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After Story
決戦の時
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小道に移動して20分ほど経った頃、ダグがそっと腕を引っ張って合図をしてきました。どうやら来たみたいです。小道は丁度螺旋を描くようになってるから、僕は角度的に見えないくらいの位置にスタンバイOK!
「ダグラス隊長! お疲れ様です!」
あ、早速来ましたよ……声は確かに騎士さん達にモテそうな可愛い感じ! 姿はまだ僕からは見れないけど!
「エミリオか。何か用か?」
「ダグラス隊長、今日はお休みですか? 僕も休みなんです。よければ一緒にお茶でも──」
「だぁれ、ダグ?」
ダグと一緒にお茶なんてさせませんよ!? つい我慢できずに飛び出しちゃいました。まぁいいや、タイミング悪いわけじゃないしね。
エミリオさんはたしかにこの世界基準だと華奢な方で、身長も平均は確実にないくらい。サラサラの淡い桃色の長い髪を高い位置でひとまとめにしていて、顔はぱっちりとした大きな目がチャームポイントかな? 服装は腰と脚の細さを強調させつつもすごくヒラヒラです。
歩いているのを見たら第1部隊に配属されている騎士だって絶対に気付かれない容姿だよ。でもたしかダグ情報によると見た目にそぐわない怪力ぶりで強烈な一撃を放ってくるんだったっけ。全然そんなふうには見えないなぁ。
「ああ、新入隊員のエミリオだ。俺の直属の部下だな。エミリオ、こっちは妻のユキヒトだ」
「新入隊員さん! 初めまして、妻のユキヒトです」
えへへ、一度言われてみたかった&言ってみたかったセリフです! いつもならダグを僕の伴侶として紹介するから、ダグに妻として紹介されて妻として自己紹介するシチュエーションってなかなかないんだよ。えへへ、夢が叶っちゃいました。喜んでる場合じゃないんだけども。
「え、あ、神子様、ですよね……?」
「一応そうなりますね」
「一応も何もユキは立派な神子だろう。俺にとっても自慢なんだぞ」
「ふふ、ありがと、ダグ。ダグがいてくれるから僕も頑張れるんだよ」
うっかりエミリオさんがいることも忘れて普段通りイチャイチャ。ダグが甘く微笑みながらおでこにキスしてくれるのをクスクスと笑って受け入れたりなんかして。通常運転です。
「し、失礼いたしました! 礼を欠いたご無礼をお許し下さい」
「構いませんよ。どうぞ楽にしてください」
勢いよく跪いたエミリオさんは立ち上がると顔は真っ青。でもちょっと憎々しげな視線を僕に送ってきてます。ちゃんと気付いてるんだからね!! 僕が気付いてるってことはダグも気付いてるんだから!
「あ、あの、無礼とは存じますがお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、構いませんよ」
「お2人は、いつもご一緒に……?」
ここで僕たちの仲の良さを見せられなかったらお茶に誘って話しているうちに……と思ったけど、ここで色々と話しながらアピールできそうな感じです。仲の良さを見せつけてやりましょう!
「はい、休日やダグの終業後はずっと一緒にいますよ。まぁダグは僕の護衛騎士長なのでお仕事中も基本的に側にいますけれど」
「ダグラス隊長は年中無休で働いているようなものなのですね」
つまり僕がダグを無理やり縛り付けて側にいさせてるって言いたいのかな? ダグは本当は嫌だけど僕の言うことを聞くしかなくて嫌々側にいると??
「お休みだからこそデートをするのですが、それは一体どう言うことでしょう? 僕はダグを無理矢理側に居させたりなんてしていませんが」
「ダグラス隊長はお優しいから神子様のお願いを無視なんてできないのでしょう。お仕事で疲れているダグラス隊長を終業後も縛りつけるなんて……」
「ダグ、夫婦が夜に一緒にいるのはこの世界ではおかしいの?」
本当に疑問に感じてる風にダグに聞けば腰に手を回して抱き寄せつつ、甘くそれでいて低い声で答えてくれました。
「いや、普通だぞ。むしろ夜こそ夫婦の時間だろう? この間もがっついてしまったしな」
「もう、部下さん聞いてるよ?」
「そのようにダグラス隊長を縛り付けるのはやめたらどうですか!? ダグラス隊長が迷惑されてることに気付かないんですか!? ダグラスさんを解放してください!」
ふふ、かかった、ね。思ったより早かったかも。でもあれだなぁ、元々こう言う流れに持ち込みたかったとはいえ、実際に言われるとちょっとムカついちゃいます。ダグのことは自分の方がわかってる風に言われるのがすっごく嫌です。ぜーったい僕の方がダグのこと知ってるもん!
「俺がいつ迷惑していると言った? 勝手な憶測はやめてもらえるか」
「ダグラス隊長、貴方は自由になっていいんですよ! 僕ならダグラス隊長を縛り付けたりなんてしません!」
「俺は今までも自由にしてきたが? 俺の意思でユキと共にいるんだ。勝手な妄想と押し付けはやめろ」
「っ、神子様、まさか貴方はダグラス隊長を洗脳しているのではありませんか!?」
そうきたかぁ……ちょっとびっくりというかなんと言うか……いや、万が一の時のために解除方法を知っておくって意味で洗脳系の魔法ももちろん覚えてるけども。それを人に使使ったことも使う気もないんだけど……使う必要がそもそもないし。え? 邪神の舞曲? やだなぁ、確かにあれも洗脳系に入るっちゃ入るけどもあれは未遂だよ。本気で使うつもりもなかったもん。本当だよ?
「洗脳魔法など使ったことはありませんが」
「口ではどうとでも言えるでしょう!」
「それはそちらも同じでは? 証拠も何もないのに謂れのない疑いをかけないでいただきたいのですが」
僕は別にちゃんとした人にダグが洗脳されていないって証明してもらってもいいんだけどさ、そうなると大事になるわけで……パパッと牽制して終わらせたかった身としてはちょっとこの流れは嫌かなぁ。
「神子であるユキを相手にそのような発言をしたのだ、自分の発言に責任は持てるのだろうな?」
「っ、僕はダグラス隊長のためを思って……!」
「俺の為? お前自身のための間違いだろう。俺は望んでユキといる。俺とユキの今までの月日を知りもしないくせによくもそんなことを言えたものだな」
あれ、もしかしてダグ大分お怒りモード? 身長差ありすぎて気付けてなかったけどよく見たらダグ物凄くエミリオさんのこと睨んでるよ。……でもダグの気持ちはちょっとわかるかも。
僕がこの世界に来てから2年弱。決して長い期間ではないけれど、僕達にとっては短い期間でもない。ダグと出会って、沢山の嫌なこともあったけれど、全部2人で乗り越えてきたんだ。もちろんそれよりももっと多くの幸せなこともあったけれどね。たくさんのことで詰まった2人で生きてきた時間っていうのは僕達にとってはすっごく大事なんだ。その間にどんなことを思ってどんな風に生きてきたかなんて僕達自身しか知り得ないことで。それをまるで全て知っているかのように色々と言われるのはちょっとくるものがあるよね。
「入隊してから2ヶ月にも満たないお前が俺の何を知っているんだ?」
「ぼ、僕は……」
「はぁ……もういい、お前は今日をもって第1部隊から外す。部屋に戻って次の配属先が決まるまで待っていろ」
「なっ、何故ですか!? 僕は第1部隊にいるだけの力があると認められたのでしょう!? それなのに私情を挟んで外すのですか!?」
ええと、私情云々ってそれをエミリオさんが言うの? そもそもダグのは一応私情じゃないしね。エミリオさん物凄く大声出してたから周りで警護してくれてる騎士さんに普通に聞こえちゃってるしさ、僕、つまり神子への物言いに何もお咎めなしとはいかないんだよね。普通に砕けた口調とかなら別に何もなくていいんだけど、今回に限っては僕を根拠のない妄想で責め立てる内容だったからねぇ。身分社会のこの国じゃこれで何もなしは問題があるのです。
「勝手な私情を挟んでユキを侮辱したのはお前だろう。ユキは神子だ。神子相手にあらぬ疑いをかけたこと、そしてお前のユキを一方的に責め立てるような無礼な物言いも許せることではない。ユキが基本的に大事にすることは望まない性格だからクビにしないだけで、本来であればクビになるような案件だ。それどころかお前の実家にすら罰則が与えられるようなことだぞ」
「ぼ、僕はただ……」
「もういい。お前の顔など見たくもない。ユキ、行こう」
「うん」
本当はここまでは望んでいなかったけれど、仕方ない、かな? クビになるわけでもエミリオさんのお家に影響が出るわけでもないからそこまで重いものではないはずだし……
それからこじつけっぽくなっちゃうけど、騎士っていう職業にとって、憶測に囚われずにたくさんの方向から物事を冷静に考えることは基本。エミリオさんは思い込んで突っ走っちゃう人っぽいし今回のことは勉強料と思ってもらいましょう。
「ダグラス隊長! お疲れ様です!」
あ、早速来ましたよ……声は確かに騎士さん達にモテそうな可愛い感じ! 姿はまだ僕からは見れないけど!
「エミリオか。何か用か?」
「ダグラス隊長、今日はお休みですか? 僕も休みなんです。よければ一緒にお茶でも──」
「だぁれ、ダグ?」
ダグと一緒にお茶なんてさせませんよ!? つい我慢できずに飛び出しちゃいました。まぁいいや、タイミング悪いわけじゃないしね。
エミリオさんはたしかにこの世界基準だと華奢な方で、身長も平均は確実にないくらい。サラサラの淡い桃色の長い髪を高い位置でひとまとめにしていて、顔はぱっちりとした大きな目がチャームポイントかな? 服装は腰と脚の細さを強調させつつもすごくヒラヒラです。
歩いているのを見たら第1部隊に配属されている騎士だって絶対に気付かれない容姿だよ。でもたしかダグ情報によると見た目にそぐわない怪力ぶりで強烈な一撃を放ってくるんだったっけ。全然そんなふうには見えないなぁ。
「ああ、新入隊員のエミリオだ。俺の直属の部下だな。エミリオ、こっちは妻のユキヒトだ」
「新入隊員さん! 初めまして、妻のユキヒトです」
えへへ、一度言われてみたかった&言ってみたかったセリフです! いつもならダグを僕の伴侶として紹介するから、ダグに妻として紹介されて妻として自己紹介するシチュエーションってなかなかないんだよ。えへへ、夢が叶っちゃいました。喜んでる場合じゃないんだけども。
「え、あ、神子様、ですよね……?」
「一応そうなりますね」
「一応も何もユキは立派な神子だろう。俺にとっても自慢なんだぞ」
「ふふ、ありがと、ダグ。ダグがいてくれるから僕も頑張れるんだよ」
うっかりエミリオさんがいることも忘れて普段通りイチャイチャ。ダグが甘く微笑みながらおでこにキスしてくれるのをクスクスと笑って受け入れたりなんかして。通常運転です。
「し、失礼いたしました! 礼を欠いたご無礼をお許し下さい」
「構いませんよ。どうぞ楽にしてください」
勢いよく跪いたエミリオさんは立ち上がると顔は真っ青。でもちょっと憎々しげな視線を僕に送ってきてます。ちゃんと気付いてるんだからね!! 僕が気付いてるってことはダグも気付いてるんだから!
「あ、あの、無礼とは存じますがお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、構いませんよ」
「お2人は、いつもご一緒に……?」
ここで僕たちの仲の良さを見せられなかったらお茶に誘って話しているうちに……と思ったけど、ここで色々と話しながらアピールできそうな感じです。仲の良さを見せつけてやりましょう!
「はい、休日やダグの終業後はずっと一緒にいますよ。まぁダグは僕の護衛騎士長なのでお仕事中も基本的に側にいますけれど」
「ダグラス隊長は年中無休で働いているようなものなのですね」
つまり僕がダグを無理やり縛り付けて側にいさせてるって言いたいのかな? ダグは本当は嫌だけど僕の言うことを聞くしかなくて嫌々側にいると??
「お休みだからこそデートをするのですが、それは一体どう言うことでしょう? 僕はダグを無理矢理側に居させたりなんてしていませんが」
「ダグラス隊長はお優しいから神子様のお願いを無視なんてできないのでしょう。お仕事で疲れているダグラス隊長を終業後も縛りつけるなんて……」
「ダグ、夫婦が夜に一緒にいるのはこの世界ではおかしいの?」
本当に疑問に感じてる風にダグに聞けば腰に手を回して抱き寄せつつ、甘くそれでいて低い声で答えてくれました。
「いや、普通だぞ。むしろ夜こそ夫婦の時間だろう? この間もがっついてしまったしな」
「もう、部下さん聞いてるよ?」
「そのようにダグラス隊長を縛り付けるのはやめたらどうですか!? ダグラス隊長が迷惑されてることに気付かないんですか!? ダグラスさんを解放してください!」
ふふ、かかった、ね。思ったより早かったかも。でもあれだなぁ、元々こう言う流れに持ち込みたかったとはいえ、実際に言われるとちょっとムカついちゃいます。ダグのことは自分の方がわかってる風に言われるのがすっごく嫌です。ぜーったい僕の方がダグのこと知ってるもん!
「俺がいつ迷惑していると言った? 勝手な憶測はやめてもらえるか」
「ダグラス隊長、貴方は自由になっていいんですよ! 僕ならダグラス隊長を縛り付けたりなんてしません!」
「俺は今までも自由にしてきたが? 俺の意思でユキと共にいるんだ。勝手な妄想と押し付けはやめろ」
「っ、神子様、まさか貴方はダグラス隊長を洗脳しているのではありませんか!?」
そうきたかぁ……ちょっとびっくりというかなんと言うか……いや、万が一の時のために解除方法を知っておくって意味で洗脳系の魔法ももちろん覚えてるけども。それを人に使使ったことも使う気もないんだけど……使う必要がそもそもないし。え? 邪神の舞曲? やだなぁ、確かにあれも洗脳系に入るっちゃ入るけどもあれは未遂だよ。本気で使うつもりもなかったもん。本当だよ?
「洗脳魔法など使ったことはありませんが」
「口ではどうとでも言えるでしょう!」
「それはそちらも同じでは? 証拠も何もないのに謂れのない疑いをかけないでいただきたいのですが」
僕は別にちゃんとした人にダグが洗脳されていないって証明してもらってもいいんだけどさ、そうなると大事になるわけで……パパッと牽制して終わらせたかった身としてはちょっとこの流れは嫌かなぁ。
「神子であるユキを相手にそのような発言をしたのだ、自分の発言に責任は持てるのだろうな?」
「っ、僕はダグラス隊長のためを思って……!」
「俺の為? お前自身のための間違いだろう。俺は望んでユキといる。俺とユキの今までの月日を知りもしないくせによくもそんなことを言えたものだな」
あれ、もしかしてダグ大分お怒りモード? 身長差ありすぎて気付けてなかったけどよく見たらダグ物凄くエミリオさんのこと睨んでるよ。……でもダグの気持ちはちょっとわかるかも。
僕がこの世界に来てから2年弱。決して長い期間ではないけれど、僕達にとっては短い期間でもない。ダグと出会って、沢山の嫌なこともあったけれど、全部2人で乗り越えてきたんだ。もちろんそれよりももっと多くの幸せなこともあったけれどね。たくさんのことで詰まった2人で生きてきた時間っていうのは僕達にとってはすっごく大事なんだ。その間にどんなことを思ってどんな風に生きてきたかなんて僕達自身しか知り得ないことで。それをまるで全て知っているかのように色々と言われるのはちょっとくるものがあるよね。
「入隊してから2ヶ月にも満たないお前が俺の何を知っているんだ?」
「ぼ、僕は……」
「はぁ……もういい、お前は今日をもって第1部隊から外す。部屋に戻って次の配属先が決まるまで待っていろ」
「なっ、何故ですか!? 僕は第1部隊にいるだけの力があると認められたのでしょう!? それなのに私情を挟んで外すのですか!?」
ええと、私情云々ってそれをエミリオさんが言うの? そもそもダグのは一応私情じゃないしね。エミリオさん物凄く大声出してたから周りで警護してくれてる騎士さんに普通に聞こえちゃってるしさ、僕、つまり神子への物言いに何もお咎めなしとはいかないんだよね。普通に砕けた口調とかなら別に何もなくていいんだけど、今回に限っては僕を根拠のない妄想で責め立てる内容だったからねぇ。身分社会のこの国じゃこれで何もなしは問題があるのです。
「勝手な私情を挟んでユキを侮辱したのはお前だろう。ユキは神子だ。神子相手にあらぬ疑いをかけたこと、そしてお前のユキを一方的に責め立てるような無礼な物言いも許せることではない。ユキが基本的に大事にすることは望まない性格だからクビにしないだけで、本来であればクビになるような案件だ。それどころかお前の実家にすら罰則が与えられるようなことだぞ」
「ぼ、僕はただ……」
「もういい。お前の顔など見たくもない。ユキ、行こう」
「うん」
本当はここまでは望んでいなかったけれど、仕方ない、かな? クビになるわけでもエミリオさんのお家に影響が出るわけでもないからそこまで重いものではないはずだし……
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