あの人と。

Haru.

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After Story

なんだったっけ

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 話が脱線したから元に戻して現在指紋鑑定の研究についてアルバスさんとヴォイド爺と流れを話し合っております。

「アルバスや、足跡を追う魔法はあったじゃろ?」

「一応はあるな。ただまぁ魔力を残さねぇ奴なんざ足跡も残すわけねぇからほとんどあてにしてないがな。だから精度もいまいちだ」

「まずはそれの精度を上げて指紋にも使えぬか調べようじゃないか。それで無理なら別の方法を調べるのみじゃ」

「だな」

 足跡の鑑定魔法はあるんだ……知らなかったや。思ったより早く研究は終わりそうだなぁ。魔法の構成の見直しをして、実際に試して……それをどう活用するか考えて……道具にするならそれを作って……いや、結構かかるか。でもちょっとワクワクします。

「ではその流れで研究を進めよう。ユキや、それでもよいかの?」

「もちろん! 元になる魔法があるならやりやすそうだね」

「じゃな。何もないよりは手がかりがある分やりやすいじゃろ」

「とりあえず決まったのはいいが……ユキ、美味いか?」

「むぐ……おいしいですよ」

 えへ。実はさっきのリンゴをリディアに剥いてもらって甲斐甲斐しくダグに食べさせて貰っております。美味しいです。ヴォイド爺はまるで孫を見るお爺ちゃんのような優しい目で見てきます。アルバスさんは呆れた目。

「アルバスさんも食べます? ダグのあーんはつけませんけど」

「こいつに食べさせてもらうなんざどんな罰ゲームだ……」

 わぁ、ダグもアルバスさんもものすごい顔! うん、僕も2人があーんってやってるとこは見たくないです。それにダグは僕のだし。病気とか怪我で必要なら全然いいんだけどそれ以外は嫌なのです。ねえ僕は……? ってアピールしちゃうよ。

「リンゴはいいからなんか食うもんねぇか、リディア。腹減った」

「サンドイッチならございますよ」

「くれ」

「はいはい」

 リディアがひと口サイズのサンドイッチを山盛り出してアルバスさんの前に置くと、アルバスさんは多いなんて言わずにどんどん食べ始めた。僕にとっては多くてもアルバスさんからしたら普通の量なんだなぁ。リンゴ美味しい。

「神殿長は何かいります?」

「お茶のおかわりをもらおうかの。あとはサンドイッチをこいつからちょっととるから構わんよ」

「あっ、おいじいさん!」

 おおすごい、ヴォイド爺がアルバスさんの前のお皿からあっさりとサンドイッチをとったよ。僕には手が見えなくていつの間にかヴォイド爺の手にサンドイッチが現れたって感じだったけど。

「なんじゃ、そんだけあるんだから構わんじゃろ。私はひとつくらい譲ってくれ」

「ったく……俺は筋肉の維持に栄養がいるんだっつの」

「私だって脳に栄養が必要じゃよ。……うむ、さすがリディアの手料理は美味いのぉ。良い嫁になるな」

 瞬間、リディアとアルバスさんの動きが止まりました。リディアはちょっと目元が赤いですよ。アルバスさんは……あ、リディアお手製って思ってなかったのかな? マジマジとお皿にあるサンドイッチを見てます。

「っこれお前の手作りなのか?!」

「も、文句があるなら食べないでください!!」

「いや、早く言えよ! んだよ、お前の手作りかよ……くそ、もったいねぇことした……知ってたらもっと味わって食ったのによぉ……」

「なっ……た、ただのサンドイッチです! さっさと食べてください!」

 わお、リディアのお顔が真っ赤。可愛いですよ。

「お前の手作りならただのじゃねぇよ。おいじいさん、もうやらねぇからな」

「ほほほ、よいよい。私はもうお腹いっぱいじゃ」

 たぶん今のヴォイド爺のセリフ、いろんな意味でってつく感じです。だって表情と声がすっごく今の状況を楽しんでますって感じだもの。僕も楽しいです!

「あー、まじかぁ、リディアの手作りか……うめぇわ……不意打ち過ぎんだろ……」

「さっきまで馬鹿みたいに食べてたくせになんですいきなり」

「リディアが作ったって知っただけで俺には特別感が増すんだよ! それくらいわかんだろ。あー、くそ。なんで俺はあんながっついちまったんだ……まじでもったいねぇ……」

 なんて言いながら惜しむようにじっくりと噛み締めて食べるアルバスさん。リディアお手製サンドイッチに本気で感動してるみたいでなんか可愛い。

「べ、別にそれくらいいつでも作ってあげますよ」

「まじか?! ぜってぇ作ってもらうからな! あー、うめぇ。もうリディアいっそ嫁に来いよ」

 え? プロポーズ? このタイミングで?

「は?! わ、私はそんな適当なプロポーズなんて受けませんからね……!」

 言葉を変えたらあれですよね。つまりちゃんとしたプロポーズなら受けるってことですよね。

「あー……うし」

「な、なんですか……」

 おやおや? アルバスさんがリディアの前まで歩いていって跪きましたよ……? 取り出したのは手のひらサイズの平べったい箱……? これはもしかするともしかする感じですか……?

「リディア、愛してる。毒舌なとこも含めて、お前のなにもかもが好きだ。13も歳上のおっさんで悪いが、もう離してやれねぇ。お前と一緒にいたい。俺と結婚してくれ」

「……浮気なんかしたらあなたのご自慢のブツを切り取ってやりますからね」

「お前に夢中過ぎて浮気する暇なんざねぇよ。お前のために作ったブレスレット、受け取ってくれ」

「し、しょうがないので受け取ってあげます! あなたみたいなおじさんは他に引き取り手もいないでしょうし!」

 そう言ってぷいってアルバスさんから視線を外したリディア。こんなこと言ってても声はなんだか嬉しそうだし見えてる耳も真っ赤だよ。そんなリディアをまるでダグが僕を見るときのような目で見ながら、アルバスさんはリディアの右手を取ってその手首に青い石がキラリと光るブレスレットをつけた。

「ああ、やっぱお前の白い手に青は映えるな。よく似合う」

「ふ、ふん。あなたにしては悪くないデザインですね」

「相変わらず素直じゃねぇなぁ。ま、そんなとこも可愛いんだがな」

「なっ……馬鹿なんですか?!」

「どう、どう。落ち着け」

 顔を真っ赤にして叩こうとしたリディアを抑えるように抱きしめたアルバスさん。リディアったら最初は暴れてたんだけど、何かを耳元で囁かれているうちにだんだんおとなしくなって、ついにはアルバスさんの背中に手を回すようになりました。肩に大人しく顔をうずめてらっしゃいますよ。なにそれ可愛い。一体何て言ったのアルバスさん……!

 まぁそれはいいけど2人とも僕の部屋ってこと忘れてなぁい? なんだかもう2人の世界が出来上がってるよ。僕達どうするべき?? あ、お茶なくなっちゃった。どうしようかなぁ……あ。

「~っっ! わ、私は……っっ殺してください……!! いやもう死んできます!!!」

 今起きたことを説明すると、もぞりと動いたリディアとばったり目が合っちゃったんですよ。そしたら僕の部屋だったってことを思い出したみたいで。リディアが現在パニックに陥ってます。

「落ち着けって」

「は、離しなさい!!」

「ま、まぁまぁリディア。いちゃいちゃしてるところなんて僕いっつも見られてるし、ちょっと見られたくらい大丈夫だよ」

「いちゃついてません!! それにユキ様は見られているというよりも見せているでしょう!!」

 うおっとぉ……た、たしかに所構わずいちゃいちゃしてますけども……! だって我慢できないもん。人のいるところでは触れるだけのキス止まりだからセーフでしょ……? きっとセーフだよ……!

「別に恥ずかしいことではなかろう。いいプロポーズだったじゃないか。私は仕事はできるのに毒々しいリディアに引き取り手があって嬉しいぞ」

「し、神殿長……」

「僕もリディアが幸せになるの嬉しい! 結婚式は絶対参加します!!」

 友人代表スピーチしたい! でもはたしてこの世界にその文化があるのか……! 僕の結婚式ではそういうのなかったもの。まぁでも、参加して綺麗なリディアを見て、お祝いできるだけで十分です!

「お、ユキが参加してくれるならぱーっと豪華にやらねぇとな! リディア、恥ずかしがるだけ無駄だと思うぞ。バカにされてるわけでも笑われてるわけでもねぇんだしよ。体力消耗するだけだぞ。ほら、ユキに茶でも入れてやれ」

 流れ的にはちょっと面白かったですけど。流石にそれを口にするほど僕は馬鹿じゃないです。プロポーズはたしかに素敵だったし! ついつい食い入って見ちゃったよ。

「も、元はと言えばあなたがいきなり……! ……はぁ、もういいです。すぐにお茶をお入れいたします」

「ありがと! あと婚約おめでとう!」

「ありがとう、ございます……」

 ふふ、やっぱり照れたリディアは可愛い。凛と澄んだように美しいのにふとした瞬間に出る可愛さ……ギャップだね!

 結婚式はまだまだ先になるだろうけど、すっごく楽しみです! お祝いは何がいいかなぁ? 僕もっと頑張ってレイのお仕事手伝ってお金稼いで資金を集めなきゃ! えへへ、ウキウキワクワクだね!

 ……あれ? もともと僕達なんの話ししてたっけ?
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