あの人と。

Haru.

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After Story

完治とリディア

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 例の小説は一応ダグにも僕達がモデルっぽい内容になってることは伝えておいて、そのままザザッと読み終えた。正直自分がモデルかもしれない物を読むのはちょっと苦痛だったけど、ラスは感想を求めてくるタイプだからちゃんと読んでいないとダメなのです……

 これは別人、これは別人……と言い聞かせて読んだけれど、正直読めば読むほど僕とダグじゃない? って思えてきて微妙な気持ちになりました。でも騎士さんが格好良く描かれてたから良し! ダグを格好悪く書くなんて許せないからね!

 とりあえずラスから借りた小説は読み終わったし休憩することにして本を脇に避けるとダグが温かいお茶をテーブルに置いてくれました。この香りは間違いなくリディアのオリジナルブレンド……! 魔法収納に入れてたのかな? 何はともあれこれは飲まずにはいられません!

 火傷しないように少し冷ましながらクピリと飲むとふわりといい香りが広がって……やっぱりお茶はリディアが入れてくれたものに限ります! 本当に美味しくてついそのままカップとソーサーをテーブルに戻すことなく一気に飲み干してしまいました……うー、もっと飲みたい……

 チラリとダグを見てみるとくつくつと笑いながらおかわりを注いでくれました! 今度は味わって飲みます!

 飲む前に香りを楽しんで、口に含んだら少しそのまま止まって口に広がる香りも楽しんでからゴクリ。どう味わっても最高です……! リディアのお茶がここまで美味しいのは茶葉のブレンドの仕方はもちろん、お湯の温度とか蒸らす時間とかが完璧なんだろうなぁ。リディアのブレンドした茶葉を使ってもここまで美味しく入れられる人はいないんじゃないかなって思います。

「は~……美味しい……魔法収納に入れてたの?」

「いや、リディアがさっき入れた物らしい。神官がワゴンに乗せて持ってきたんだ」

「そうなの? じゃあリディアにお礼のメッセージ書いて届けてもらおっと」

 掌サイズのメッセージカードを取り出して、お気に入りのペンを走らせる。


 美味しいお茶をありがとう。やっぱりリディアのお茶が1番だよ! 栄養たっぷりの飲み物もありがとうね。風邪が完全に治ったらまたリディアと一緒にお茶でもしながらのんびりしたいな。リディアも風邪には気を付けてね。


 こんな感じかな? 神官さんに言えば届けてくれるだろうから、とりあえずテーブルの上に置いておいて今はお茶を楽しみましょう! 流石に3杯も飲んじゃったらお腹がチャポチャポになっちゃうから、今日のところはこれでお終いにするつもり。だからしっかり味わわないと……!

 とはいえ冷めちゃえば味は落ちちゃうから、じっくり味わいつつ冷めないうちに飲み干しました。空になったカップを見るとなんだか物寂しい気分にもなるけれど、今日のところは我慢です……! 飲み過ぎも身体に良くないだろうし……明日また飲めたらいいなぁ。

 お茶も飲み終えたしメッセージカードも神官さんに預けられた。何をしようかな、と考え始めるとダグからは寝ろっていう無言の圧が漂い始めました……だんだんその圧は近付いてきて、ついにはすぐ後ろから感じるように……

 チラリと振り返るとじぃっと見下ろしてくるダグの圧に負けてカウチに寝転べば、満足げな表情でダラスを渡されてさらに毛布をかけられました。起き上がることは許してくれなさそうなので大人しく寝ることにします……

 あ、寝転びながら本を読むのは……だ、ダメですよね! ごめんなさい、大人しく寝るから許してください!! 慌てて目を閉じればポンポンと撫でられて、その優しい手にうっとりしているうちにゆっくりと意識が解けるように眠りについたのでした。



* * * * * * * * * *



 さらに4日ほど過ごして、ようやくダグから部屋の外へ出ることを許されました。とはいえもちろん庭に長時間出ることは許されないけども。温室に行くくらいなら何も言われないようになりましたよ! リディアもまた今日から部屋に来るようになって、日中を2人でのんびりと過ごす生活の再開です!

「お風邪が良くなって本当に安心しましたよ。ユキ様がお辛い時にお側にいられない苦しさは語り尽くせるものではありませんでした」

「リディアったら大袈裟だなぁ」

「大袈裟などと! 初日なんてお昼を全て戻されたそうではありませんか。何度お部屋へ突撃しようと思ったことか……」

「駄目だよ!?」

 と、突撃して来なくてよかった……! もしそれで万が一にもリディアに風邪がうつってたら申し訳なさすぎてアルバスさんにも顔向けできないところだったよ……

「アルバスとダグラスにも止められました。私がこちらへ来て万が一うつって仕舞えばユキ様がご自分を責めるだろうからと」

「うん、正しいよ。もしまた風邪ひいても来ちゃ駄目だからね!」

 ダグとアルバスさんナイス! リディアを止めてくれて良かったです。是非とも次も止めてもらわなくちゃ。

「……ではもしもの時はまた栄養満天のお飲み物を神官に届けさせることで我慢します……」

「うん、そうしてね。リディアの飲み物、すっごく助かったよ。特に今回は喉がすごく痛かったけど、リディアの飲み物のおかげですぐ良くなったもん」

「それはよろしゅうございました。いつでもお作りしますからね」

「ありがとう!」

 美味しくて身体に良い物ならいくらでも飲みたいです。それに、風邪ひいた時に飲むリディアの特製ドリンクは一つの楽しみでもあるのです。風邪ひいた時ってご飯もあんまり食べられないし、動き回ることが許されないのは勿論、大人しく本を読むのも少しだけしか許してもらえないから楽しみが本当にないんだよね。

 1日目とか2日目の1番しんどい時は寝ることしかできないからそれで問題ないんだけど、微熱に下がって元気になってくると暇で仕方なくなるのです。そんな時にリディアの飲み物が毎日届くとなると、今日はどんなのかな、とかこれには何が入ってるのかな、とか考えられて楽しいのです。貴重な楽しみの一つなのですよ!

 でもまぁもうはしゃぎ過ぎたりしない限りは動くことも問題なくなったから他にも色々できることはあるし、わざわざ特製ドリンクを作ってもらうのも手間がかかるだろうから他のことをして楽しみます。またリディアとのんびり編み物するのとかもいいよね。動き回らないから長時間ぶっ通しでやったりしない限りダグもなにも言わないだろうし。

 そういえば僕もリディアもマフラーをダグとアルバスさんに編んだんだけど、リディアはちゃんと渡したのかな? 勿論僕は12月中に渡して、すごく喜んだダグにベッドに連れ込まれましたよ。いつもより格段に甘くて次の日は自力で歩けなかったけど、マフラーを巻いて幸せそうに微笑むダグを見て来年も編んであげることを決めました。

「リディア、マフラーは渡したの?」

「う……」

「……渡してないの? もう1月だよ? アルバスさんも寒いんじゃないかなぁ」

「あ、あれだけ筋肉がついていればきっと寒くなんてありませんよ。それに私が編んだものなど……」

「リディアの手作り料理で大喜びするアルバスさんだよ? 形に残るものなんてもっと喜ぶと思うなぁ」

 愛する人が自分のためにって編んでくれたものだよ? アルバスさんってリディアのこと溺愛してるし絶対喜ぶと思うけどなぁ。たしかにアルバスさんはマフラーどころかコートもいらなさそうなくらい筋肉ついてるけどそれとこれとは別だと思うのです。

「それに……」

「なんでしょう?」

「もしも渡さなかったとして、渡さなかったことがバレたらどうなるかなぁって……」

 いや、うん……リディアは妊娠中だから無茶なことはしないだろうけど、何もなしとはならなさそうな気が……どうやらこの世界の妊娠方法だと妊娠中にえっちしても問題ないどころか、むしろ夫側の魔力が渡せるからって事で度を越さない限り推奨されてるらしいし……

「……すぐに渡します。今日にでも。ですので私が渡すことを躊躇っていたことはどうか内密に」

 どうやらバレた時のことが想像出来たらしく、リディアの顔は若干青ざめてます。

「う、うん。ダグも内緒ね?」

「わかった」

「くれぐれもお願いしますよ!?」

「わかったわかった。マフラー、ちゃんと渡すんだよ」

「……はい。ありがとうございます」

 こっそり作ってたマフラーの作り方でわからないところが出てきたけど、僕が風邪ひいている間は聞きに来れなくて完成できなかった。でも漸く今日聞きに来れたから無事完成したよっていう設定でいきましょう! まぁ聞かれることは無いとは思うし、リディアがうっかりしない限りバレないでしょう。

 ……普段はしっかりしてるリディアだけどアルバスさんのことになると途端に挙動不審になることもあるからちょっと心配だなぁと思った僕でした。
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