6 / 8
むつごと
しおりを挟む
『ごめん、遅くなりそう』
メッセージアプリにそんな連絡が来たのはもう外がかなり暗くなっていた頃だった。
今日、圭一さんの所属している研究室の飲み会があるとは前々から聞いていた。元々あまりお酒に強くない人なので、飲み会もあまり好きではないと常々言っているのだけれど、年に何度かはどうしても参加しなくてはならないときがあるという。私としては、ちゃんと顔を出した方がいいのでは…と思っているので、特に引っかかるところもないのだけれど、圭一さんは何だかすごく申し訳なさそうにするので、とりあえず返信をする。
「大丈夫です、気をつけて帰ってきてくださいね…と」
本当は今すぐにでも帰りたいとか思っていそうだなあと思いながらメッセージを送ると、すぐに既読になる。
「僕が奥さんのことが大好きなことは周知の事実だから」なんて得意気にしていたけれど、飲み会の時にスマホばかり見てちゃダメですよと伝えなくてはいけない。
私はというと、今日はたまたま早番だったため、いつもよりも早く帰宅していた。おまけに明日は休みだ。
圭一さんがいないのなら量もそんなに必要ないと思い、作り置きの惣菜で適当に夕飯を済ませたところだった。一人だとなんだか味気なかったけれど、圭一さんが出張でいないときもあるわけだし、もちろん初めてのことではなかったから、それはそれ、これはこれと気持ちを切り替える。
それから、浴室にタンブラーや防水ケースに入れたスマホを持ち込んで、のぼせてしまいそうなほどゆっくりお風呂に入った。一人の夜も、それはそれで楽しめるものなのだ。
しかし、髪を乾かしたり丁寧にスキンケアをしたりしながら、ふとあたりを見回すと部屋の中がやけに広く感じられる。
結婚してから、私が圭一さんの部屋に転がり込むような形で夫婦生活が始まったけれど、結構広い3LDKのマンションなので、さほど窮屈な感じもなかった。その分一人になるとなんだかちょっとだけ心細い。
テレビの音がやかましいけれど、見たくてつけているわけではなかったため、なんだか手持ち無沙汰で。
時計を見ると、いつの間にか夜の10時を回ろうとしているところだった。
「寝ようかな…」
朝が早かったことに加えて、話し相手がいないせいか、だんだん眠くなってきてしまう。
私は大きな欠伸をひとつして、寝室に向かうことにした。
*
……。
寝室のドアが開いた音に、意識が緩やかに覚醒しかける。部屋は薄暗いままだけれど、圭一さんの声が聞こえる。誰かと電話でもしているのだろうか。こんな夜遅くに大変だなあなんて思っていたその時だった。
「…僕の奥さんは可愛いなあ」
……!?
誰かと話しているのかと思っていたけれど、どうやら独り言のようだと気付いたのはその内容から。
ベッドが軋んだ音と共に近付いてきた気配に、「おかえりなさい」と声を掛けるタイミングを逃してしまう。横向きで寝ていた私のお腹の辺りに腕が絡められて、背後からゆるゆると抱き寄せられる。ほんの少しだけお酒臭い。
「帰ってきたらこんなに可愛い人が家にいるなんて…奇跡だ…」
うっとりとそんなことを言う声に驚いて、完全に目が覚めているのに体が固まる。初めて目の当たりにする彼の様子に戸惑いながらも、寝ぼけているのかもしれないと思い、とりあえず後ろから抱き締められたまま様子を伺うことにする。
すると、後頭部にすりすりと頬擦りをされた。それから、「いつもどうしてこんなにいい匂いがするんだろう」という声。髪に鼻先を埋められたような感触と、直後にすぅーっと息を吸い込むような呼吸音。
これはもしや、嗅がれている…?
許容量を超えるまで飲んで泥酔してしまうということはなさそうだけれど、もしかしてお風呂にでも入ってお酒が回ってしまったのだろうか。
「愛してる…僕の奥さん…」
耳元で囁くようにそんなことを言われて、さすがにきゅんとする。
圭一さんが全力でデレている…!
日頃から割ときちんと愛を伝えてくれるタイプだとは思っているけれど、ここまでぐいぐいくることはあまりないので、なんだかドキドキして、もうこれ以上スルーするのは不可能だった。
ベッドに横になったまま、くるりと彼の正面に向き直って、その顔を見上げながら頬に手を添える。
「…私も愛してます」
すると圭一さんは、一瞬驚いたような表情になってから、すぐに「なんだ、起きてたの?」と溶けるような笑みを浮かべた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
触れ合うだけのキスを受け止めると、頭を撫でられた。「ちゃんとシャワー浴びたよ」と圭一さんはとってもご機嫌だ。
「楽しかったですか?飲み会」
「まあ、楽しかったよ。でも彩花のことばっかり考えてた」
「もう、またそうやって…」
「飲み屋に行ってもさ、美味しいものがあれば彩花と一緒に食べたいと思うし、好きそうなデザートがあれば彩花に今度食べさせてあげたいなあと思うし」
「食べ物の話ばっかりじゃないですか」
くすくす笑うと、「でも、大事なことでしょう」と、また ちゅっと唇を重ねられる。
「僕は、彩花といつまでも仲良く、幸せに生きていきたいなあと思っているからね」
食べることを疎かにしがちな圭一さんに、私が事あるごとに食事の重要性を説いているのが染み付いているのだろうか。しかしどこか得意げなその様子はなんだか可愛くて。
笑いながら「そうですね」と頷くと、圭一さんは満足そうに微笑み、肘をつきながら少しだけ体を起こして、私を見下ろした。それから私の太腿をパジャマの上からするりと撫でてくる。内股に手を這わされて、体の奥に何かが灯るような気がして思わず尋ねた。
「…するの?」
「…だめ?」
「…だめじゃ、ない」
……だめなわけない。
いつだって触れたい。
出会って、付き合って、夫婦になって。
思い返すと、付き合っている間は一度も衝突することがなかった。だからこそ、一つ屋根の下に暮らすようになったからには、そのうちに夫婦喧嘩のひとつやふたつするだろうと思っていたけれどやはりそれもなく。凪いでいるのか、はたまた緩んでいるのか、毎日驚くほど穏やかで健やかで。
彼が、私が想像するより何倍も私のことを好きでいてくれているのだと、時々、その愛情の大きさに戸惑うことはあるけれど、とりあえずちゃんと、大好きなままなのだった。
視線に想いを込めるようにその瞳を近くで覗き込むと、その意味を正しく受け止めてくれた彼に「可愛い」と唇を重ねられ、ねっとりと舌を絡められた。
「ん…ふ…」
「脱がせるよ」
圭一さんはキスをしながら、私のパジャマのボタンを器用に一つ一つ外していく。
キャミソールをたくし上げ、ナイトブラをずり上げられたかと思ったら、乳首の周りをすりすりと親指の腹でさすられる。敏感なところをわざと避けるように愛撫されて、私は脚をもじもじと擦り合わせた。
「ねぇ、くすぐったい…」
「…どうしてほしい?」
円を描くようにそこに触れながら、まるで動物が狙いを定めるように私の顔をじっと見つめてくる。彼に何度も抱かれてきた、我ながらわかりやすく従順な体だ。お腹の奥がずくんと反応するような気がした。
「ちゃんと、触ってほし…い」
「なるほど……こう?」
圭一さんは指の先で私の胸の先端をくりくりと捏ねるように摘んだ。
「あっ…んぅ…!」
「でも、彩花は舐められるのも好きだよね」
「んん…ぁ…」
しゃぶるようにそこを舐められて、漏れそうになる自分の声を抑えるために口を両手で覆う。防音はしっかりしているけれど、自分の甘ったるい喘ぎ声は 恥ずかしいのでできれば聞きたくない。すると、楽しそうに笑ったような気配の直後、何気なく足の間に這わされていた大きな掌がパジャマのズボンの中に入り込んだ。「触るね」という短い言葉の後に、ショーツのクロッチの横から太い指が中に差し込まれる。
「ん、んぅ…!」
「…ぬるぬるだ。彩花はいつもすぐに気持ちよくなれてえらいね」
「や、そんなこと、わざわざ、言わないで…」
「でも、もう指が奥まで入っちゃいそうだよ。ほら」
体の中心をゆっくりと割り広げるように挿入された指が、私の体から出たり入ったりする。既にそこは恥ずかしくなるほどぐっしょり濡れていて、早く埋めてほしいと水音を立て始めていた。
横になったままの私の足から、慣れたようにするするとパジャマとショーツを抜き取り、少し下へ移動した圭一さんは私の膝に手をかけて大きく開かせた。
「や…っ!」
「舐めさせて」
「それ…ん、あ…っ!」
急に空気にさらされた秘所へ顔を埋めた彼は、当然のようにそこに舌を這わせる。反射的に足を閉じそうになると、「だめだよ」とそれを止められた。
「ちゃんと足開いてて」
「や、ん…でも…っ!」
「彩花の好きなところでしょ」
「い、ぁ、んん、はずかし…っ…まってぇ…」
「待たない」
圭一さんは、はじめは様子を伺うようにちろちろと舐めていたけれど、善がる私の様子を観察して問題ないと判断したのか、粘液をかき混ぜるように中に指を突き立てながら、むしゃぶりつくようにそこを舐め始めた。蜜口の上の尖りを舌で細かくゆするように舐められて、体を捩る。
「ん、んあ、や、やだ、だめ…!!」
「痛い?」
「それ、あ…ん、イっちゃう、から、あ、あ…!」
じわじわと昇り詰めていくような感覚に身を捩ると、「イかせようとしてるんだよ」と、圭一さんはにやりと笑ってから、充血して膨らんだそこを吸い上げた。
「ひゃぁぁぁんっ!」
跳ねそうになる腰がうまく快感を逃がせなくてびくびくと痙攣する。それなのに圭一さんは「両方一緒に弄られるの好きだもんね」と中に入れた指をぐちゅぐちゅと出し入れし続けるから、達したばかりの体に与えられるには明らかに大きすぎる刺激に、嬌声が止められなくなる。手首を返すように内壁のお臍側をぐりぐりされて、何かが溢れそうな感覚に陥る。
「あ、やん…!い、今、イってるからっ…止まっ、て…!!」
「…今日結構飲んだから勃たなかったらどうしようかなと思ってたけど、彩花のこと見てたら全然…むしろ興奮で勃ち過ぎて痛いくらいだ」
「あぅ、や、またイっちゃう、やだやだ、お願い、ん、あ、ああ…っ!」
「イっていいよ」
私の懇願など歯牙にもかけず、圭一さんは「僕の顔見ながらイって」などとこちらをじっと見つめる。その視線にまるで視姦されているようで。
…圭一さん、何かスイッチが入ってしまっている。
でも、嫌じゃない。むしろドキドキしてしまっている自分に、内心苦笑いする。
「だめ、だからぁ…っ!」
「何が?」
「私、ばっかり、き、きもち、よくて…」
「…僕のことも気持ちよくしてくれるの?」
「する、するからぁ…っ」
すると、ようやく動きを止めてくれた圭一さんは体を起こす。ベッドに長い足を伸ばし、ヘッドボードに寄りかかりながら座った。私は何度か達したせいでぐったりした体でよろよろと起き上がる。お臍につきそうなほど立ち上がっている圭一さんのものに手を添えてそっと上下に擦ると、それはぴくりと震えた。
「…無理しなくていいんだよ?」
さっきまで余裕そうだったのに、急にそんなことを言うから、逆に「してないです。私がしたいからするの」と言い返す。
それにしても、これが本当に自分の中に入っているのか?と、いつものことながらその大きさに不思議な気持ちになる。私は圭一さんしか知らないけれど、こういう行為のときはいつもちゃんと気持ちよくて、友人からよく聞いた「痛いのに無理矢理」とか「むこうばかり気持ちよくなってる」とかいうことはあまり感じたことがなかった。
だからこそ、自分も少しは積極的にならなくてはといつも思う。
…それに、散々好きにされたからちょっとやり返したいみたいな。
くびれているところに舌を這わせる。唾液をまぶすように口を窄めて先端を咥えながら、頭をゆっくり上下に動かす。少し苦いけど、いい。手で扱きながら、裏筋も舐め上げた。
顔にかかった髪を避けるように耳にかけられたので、咥えたまま上目遣いで彼を見上げると、「たまらないな…」と頬を指の背で撫でられる。それだけで、自分まで濡れてくるような気すらする。
どうすると気持ちいいのかは、これまで幾度となく体を重ねる中で圭一さんに少しずつ教えてもらった。彼のこんな姿を見られるのは私だけだ。小さな優越感を感じながらまた彼のものを口で扱いていると、「もういいから」と抱き上げられた。
「気持ち、よかったですか…?」
「…よすぎてイきそうだった」
…それならよかった、と微笑むと、ベッドにやや乱暴に押し倒された。吐息まで飲み込んでしまうような深いキス。さっきまで一生懸命自分が舐めしゃぶっていたものが、割れ目を前後に行ったり来たりする。
「あ、んぅ…」
「挿れるよ」
小さく頷いて腕を首裏に回すと、内壁を破り広げるように圭一さんが挿入ってくる。さっき何度か達していたこともあり、待ち焦がれた刺激に背中が仰け反った。
…満たされている。
脚をその逞しい腰に回すように絡めると、それを合図に律動が始まる。
「あ、きもち、い…あん…!」
「…彩花をこんなにいやらしくしたのは誰なんだろう」
「ん、そん、なの…圭一さん、以外に、いない…んっ!」
私の必死の返事に、圭一さんは満足そうに口の端を上げる。ぎりぎりまで引き抜かれたかと思うと、またずぶずぶと奥まで貫かれる。ぞわぞわと背中を這い上がってくるような快感に震えながら、唾液を混ぜ合わせるように舌を絡ませた。
「また、イ…っ…!あ、ん…っ」
「…僕もそろそろイきそう」
がつがつと奥を抉るように突かれて、彼の体にしがみつく。舌で咥内をかき回され、口の端から涎が垂れていきそうなほどの口づけを受け止めながら、腰を揺さぶられて。
「ん、あ、いい…っ!あ、だめ、もう…っ!!」
「…世界一可愛い、僕の奥さん」
そんな言葉を耳の奥に流し込まれながら、私は快感の波に放り出されたのだった。
メッセージアプリにそんな連絡が来たのはもう外がかなり暗くなっていた頃だった。
今日、圭一さんの所属している研究室の飲み会があるとは前々から聞いていた。元々あまりお酒に強くない人なので、飲み会もあまり好きではないと常々言っているのだけれど、年に何度かはどうしても参加しなくてはならないときがあるという。私としては、ちゃんと顔を出した方がいいのでは…と思っているので、特に引っかかるところもないのだけれど、圭一さんは何だかすごく申し訳なさそうにするので、とりあえず返信をする。
「大丈夫です、気をつけて帰ってきてくださいね…と」
本当は今すぐにでも帰りたいとか思っていそうだなあと思いながらメッセージを送ると、すぐに既読になる。
「僕が奥さんのことが大好きなことは周知の事実だから」なんて得意気にしていたけれど、飲み会の時にスマホばかり見てちゃダメですよと伝えなくてはいけない。
私はというと、今日はたまたま早番だったため、いつもよりも早く帰宅していた。おまけに明日は休みだ。
圭一さんがいないのなら量もそんなに必要ないと思い、作り置きの惣菜で適当に夕飯を済ませたところだった。一人だとなんだか味気なかったけれど、圭一さんが出張でいないときもあるわけだし、もちろん初めてのことではなかったから、それはそれ、これはこれと気持ちを切り替える。
それから、浴室にタンブラーや防水ケースに入れたスマホを持ち込んで、のぼせてしまいそうなほどゆっくりお風呂に入った。一人の夜も、それはそれで楽しめるものなのだ。
しかし、髪を乾かしたり丁寧にスキンケアをしたりしながら、ふとあたりを見回すと部屋の中がやけに広く感じられる。
結婚してから、私が圭一さんの部屋に転がり込むような形で夫婦生活が始まったけれど、結構広い3LDKのマンションなので、さほど窮屈な感じもなかった。その分一人になるとなんだかちょっとだけ心細い。
テレビの音がやかましいけれど、見たくてつけているわけではなかったため、なんだか手持ち無沙汰で。
時計を見ると、いつの間にか夜の10時を回ろうとしているところだった。
「寝ようかな…」
朝が早かったことに加えて、話し相手がいないせいか、だんだん眠くなってきてしまう。
私は大きな欠伸をひとつして、寝室に向かうことにした。
*
……。
寝室のドアが開いた音に、意識が緩やかに覚醒しかける。部屋は薄暗いままだけれど、圭一さんの声が聞こえる。誰かと電話でもしているのだろうか。こんな夜遅くに大変だなあなんて思っていたその時だった。
「…僕の奥さんは可愛いなあ」
……!?
誰かと話しているのかと思っていたけれど、どうやら独り言のようだと気付いたのはその内容から。
ベッドが軋んだ音と共に近付いてきた気配に、「おかえりなさい」と声を掛けるタイミングを逃してしまう。横向きで寝ていた私のお腹の辺りに腕が絡められて、背後からゆるゆると抱き寄せられる。ほんの少しだけお酒臭い。
「帰ってきたらこんなに可愛い人が家にいるなんて…奇跡だ…」
うっとりとそんなことを言う声に驚いて、完全に目が覚めているのに体が固まる。初めて目の当たりにする彼の様子に戸惑いながらも、寝ぼけているのかもしれないと思い、とりあえず後ろから抱き締められたまま様子を伺うことにする。
すると、後頭部にすりすりと頬擦りをされた。それから、「いつもどうしてこんなにいい匂いがするんだろう」という声。髪に鼻先を埋められたような感触と、直後にすぅーっと息を吸い込むような呼吸音。
これはもしや、嗅がれている…?
許容量を超えるまで飲んで泥酔してしまうということはなさそうだけれど、もしかしてお風呂にでも入ってお酒が回ってしまったのだろうか。
「愛してる…僕の奥さん…」
耳元で囁くようにそんなことを言われて、さすがにきゅんとする。
圭一さんが全力でデレている…!
日頃から割ときちんと愛を伝えてくれるタイプだとは思っているけれど、ここまでぐいぐいくることはあまりないので、なんだかドキドキして、もうこれ以上スルーするのは不可能だった。
ベッドに横になったまま、くるりと彼の正面に向き直って、その顔を見上げながら頬に手を添える。
「…私も愛してます」
すると圭一さんは、一瞬驚いたような表情になってから、すぐに「なんだ、起きてたの?」と溶けるような笑みを浮かべた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
触れ合うだけのキスを受け止めると、頭を撫でられた。「ちゃんとシャワー浴びたよ」と圭一さんはとってもご機嫌だ。
「楽しかったですか?飲み会」
「まあ、楽しかったよ。でも彩花のことばっかり考えてた」
「もう、またそうやって…」
「飲み屋に行ってもさ、美味しいものがあれば彩花と一緒に食べたいと思うし、好きそうなデザートがあれば彩花に今度食べさせてあげたいなあと思うし」
「食べ物の話ばっかりじゃないですか」
くすくす笑うと、「でも、大事なことでしょう」と、また ちゅっと唇を重ねられる。
「僕は、彩花といつまでも仲良く、幸せに生きていきたいなあと思っているからね」
食べることを疎かにしがちな圭一さんに、私が事あるごとに食事の重要性を説いているのが染み付いているのだろうか。しかしどこか得意げなその様子はなんだか可愛くて。
笑いながら「そうですね」と頷くと、圭一さんは満足そうに微笑み、肘をつきながら少しだけ体を起こして、私を見下ろした。それから私の太腿をパジャマの上からするりと撫でてくる。内股に手を這わされて、体の奥に何かが灯るような気がして思わず尋ねた。
「…するの?」
「…だめ?」
「…だめじゃ、ない」
……だめなわけない。
いつだって触れたい。
出会って、付き合って、夫婦になって。
思い返すと、付き合っている間は一度も衝突することがなかった。だからこそ、一つ屋根の下に暮らすようになったからには、そのうちに夫婦喧嘩のひとつやふたつするだろうと思っていたけれどやはりそれもなく。凪いでいるのか、はたまた緩んでいるのか、毎日驚くほど穏やかで健やかで。
彼が、私が想像するより何倍も私のことを好きでいてくれているのだと、時々、その愛情の大きさに戸惑うことはあるけれど、とりあえずちゃんと、大好きなままなのだった。
視線に想いを込めるようにその瞳を近くで覗き込むと、その意味を正しく受け止めてくれた彼に「可愛い」と唇を重ねられ、ねっとりと舌を絡められた。
「ん…ふ…」
「脱がせるよ」
圭一さんはキスをしながら、私のパジャマのボタンを器用に一つ一つ外していく。
キャミソールをたくし上げ、ナイトブラをずり上げられたかと思ったら、乳首の周りをすりすりと親指の腹でさすられる。敏感なところをわざと避けるように愛撫されて、私は脚をもじもじと擦り合わせた。
「ねぇ、くすぐったい…」
「…どうしてほしい?」
円を描くようにそこに触れながら、まるで動物が狙いを定めるように私の顔をじっと見つめてくる。彼に何度も抱かれてきた、我ながらわかりやすく従順な体だ。お腹の奥がずくんと反応するような気がした。
「ちゃんと、触ってほし…い」
「なるほど……こう?」
圭一さんは指の先で私の胸の先端をくりくりと捏ねるように摘んだ。
「あっ…んぅ…!」
「でも、彩花は舐められるのも好きだよね」
「んん…ぁ…」
しゃぶるようにそこを舐められて、漏れそうになる自分の声を抑えるために口を両手で覆う。防音はしっかりしているけれど、自分の甘ったるい喘ぎ声は 恥ずかしいのでできれば聞きたくない。すると、楽しそうに笑ったような気配の直後、何気なく足の間に這わされていた大きな掌がパジャマのズボンの中に入り込んだ。「触るね」という短い言葉の後に、ショーツのクロッチの横から太い指が中に差し込まれる。
「ん、んぅ…!」
「…ぬるぬるだ。彩花はいつもすぐに気持ちよくなれてえらいね」
「や、そんなこと、わざわざ、言わないで…」
「でも、もう指が奥まで入っちゃいそうだよ。ほら」
体の中心をゆっくりと割り広げるように挿入された指が、私の体から出たり入ったりする。既にそこは恥ずかしくなるほどぐっしょり濡れていて、早く埋めてほしいと水音を立て始めていた。
横になったままの私の足から、慣れたようにするするとパジャマとショーツを抜き取り、少し下へ移動した圭一さんは私の膝に手をかけて大きく開かせた。
「や…っ!」
「舐めさせて」
「それ…ん、あ…っ!」
急に空気にさらされた秘所へ顔を埋めた彼は、当然のようにそこに舌を這わせる。反射的に足を閉じそうになると、「だめだよ」とそれを止められた。
「ちゃんと足開いてて」
「や、ん…でも…っ!」
「彩花の好きなところでしょ」
「い、ぁ、んん、はずかし…っ…まってぇ…」
「待たない」
圭一さんは、はじめは様子を伺うようにちろちろと舐めていたけれど、善がる私の様子を観察して問題ないと判断したのか、粘液をかき混ぜるように中に指を突き立てながら、むしゃぶりつくようにそこを舐め始めた。蜜口の上の尖りを舌で細かくゆするように舐められて、体を捩る。
「ん、んあ、や、やだ、だめ…!!」
「痛い?」
「それ、あ…ん、イっちゃう、から、あ、あ…!」
じわじわと昇り詰めていくような感覚に身を捩ると、「イかせようとしてるんだよ」と、圭一さんはにやりと笑ってから、充血して膨らんだそこを吸い上げた。
「ひゃぁぁぁんっ!」
跳ねそうになる腰がうまく快感を逃がせなくてびくびくと痙攣する。それなのに圭一さんは「両方一緒に弄られるの好きだもんね」と中に入れた指をぐちゅぐちゅと出し入れし続けるから、達したばかりの体に与えられるには明らかに大きすぎる刺激に、嬌声が止められなくなる。手首を返すように内壁のお臍側をぐりぐりされて、何かが溢れそうな感覚に陥る。
「あ、やん…!い、今、イってるからっ…止まっ、て…!!」
「…今日結構飲んだから勃たなかったらどうしようかなと思ってたけど、彩花のこと見てたら全然…むしろ興奮で勃ち過ぎて痛いくらいだ」
「あぅ、や、またイっちゃう、やだやだ、お願い、ん、あ、ああ…っ!」
「イっていいよ」
私の懇願など歯牙にもかけず、圭一さんは「僕の顔見ながらイって」などとこちらをじっと見つめる。その視線にまるで視姦されているようで。
…圭一さん、何かスイッチが入ってしまっている。
でも、嫌じゃない。むしろドキドキしてしまっている自分に、内心苦笑いする。
「だめ、だからぁ…っ!」
「何が?」
「私、ばっかり、き、きもち、よくて…」
「…僕のことも気持ちよくしてくれるの?」
「する、するからぁ…っ」
すると、ようやく動きを止めてくれた圭一さんは体を起こす。ベッドに長い足を伸ばし、ヘッドボードに寄りかかりながら座った。私は何度か達したせいでぐったりした体でよろよろと起き上がる。お臍につきそうなほど立ち上がっている圭一さんのものに手を添えてそっと上下に擦ると、それはぴくりと震えた。
「…無理しなくていいんだよ?」
さっきまで余裕そうだったのに、急にそんなことを言うから、逆に「してないです。私がしたいからするの」と言い返す。
それにしても、これが本当に自分の中に入っているのか?と、いつものことながらその大きさに不思議な気持ちになる。私は圭一さんしか知らないけれど、こういう行為のときはいつもちゃんと気持ちよくて、友人からよく聞いた「痛いのに無理矢理」とか「むこうばかり気持ちよくなってる」とかいうことはあまり感じたことがなかった。
だからこそ、自分も少しは積極的にならなくてはといつも思う。
…それに、散々好きにされたからちょっとやり返したいみたいな。
くびれているところに舌を這わせる。唾液をまぶすように口を窄めて先端を咥えながら、頭をゆっくり上下に動かす。少し苦いけど、いい。手で扱きながら、裏筋も舐め上げた。
顔にかかった髪を避けるように耳にかけられたので、咥えたまま上目遣いで彼を見上げると、「たまらないな…」と頬を指の背で撫でられる。それだけで、自分まで濡れてくるような気すらする。
どうすると気持ちいいのかは、これまで幾度となく体を重ねる中で圭一さんに少しずつ教えてもらった。彼のこんな姿を見られるのは私だけだ。小さな優越感を感じながらまた彼のものを口で扱いていると、「もういいから」と抱き上げられた。
「気持ち、よかったですか…?」
「…よすぎてイきそうだった」
…それならよかった、と微笑むと、ベッドにやや乱暴に押し倒された。吐息まで飲み込んでしまうような深いキス。さっきまで一生懸命自分が舐めしゃぶっていたものが、割れ目を前後に行ったり来たりする。
「あ、んぅ…」
「挿れるよ」
小さく頷いて腕を首裏に回すと、内壁を破り広げるように圭一さんが挿入ってくる。さっき何度か達していたこともあり、待ち焦がれた刺激に背中が仰け反った。
…満たされている。
脚をその逞しい腰に回すように絡めると、それを合図に律動が始まる。
「あ、きもち、い…あん…!」
「…彩花をこんなにいやらしくしたのは誰なんだろう」
「ん、そん、なの…圭一さん、以外に、いない…んっ!」
私の必死の返事に、圭一さんは満足そうに口の端を上げる。ぎりぎりまで引き抜かれたかと思うと、またずぶずぶと奥まで貫かれる。ぞわぞわと背中を這い上がってくるような快感に震えながら、唾液を混ぜ合わせるように舌を絡ませた。
「また、イ…っ…!あ、ん…っ」
「…僕もそろそろイきそう」
がつがつと奥を抉るように突かれて、彼の体にしがみつく。舌で咥内をかき回され、口の端から涎が垂れていきそうなほどの口づけを受け止めながら、腰を揺さぶられて。
「ん、あ、いい…っ!あ、だめ、もう…っ!!」
「…世界一可愛い、僕の奥さん」
そんな言葉を耳の奥に流し込まれながら、私は快感の波に放り出されたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
隣で眠るなら
篠宮華
恋愛
上原咲(うえはらさき)と及川千晃(おいかわちあき)は、高校の同窓会の後、二人で打ち上げをしていた…はずだったのだが。
『朝起きて、隣にお前がいなかったときの俺の気持ち考えろよ』
幼馴染みの二人がそういうことになるまでの話。
※本編完結しました。
ちゃんとしたい私たち
篠宮華
恋愛
小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染み同士の若菜と宏隆。付かず離れずの距離で仲良く過ごしてきた二人だったが、あることをきっかけにその関係は大きく変化して…
恋愛にあまり興味のなかった女子と、一途な溺愛系幼馴染み男子のお話。
※ひとまず完結しました。今後は不定期に更新していく予定です。
彼と私と甘い月
藤谷藍
恋愛
白河花蓮は26歳のOL。いつも通りの出勤のはずが駅で偶然、橘俊幸、31歳、弁護士に助けられたことからお互い一目惚れ。優しいけれど強引な彼の誘いに花蓮は彼の家でバイトを始めることになる。バイトの上司は花蓮の超好みの独身男性、勤務先は彼の家、こんな好条件な副業は滅多にない。気になる彼と一緒に一つ屋根の下で過ごす、彼と花蓮の甘い日々が始まる。偶然が必然になり急速に近づく二人の距離はもう誰にも止められない?
二人の糖度200%いちゃつきぶりを、こんな偶然あるわけないと突っ込みながら(小説ならではの非日常の世界を)お楽しみ下さい。この作品はムーンライトノベルズにも掲載された作品です。
番外編「彼と私と甘い月 番外編 ーその後の二人の甘い日々ー」も別掲載しました。あわせてお楽しみください。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる