うわさ話は恋の種

篠宮華

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第二十話 今とこれからの話②

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 これまでは恥ずかしくて、一緒にお風呂に入るなんて絶対に無理!と思っていたけれど、一度入ってしまえば触れ合う皮膚の感覚は気持ちがいいし、あったかい。
 でも、リラックスしてばかりもいられなかった。お互い裸でこんなに密着して、何か始まらないわけがない。
 お腹に回された手がいつの間にか胸に添えられる。一番敏感なところを避けてやわやわと形を確かめるように揉み上げられて、その緩い刺激に、逆にもっと欲しくなってしまう。
 体を捻って狭い湯船の中で向きを変えた。矢野くんと向かい合い、その伸ばした足に跨るように座って肩に手を添えると、お腹より上がお湯から上がる。私の方が視点が高くなって彼を見下ろすような体勢になった。
 どちらからともなく顔が近付いて、唇が重なる。追いかけるように舌を絡められて息が上がってきたところで、その唇は下に移動する。矢野くんは、私の胸の先端を口に含んでしゃぶるように舐め回しながら、もう片方の胸の先を摘んでくりくりと刺激してくる。
 腕で腰を引き寄せられて、秘所に矢野くんのものがぐっと押し付けられ、その甘い刺激に背中が沿った。

「んっ、あっ…」
「…気持ちよさそう。腰揺れてる」
「そ、なこと……やっ…んんっ…」

 矢野くんは私の顔を見上げて、にやりと笑う。

「…あ、そうだ。忘れてた」
「…な、に…?」
「……髪洗う?」

 この状況とタイミングで、「髪を洗いたい」と言う人間がもしもいたら、その理性に拍手を送りたい。熱を持て余した体が、刺激を求めて燻っているというのに。
 矢野くんは意地悪な笑みを浮かべながら、「俺はもう洗っちゃったんで」と私の足の間に手を入れ、私の体の中心を指で擦り始めた。お湯の中なのに、滑っているのが自分でもわかる。さすがに堪えきれなくなった声が、浴室に響いた。やっと触ってもらえた悦びに、体が歓喜しているのがわかる。それなのに。

「ん、やっ…あぁっ…!」
「…どうします?奥さんの希望を聞きたいなあ。髪洗うか、これ続けるか」

 その質問の答えなんて聞かなくたってわかっているはずなのに。でも。
『奥さん』
 矢野くんはからかうように言ったけれど、それは私の耳に何だか特別に響いた。言葉が素直に溢れる。

「…も、っと、触って……っ」
「…どこを?」

 口の端を上げて、愉快そうに尋ねてくるその瞳は、欲情でぎらぎらしている。
 矢野くんだって、したいに決まってるのに、私ばかりが欲しがっているように見えるのが何だか悔しくて。
 足の間にある骨張った手を掴んで、自分からその手を秘所に押し当てた。

「ここ…の、おく……はやく、さわって、ほし…っ」
「……ほんっとにもう…!!」

 矢野くんが怒ったように私を抱き抱えて立ち上がり、私の足を浴槽の縁にかけてから、中に指を突き立てた。
 奥を刺激され、すぐにぐちゅぐちゅと卑猥な音が浴室に響き始める。

「やっ、そこ、だめ……っ!!」
「…触ってって言ったの美緒さんでしょ。ここ、好きなとこですもんね」
「すき、だけど、すぐイっ……っあ、あああっ!!」

 私の弱いところを何度も何度も攻め立てるように擦られて、あっという間に達してしまった。滑ると危ないからと湯船から出るように促される。
 大きな快感の余韻で体がびくびくして、お腹の奥が早く欲しいと疼いている。
 なのに、矢野くんは突然、何かを思い出したように「ちょっと待ってもらっていいですか」などと言う。

「な、んで…?」
「…ゴム、持ってくるの忘れました」

 一緒にお風呂に入ったらこうなることは予想出来たけれど、避妊具の用意までは考えが至らなかった。「あっちにあるから、10秒でとってきます」と言われたけれど。

「…いい」
「ん?」
「つけないで、いい」
「え……」
「時期的に平気だと思うし……何より、」

――夫婦になるんだし。
 
 本当はちゃんと家族計画をした方がいいのだと思う。100%の安全日などないのも知っている。でも、この人となら、もう何があっても大丈夫だと思えたから。
 暗い浴室で、何秒間かの沈黙の後、矢野くんは私の肩にそっと手を置く。俯いてから、大きく息を吐いた。
 ちょっと浅はかな発言をしてしまったかなと、その顔を覗き込むと、腕を引っ張られて、潰れてしまいそうなほど強く抱き締められた。

「く、くるし…」

 私が背中をとんとんと叩くと、矢野くんは少しその拘束を緩めてから額を合わせて、呻くようにぼそりと言った。

「もしそうなったら俺じゃなくて……」
「ん?」
「……男でも女でも美緒さんに似てほしい」

 その切実そうな様子と急に飛躍した発想に、思わず笑うと「いや、本気でそう思ってます」と大真面目に言われて、たまらない気持ちになってその頬にちゅっと触れるだけのキスをした。
――いつか。

 矢野くんは、私の唇を指先でなぞってから、内緒話をするように言った。

「じゃあ…このまま続き、してもいいですか?」



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