目の前に置かれてしまう。王子は優雅な手付きでグラスを傾け匂いを楽しんだあと、小さく赤ワインを口に含んだ。
    目の前の赤ワインの色はアルウィンの髪色とそっくりで、どうしてもアルウィンの顔を思い浮かべてしまう。俺が飲まずにじっとワイングラスを見ていることに気付いた王子は、眉間にシワを寄せて使用人を呼んだ。

「このワインは好きではないからすぐにこいつのと共に処分しろ!白を持ってこい」
「え、処分しちゃうの?」
「この食事には合わないから下げさせるだけだ。もっと合うワインを持ってこさせる」

    まなじりを僅かに吊り上げてご機嫌斜めな王子は食の好みだけでなく食事に合うお酒にもうるさいようだ。俺はもったいないなと思いつつ、下げられたワインにホッとする。
    アルウィンと王宮の敷地内で離れることは滅多にないため、既に寂しくなっている自分がいることに重症だなと思っていたところだった。

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