あの人と。

Haru.

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After Story

気楽に

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 時は飛んで3月。今日はアルの誕生日です。他の国ではまた色々とあるけれど、この国では国王と王妃の誕生日と、王子が成人した時の誕生日には舞踏会を開く。国王の誕生日は生誕祭とか言って国中がお祭り騒ぎになるくらいです。

 そんなわけで今日は舞踏会なのです。結婚披露以来初めての舞踏会参加になります。前回のことがあったから僕とダグへの挨拶は今回は無しになった。主役はアルだしそれで全く問題ないと思う。だってお馬鹿な貴族達はなんだかアルを後回しにしてこっちに来そうなんだもん。主役に先に挨拶しないなんてマナー違反です。あ、僕はアルに挨拶しに行くよ。

 今日はアルが主役だから、アルとその伴侶のロイが前回僕たちが座っていた場所に座って、僕とダグはレイやラスと一緒にいることになってる。メリフィナさんももちろんいるし、アレクさんはラスの近衛として近くにいるはず。ダグはもちろん僕の伴侶としています!

 お義父さん達も来るから僕とダグはそっちにも行くかな? ダグとラギアスとリディアが一緒なら会場を歩いてもいいことになってるから、今日はちょっと歩いてみるつもりです。前回も前々回も歩いてよかったんだけど、単に挨拶が長すぎてそんな暇がなかったのです。


 用意を済ませてダグの部屋へ行くとキラッキラのダグが! 今日のために仕立てた衣装がたまらなく似合ってます! 色使いは僕とちょっとお揃いなのですよ。これは重要なポイントなのです。僕とダグの仲の良さを見せつけるいい方法なのです。これがなくても丸わかりだと思うけど!

「ダグかっこいい!!」

「ユキも一段と綺麗だ。よく似合っている」

 えへへ、朝からリディアのエステを受けた甲斐があります! きっちり磨き上げてもらったのです。だってダグには1番いい状態を見て欲しいんだもん。せっかく綺麗な衣装を着るんだから自分自身も綺麗にしてもらわなくちゃ! ってなったのです。エステ気持ちよかったです。

「そろそろお時間ですよ」

「はぁい」

「ユキ、絶対に離すなよ」

「うん! ダグも離しちゃやだよ」

「わかっている」

 会場を歩くにはそれなりに危険があるから、ダグと離れるなんて言語道断。絶対に離れないようにしがみついておきますよ!


 会場に着くとざわめく貴族達を無視して先に来ていたレイ達の方へ行く。アルとロイは最後の入場になるからまだいない。

「ユキ! こっちこっち! ユキとダグの椅子は2人がけのカウチだよ」

「やっぱり? 僕としては嬉しいけどいいのかなぁ」

 最初とかは慣れてないだろうからってことでダグと引っ付いて緊張をほぐせるようにってことで2人がけのカウチだったのはわかるけど、舞踏会に参加するのももう3回目。未だにこれでいいのかな? いいなら喜んで座りますけど。

「別にいいだろう。元々決まりは存在していないんだ。私達はこの形が最初から普通だっただけで、ユキがその形でいいならそのままでいいと思うぞ」

「そう? なら座っちゃお。えへへ、座っている間も手を繋いでいられるね」

「そうだな。なんなら膝に乗るか?」

「流石にそれはマナー違反だよ。部屋でしよ? 僕ダグの膝に座るの好き。ダグが抱きしめてくれて安心するの」

「そうだな。俺もユキを抱き上げていると安心する。部屋に戻ったら2人きりでゆっくりしよう」

「うん!」

 えへへ、楽しみです。もう結婚してから5ヶ月以上経ったのに僕たちはずっとこんな感じで、夜やダグがお休みの日はずっといちゃいちゃしてます。えっちの頻度も変わってませんよ。

 ダグとひたすらにいちゃいちゃして始まるのを待っているとすぐにアルとロイがやってきた。ざわざわしていた会場も静かになり、アル達が席に着けば舞踏会は始まった。僕たちはアルとロイに1番最初に挨拶をする。

「アル、お誕生日おめでとう! これ、僕とダグから」

「おめでとうございます、王妃陛下」

「ユキ、ありがとうな。ダグラスも。疲れたら抜けていいからな」

「はぁい」

 でも今日は長~い挨拶もないし大丈夫なはず! あれが1番疲れるもんね。もっとアルと話したいけれど、アルへの挨拶の行列は長くなるはずだから僕たちはすぐに退散。あとで時間があったらまた話したいなぁ。


 とりあえずカウチに座ってゆっくりします。挨拶がないっていいなぁ……僕はリディアが持ってきてくれた料理をダグと食べていちゃいちゃ。アルはもちろん、レイ達も挨拶の対応をしています。今回の僕は気楽すぎるね!

 食べさせあいっこしながらご飯を済ませ、デザートも食べるともう会場にいる人たちの観察くらいしかやることがない。僕は果実水、ダグはシャンパンを飲みながらゆっくりする。

 あれ、あの人って……ええ、国王の誕生日ならまだしも王妃の誕生日に他国の国王が参加するってほとんどない筈なんだけど……なにしれっと挨拶の列に並んでるのさ……

「ダグ、毎年コルンガの国王陛下ってこの日来る?」

「いや、そんな話は聞いていないが」

「いるんだけど」

「まさか、王太子が来ているはず、だ……いるな」

 マスルール様、また宰相さん泣いちゃうよ……かわいそうに……あ、マスルール様の順番になった。ロイも気付いてすごい顔してるよ。多分何また勝手に来てんだって話をしてるんだろうなぁ。それにマスルール様護衛つけてないよ。国王が護衛なしで他国って……危険だよ……あ、ロイが騎士さんに言ったのか何人かやってきてマスルール様についた。相変わらずマスルール様は楽しそうに笑っているなぁ。

「陛下も大変だな」

「だねぇ」

 見ている分には面白いけど、あんなタイプの人が友達だとものすごく苦労しそう。ちょっと遠慮したいです。

 それからまた少しの間ダグとのんびりしていると行列もだいぶ短くなってきた。

「父上達も挨拶が済んだようだな。行くか?」

「行きたい!」

 ダグに手を引かれてゆっくり歩く。周りの貴族が話しかけられないようにダグはもちろんリディアやラギアスが目を光らせてくれてるよ。なんだかモーセになった気分です。

「お義父さん、お義母さん、お義兄さん」

「おやユキちゃん。久しぶりだね。元気にしていたかい?」

「はい!」

「それは良かった」

 やっぱり僕お義父さんもお義母さんも好きだなあ。優しいし雰囲気がやっぱりダグと似てて安心するのです。お義兄さんも嫌いじゃないよ。ただまぁ結婚祝いにもらったものは忘れてないけど!

「ユキちゃん、今日はピアノは弾かないのかい?」

「アルへの挨拶が落ち着いたらにしようかな、と。お祝いの曲を弾きたいのです」

「それはいいね。楽しみだ」

 アルには内緒だけど、ロイに許可は取った。ロイに聞いたアルの好きな曲と、もともと知っているお祝いの曲を何曲か弾くんだ。アル喜んでくれるといいなぁ。

「ダンスはダグラスとだけかい?」

「……足を踏んでしまうと思うのです」

 お義父さん達とかロイ達とか、踊るのはいいんだけど踏んでしまいそうで申し訳ない……

「踏まれたって構わないよ。ぜひ踊ろう」

「うぅ、踏んでも怒らないでくださいね」

「怒るわけないだろう? 可愛い息子と踊るのが楽しみだ」

 嬉しそうなお義父さん。嬉しいならいいけど……踏まないように頑張ろう……! なんだかロイも対抗して踊りたいって言いそうな予感がします。僕、今日はダンスで疲れるかも?

「ユキちゃん、お兄ちゃんとも踊らないか?」

「兄上はユキを誑かしそうなので私が許しません」

「誑かすわけがないだろう。それに誑かしたところでユキちゃんはかけらもなびかないと思うが」

 うん! 僕はダグ以外になんて惹かれません! だってダグ以上の人なんていないもん。ダグだから好きなだけで、いくらダグに似てても恋愛対象にならないよ。

「ユキの体力が持ちそうになかったら許可できません。おそらく陛下も踊りたがるでしょうから」

「わかっている、ユキちゃんの体調を優先しよう」

 やっぱりダグもロイが踊りたがると思う? アルも言いだすんじゃないかなぁって思ってるんだよね。別にいいけどさ、僕多分足踏むよ? こけないようにだけ気をつけよう……
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