67 / 396
本編
65 レッスン開始
しおりを挟む
次の日から平日の午後に魔法とダンスの授業が入った。魔法の授業を1時間やったら30分ほど休憩を挟んでダンスレッスンを1時間。僕の体力的に行けそうならもう少し増やす予定。
「ではユキ様、まずは魔力を感知できるようになりましょう。魔力は常に身体中を巡っています。その流れを意識してご自身の魔力を認知してください」
リディアの説明を聞き、目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。
身体中を巡る流れ……だめだ、血液しか具体的に想像できないないからか見つけられない。
「ふむ……やはり少し時間がかかりそうですね……」
「……もう一回探してみる」
もう一度目を閉じて身体中を巡る存在を探す。
魔力……魔力……
そういえば魔力を暴走させた時、暴走させてる最中の記憶はないけどその直前、何か身体の奥から湧き上がって来るものを感じたような……
あの時の感覚はどうだった? 確か……温度を感じた気がする。ならとりあえず暖かいものをイメージして探ってみよう。
そうやり始めてまもなく、それらしいものを感じることができた。
「……これ、かな?」
「! 見つけましたか?」
「多分、これだと思う。身体の中に暖かいものが流れていて、それが僕の身体の外にまで広がってる」
「それです! 間違いなく魔力です!」
よかった、魔力で間違いないみたい。なんとか感覚を掴めてよかった。
「これが魔力かぁ……」
一度認識したら魔力を感知するのは容易になった。僕の魔力は僕を中心に半径2メートルくらいには広がってる。
その中でもなんだか魔力が濃いところがある? と思えばそこにいたのはダグ。
……つまりは無意識のうちに僕の魔力がダグを包んでいて。ダグはもちろんそれを感じているわけだよね……ダグの言葉は間違ってなかったわけだよ。
恥ずかしいからこれどうにか収められないかなーって考えたら僕の周りに飛び出してた魔力が身体の中に全て収まった。その瞬間ダグがちょっと寂しそうな顔になった。
「! ご自身で制御を覚えてしまわれたんですか?!」
「ん? これが制御なの? 飛び出てた魔力をしまっただけだよ」
「間違いなく制御です。素晴らしいですね。魔力感知ができても制御はなかなか上手くいかない方は多いのですよ。ユキ様は魔力操作がかなりお上手なのかもしれません。難しい魔法も覚えられるかもしれませんね」
魔力を感じられてもそれを動かせるかは別らしくて。いつまでも制御は苦手な人もいるらしい。
って、僕難しい魔法も覚えれるの?!
「まずは護身魔法を覚えていただき、そのあとに難易度の高い魔法も可能でしたらお教えいたしましょう」
「僕頑張って覚える……!」
護身魔法も難しい魔法も!
「一緒に頑張りましょうね。では本日はここまでといたしましょう」
「え? でも1時間経ってないよ?」
「もともと本日は魔力制御を覚えて頂くことを目標としていたのです。もう少し先の段階へ進んでもよろしいですが、ユキ様のご様子ならば急いで詰めていく必要もなさそうですので、予定通り魔力制御までに留めておきましょう」
「そうなの? うーん、まぁリディアがそう言うならそれでもいいかな? 焦っても良くなさそうだし」
「ええ。では魔法の授業は終わりにしまして、休憩後にダンスのレッスンへ移りましょう」
ダンス……こっちは絶対あっさりなんて程遠い事態になるよ……
「……うん」
30分ほど休憩してダンスレッスン開始。場所はいつもピアノ弾いてるあの広い部屋だよ。当日の会場もここらしくて、最終準備でここが使えなくなるまではレッスンはここでやるらしい。
僕が覚えるのはスタンダードなワルツだって。踊るのじゃなくて演奏したいなって思った。
「マナーとして、ダンスは決してフォロー側から誘ってはなりません。リード役、つまりユキ様の場合はダグラスがダンスのお誘いをかけることになります。
お誘いの際は左手を差し出されます。差し出された左手へ右手をそっと乗せることでお誘いに応じたことになります。
その次にダンスの基本の姿勢、ホールドと言うのですがユキ様の場合はこのような形になります」
「こう?」
リディアが作った体勢を真似してみると、後ろから修正される。
「肩の力を抜いて肩が上がらないように。背筋は若干反るくらいがいいでしょう。それから真上から見ると右肘は肩から真っ直ぐの位置、左肘は肩より前に位置するように……そうです、お上手ですよ。左手はお相手の右腕に添えることになります」
「……この体勢結構キツイね……」
腕プルプルする……背中攣りそう……
「そのうち慣れます」
「うぅ……」
つまりは慣れろってことですね……
「では一度お誘いからホールドまでの流れをやってみましょう」
「ユキ様、お手を」
「う、うん」
差し出された手にそっと右手を乗せると流れるように姿勢を作らされた。
……何がおきた? え、待って僕何もしてないのにさっきの姿勢になったよ。
「おや、一度で随分と綺麗なホールドができましたね」
「僕何もしてない……気づいたらこの形だった……」
「ということはダグラスのリードがそれほどレベルが高いということですね。貴方がそんな技を隠し持っていたなど知りませんでしたよ」
「ユキ様の重心の動かし方は把握済みだからな。そこを上手く流して差し上げれば簡単なことだ」
「なるほど、その手がありましたか」
リディアは納得してるけど僕わからないよ。
「……僕の重心?」
「そうですよ。ユキ様が動かれる時にどのように重心を移動させるかは把握していまして。私は先回りしてユキ様の重心を移動させることで自然と動けるようにさせていただいたのです」
「そんなことできるの……?」
重心を移動させて動きを強制したってことでしょ? そんなことをさらっとやってのけたなんて……
「可能ですよ。ダンスの間もこの調子でリードさせていただきますのでご安心下さいね」
「でもそれってダグ大変じゃない? ダンスの間中ずっとなんて……」
相手の重心を動かしながら踊るって正気の沙汰じゃないと思う……さっきのは一瞬だったからまだ出来ただけとかじゃないの?
「いえ、そんなことはありませんよ。ユキ様の重心の置き方は変なクセがございませんので比較的容易に誘導できます」
「そうなの? ……でもそこまで甘えるのはなんだかもうしわけないからそれは最終手段にしよう! 当日までに僕がダンスを覚えられそうにもなかったらお願いしてもいいかな?」
とりあえずは頑張ってみよう。ダメならお願いする。でもやる前から負んぶに抱っこはちょっと……18にもなってそれは僕のプライドが許さないのです!
え? ダンス踊るの嫌がってたじゃんって? そ、それとこれとは別なの! 踊るのは嫌だけど楽して人に苦労かけるのは別でしょ! そんなに大変じゃないってダグは言うけどそんなわけないと思うし。
「構いませんが……お気を使われる必要はございませんよ?」
「だめだめ! そこまで甘やかされたら僕ダメ人間になっちゃう!」
「そのような心配は無用かと思われますが……わかりました、では一先ずは普通に覚えてみましょうか」
「うん! 頑張る!」
なんて意気込んだら、何かを考え込んでいたリディアが口を開いた。
「……一度ダグラスが重心を操作しつつ踊り、ユキ様がその動きを記憶するのはどうです?」
……たしかに出来るかもしれない。見せられた動きを記憶してその通りに動くのは身体がついていかなくて無理だけど、自分の身体を動かされた通りに記憶するならできるかもしれない。
「……やってみる価値はあるかも?」
「……やってみましょうか」
そうしてダグラスの完璧なリードで踊ると、流石に身体を実際に動かすっていうのもあって一回でとはいかなかったけど、数回それを繰り返したらなんとか覚えることができた。
ちなみに少し時間オーバーしちゃったけど中途半端な記憶になっちゃうからってそのまま続行したんだよ。
いやぁ、それにしてもまさにダグの技術と僕の都合のいい記憶力の成せる業でしたねぇ。
「ではユキ様、まずは魔力を感知できるようになりましょう。魔力は常に身体中を巡っています。その流れを意識してご自身の魔力を認知してください」
リディアの説明を聞き、目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。
身体中を巡る流れ……だめだ、血液しか具体的に想像できないないからか見つけられない。
「ふむ……やはり少し時間がかかりそうですね……」
「……もう一回探してみる」
もう一度目を閉じて身体中を巡る存在を探す。
魔力……魔力……
そういえば魔力を暴走させた時、暴走させてる最中の記憶はないけどその直前、何か身体の奥から湧き上がって来るものを感じたような……
あの時の感覚はどうだった? 確か……温度を感じた気がする。ならとりあえず暖かいものをイメージして探ってみよう。
そうやり始めてまもなく、それらしいものを感じることができた。
「……これ、かな?」
「! 見つけましたか?」
「多分、これだと思う。身体の中に暖かいものが流れていて、それが僕の身体の外にまで広がってる」
「それです! 間違いなく魔力です!」
よかった、魔力で間違いないみたい。なんとか感覚を掴めてよかった。
「これが魔力かぁ……」
一度認識したら魔力を感知するのは容易になった。僕の魔力は僕を中心に半径2メートルくらいには広がってる。
その中でもなんだか魔力が濃いところがある? と思えばそこにいたのはダグ。
……つまりは無意識のうちに僕の魔力がダグを包んでいて。ダグはもちろんそれを感じているわけだよね……ダグの言葉は間違ってなかったわけだよ。
恥ずかしいからこれどうにか収められないかなーって考えたら僕の周りに飛び出してた魔力が身体の中に全て収まった。その瞬間ダグがちょっと寂しそうな顔になった。
「! ご自身で制御を覚えてしまわれたんですか?!」
「ん? これが制御なの? 飛び出てた魔力をしまっただけだよ」
「間違いなく制御です。素晴らしいですね。魔力感知ができても制御はなかなか上手くいかない方は多いのですよ。ユキ様は魔力操作がかなりお上手なのかもしれません。難しい魔法も覚えられるかもしれませんね」
魔力を感じられてもそれを動かせるかは別らしくて。いつまでも制御は苦手な人もいるらしい。
って、僕難しい魔法も覚えれるの?!
「まずは護身魔法を覚えていただき、そのあとに難易度の高い魔法も可能でしたらお教えいたしましょう」
「僕頑張って覚える……!」
護身魔法も難しい魔法も!
「一緒に頑張りましょうね。では本日はここまでといたしましょう」
「え? でも1時間経ってないよ?」
「もともと本日は魔力制御を覚えて頂くことを目標としていたのです。もう少し先の段階へ進んでもよろしいですが、ユキ様のご様子ならば急いで詰めていく必要もなさそうですので、予定通り魔力制御までに留めておきましょう」
「そうなの? うーん、まぁリディアがそう言うならそれでもいいかな? 焦っても良くなさそうだし」
「ええ。では魔法の授業は終わりにしまして、休憩後にダンスのレッスンへ移りましょう」
ダンス……こっちは絶対あっさりなんて程遠い事態になるよ……
「……うん」
30分ほど休憩してダンスレッスン開始。場所はいつもピアノ弾いてるあの広い部屋だよ。当日の会場もここらしくて、最終準備でここが使えなくなるまではレッスンはここでやるらしい。
僕が覚えるのはスタンダードなワルツだって。踊るのじゃなくて演奏したいなって思った。
「マナーとして、ダンスは決してフォロー側から誘ってはなりません。リード役、つまりユキ様の場合はダグラスがダンスのお誘いをかけることになります。
お誘いの際は左手を差し出されます。差し出された左手へ右手をそっと乗せることでお誘いに応じたことになります。
その次にダンスの基本の姿勢、ホールドと言うのですがユキ様の場合はこのような形になります」
「こう?」
リディアが作った体勢を真似してみると、後ろから修正される。
「肩の力を抜いて肩が上がらないように。背筋は若干反るくらいがいいでしょう。それから真上から見ると右肘は肩から真っ直ぐの位置、左肘は肩より前に位置するように……そうです、お上手ですよ。左手はお相手の右腕に添えることになります」
「……この体勢結構キツイね……」
腕プルプルする……背中攣りそう……
「そのうち慣れます」
「うぅ……」
つまりは慣れろってことですね……
「では一度お誘いからホールドまでの流れをやってみましょう」
「ユキ様、お手を」
「う、うん」
差し出された手にそっと右手を乗せると流れるように姿勢を作らされた。
……何がおきた? え、待って僕何もしてないのにさっきの姿勢になったよ。
「おや、一度で随分と綺麗なホールドができましたね」
「僕何もしてない……気づいたらこの形だった……」
「ということはダグラスのリードがそれほどレベルが高いということですね。貴方がそんな技を隠し持っていたなど知りませんでしたよ」
「ユキ様の重心の動かし方は把握済みだからな。そこを上手く流して差し上げれば簡単なことだ」
「なるほど、その手がありましたか」
リディアは納得してるけど僕わからないよ。
「……僕の重心?」
「そうですよ。ユキ様が動かれる時にどのように重心を移動させるかは把握していまして。私は先回りしてユキ様の重心を移動させることで自然と動けるようにさせていただいたのです」
「そんなことできるの……?」
重心を移動させて動きを強制したってことでしょ? そんなことをさらっとやってのけたなんて……
「可能ですよ。ダンスの間もこの調子でリードさせていただきますのでご安心下さいね」
「でもそれってダグ大変じゃない? ダンスの間中ずっとなんて……」
相手の重心を動かしながら踊るって正気の沙汰じゃないと思う……さっきのは一瞬だったからまだ出来ただけとかじゃないの?
「いえ、そんなことはありませんよ。ユキ様の重心の置き方は変なクセがございませんので比較的容易に誘導できます」
「そうなの? ……でもそこまで甘えるのはなんだかもうしわけないからそれは最終手段にしよう! 当日までに僕がダンスを覚えられそうにもなかったらお願いしてもいいかな?」
とりあえずは頑張ってみよう。ダメならお願いする。でもやる前から負んぶに抱っこはちょっと……18にもなってそれは僕のプライドが許さないのです!
え? ダンス踊るの嫌がってたじゃんって? そ、それとこれとは別なの! 踊るのは嫌だけど楽して人に苦労かけるのは別でしょ! そんなに大変じゃないってダグは言うけどそんなわけないと思うし。
「構いませんが……お気を使われる必要はございませんよ?」
「だめだめ! そこまで甘やかされたら僕ダメ人間になっちゃう!」
「そのような心配は無用かと思われますが……わかりました、では一先ずは普通に覚えてみましょうか」
「うん! 頑張る!」
なんて意気込んだら、何かを考え込んでいたリディアが口を開いた。
「……一度ダグラスが重心を操作しつつ踊り、ユキ様がその動きを記憶するのはどうです?」
……たしかに出来るかもしれない。見せられた動きを記憶してその通りに動くのは身体がついていかなくて無理だけど、自分の身体を動かされた通りに記憶するならできるかもしれない。
「……やってみる価値はあるかも?」
「……やってみましょうか」
そうしてダグラスの完璧なリードで踊ると、流石に身体を実際に動かすっていうのもあって一回でとはいかなかったけど、数回それを繰り返したらなんとか覚えることができた。
ちなみに少し時間オーバーしちゃったけど中途半端な記憶になっちゃうからってそのまま続行したんだよ。
いやぁ、それにしてもまさにダグの技術と僕の都合のいい記憶力の成せる業でしたねぇ。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
2,126
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる