あの人と。

Haru.

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本編

6 危機感

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 それからちょうどお昼時になったのでロイに誘われ、一緒にご飯を食べた。ヴォイドさんも一緒だった。ダグもって誘ったけど主と同じ席に着くなどとかなんとか言って逃げられた。本当に逃げられた。
 ロイ曰くダグも昼食をとりに行ったのだろうと。基本的に護衛騎士は主人が食事をとっている間に手早く食事を済ませるものらしい。
 急いで食べるなんて身体に良くないしいつか絶対一緒に食べるぞと固く決意した。







「ふむ、ユキの食事量は少ないな……それではその身長なのも頷けてしまうぞ?」


 心に突き刺さった……


「僕の食事量は元いた世界では普通なの!! ロイ達の食べる量がおかしいの!」


 ロイとヴォイドさんの食べた量ほんとおかしいんだよ。僕は日本の一般的な一人前分ぐらいを食べたんだけどロイはその4倍ぐらい、ヴォイドさんも3倍ぐらいたべたんだよ……ありえない……
 そりゃその量食べてたら身長もスクスク伸びますよね。


「そうなのか……ユキの世界の者達は随分と少食なのだな……」

「この量ではいつか栄養失調になってしまうのでは……」

「僕は少食じゃないし栄養失調にもならないよ!今までだってそれで生きてきたんだから大丈夫!!」

「そうか……」「そうですか……」


 あまり納得していない様子だったけどそんなこと言われたって今の量より多くなんて食べられないしもう何も言わない。
 少量でも栄養の摂れる食事をつくらせようとかなんとか2人が話してたのはもう聞かなかったことにする。





 そんなこんなで食後のお茶を飲んでいると昼食をとりに行っていたダグが戻ってきた。


「失礼します」


 ただそう言って礼をし、部屋のドアの横に立ったダグをじっと観察してみる。


 かなりイケメンなんだよなぁ……ロイだけでなくヴォイドさんも顔面偏差値すごい高いんだけど、ダグも全く負けてない。
 でもロイとはまた違った感じかな。ロイはまだ綺麗って言葉が似合うような格好良さなんだけど、ダグはそうじゃなくてほんとに男らしさ満天。どこか雄臭さはあるのに暑苦しさは感じない。
 短く切り揃え、整えられた綺麗な銀髪と、切れ長の目から覗く黄金こがね色の瞳。形の良い唇は固く引き結ばれ、ダグの真面目さを彷彿とさせる。身長もヴォイドさんよりはるかに高かったから恐らく2m20cmぐらいある。
 無表情で今何を思ってるかなんてわからないけど、ただこの人はいい人だと僕の直感が告げていた。

 はやく仲良くなりたいな。



「ん"んっ、ユキ、そうもダグラスを見つめてどうした……?(まさか、もう惚れたか……?)」

「いや、かっこいいなぁって」


 僕のそんな言葉にロイとヴォイドさんは飲んでいたお茶を吹き出さんという勢いで盛大にむせた。
 ダグもなんか慌ててる。


「ど、どうしたの?」

「グッ……ゴホッゲホッ……

ゆ、ユキ、それはその、ダグラスがユキのタイプということか……?」


 ……たいぷ。タイプ……?
 そっか、この世界男の人しかいないから僕がダグをタイプって言ってもおかしくないのか……



……って


「いやいやいやいやいや!! えっ?! いや、タイプとかそう言うのじゃなくて!! ただ単にかっこいいなぁって思っただけで!!!」

「そ、そうなのか……?」

「そ、そうだよ! この世界に来てからまだヴォイドさんとロイとダグぐらいしかちゃんと見てないけど、全員これでもかってぐらい美形なんだもん……ずるいよ」


 うん、3人を見てたら不公平だとしか思えない。ちょっとぐらいその格好良さを分けて欲しい。


「いや、それならばユキもこれでもかというぐらい可愛いではないか」

「この平凡顔のどこがかわいいのさ……それに僕はかっこよくなりたいんだよ」




「「「平凡……?」」」


 ロイとダグとヴォイドさんの声が重なった。

 なにさ、平凡顔に何か文句あるの?


「まさか、ユキは無自覚なのか……?」

「む、自分が平凡だって自覚してるよ」

「いやいやいや、ユキは全く平凡顔などではないぞ……!」

「ええ! ユキ様は大層お可愛らしくてあらせられますぞ!!」

「そんなにフォローしてくれなくてもいいよ……」

「いや、頼むから自覚してくれ……!

そのサラサラの漆黒の髪も、長い睫毛を携えた大きな黒い瞳も! 小ぶりながらもすらりと通った鼻筋も、赤く色づいた唇に、それに引き立てられた白い肌も何もかもが美しく庇護欲をそそるのだ……!」


 う、うわぁ、目の前でそうやって容姿を褒められると照れるな……!


「あああそのように瞳をうるつかせて頬を赤く染めてはいかん……! そのままでは何処の馬の骨ともわからん輩にぺろりと食べられてしまうぞ……!」


 ぺろりと?! それはつまりその、そういうことですよね……? あの、本来恋愛関係にある者同士で行われるあの行為……ですよね……?
 いやいやいや僕に食指が働く人なんていないでしょ?!


「僕を襲う人なんていないよ……!」

「頼むから危機感をもってくれ……!

よいか、ユキの容姿はこの世界の者にとって、たまらなくそそられるものだ。我らよりも小さな身体もこの世界には存在せぬ黒い髪や瞳もその天使かと見紛うほどの容姿も、この世界の者にとってはひどく庇護欲をそそられ、それと同時にどこか嗜虐心も湧くものなのだ……

私はすでに伴侶も子供もおるし、ユキのことは守り慈しみたいという思いが勝っているからユキに手を出すようなことは決してせぬと誓うが周りはそうじゃない。
いつ何時、ユキの身体を狙い襲うものが出るともわからぬ……ユキ自身がそうも危機感が薄いとダグラスも守れるものも守れなくなってしまうぞ?」


 うぇ?! いや、天使とかそういうのは信じられないけどそうか、この世界の人に比べたら随分と小さな身体や黒い髪や瞳は恋愛対象に入ってしまうのか……!
 いくらもう恋愛対象が男に絞られるというのに納得したとはいえ襲われるのだけはいやだ……!


「ううう……あまり納得はできないけどそこまで言うならもう少し周りを警戒することにするよ……」


 そういった僕にロイとヴォイドさんとダグは安心したようにため息を吐いた。








(ダグラス、くれぐれもユキの周りに目を光らせておいてくれ)

(かしこまりました)


 そんな会話がロイとダグの視線の中で行われてたのは僕は知らない。
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