インフル病みの壱郎さん

悪魔ベリアル

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身を引きずるようにして、壱郎は自宅の玄関ドアまで辿り着いた。
積み上がった不安定なジェンガみたく、脳みそがグラグラと揺れている。
そのせいで、酩酊している様に壱郎の意識や思考が定まらない。

「…か、鍵…、えっと、どこやった…っ??」

服のポケットを探り、自宅の鍵を探す。
鍵束を取り出して自宅の鍵を使い、拙い動きで開錠する。
玄関ドアを静かに開け、手探りで室内灯のスイッチへ手を伸ばす。

「おっと、いけない…。」
「明りなんて点けたら、ヒヨリ達を起してしまうかも知れないな…。」

壱郎は鍵をしまうと、代わりにスマホを取り出す。
スマホ内臓のLEDライトを灯し、スマホをかざして真っ暗な室内を進んだ。
LEDの灯りが拡散しない様に注意して、リビングのドアを開ける。
そして、ドアの隙間からリビング内を覗き見した。

人の雰囲気が無い事を確認してから、LEDライトをリビング内へ向ける。
探索系のゲームみたいに、ぽっかりと白い光がテーブルの上を照らす。

「まったく…、片付けろよぉ…。」
するりっとドアの隙間からリビングへ入り込み、壱郎は室内の惨状を見て溜息を吐いた。

食べ散らかした総菜やテイクアウトの容器。
ワインの瓶と、飲み残した酒が入ったままのグラス。
何本も置かれた缶ビールが、LEDの光を反射して金属光沢を放つ。

「盛大に楽しんでたみたいだなぁ~…。」
「当人たちは寝室か…?」

リビングの様子を見ると、ちょっとしたパーティーの後に感じる。
ソファにヒヨリが着ていた上着が放置されていた。
代わりにソファに置いてあるクッションが、床に転がっている。

「二人で、仲良くTVでも見ていたのか…?」
「あれは…、ストッキング…?」

ソファの近くに放置されたストッキングを摘まみ上げる。
更にその近くには、白いブラウスシャツが落ちている。

「…んっ?」
「これは…、ヒヨリのシャツか?」

LEDライトの光を反射して、白く輝くブラウスシャツを壱郎はマジマジと見つめる。
だが、それがヒヨリの服か彼には解らなかった。
友達と酒盛りして泥酔したとして、こんな場所に脱ぎ捨てていくだろうか?

「ふむ…、不自然だなぁ~…っ」

ブラウスシャツを投げ捨て、壱郎は立ち上がる。
自分の頭をカッカと熱くさせるのが、病の熱のせいなのか、
ヒヨリの浮気を確信した怒りなのか、壱郎には解らなかった。
頭から噴き出した熱が全身を火照らせ、病による倦怠感や虚脱感を散らす。

「くそっ、くそっ!くそっ!!」

小声で呟き、テーブルの方へ戻る。
そして、壱郎はそこに置かれたワインの瓶を取り上げた。
空のグラスを見つけ、持っていた瓶から中身をグラスへ注ぐ。
そして、瓶をテーブルへ置き、入れ替わりにグラスを取り、一気に中身を飲み干した。
果樹感のあるワインの薫りと喉越しが、壱郎の熱で乾いた喉を潤す。
ワインを飲み下すと、ドッと胃の奥からアルコールの火照りが腹の内から湧き上がった。
そんなアルコールから来る酔いと病の虚脱感が混じり合い、壱郎の精神に変な高揚感が生まれる。

「へへ…、何か…、泥棒にでもなった気分になるなぁ~っ。」
「ふふふ♪じゃあ、寝室に忍び込んでみましょうか…♪」

グラスをテーブルへ置き、壱郎は忍び足で寝室へと向かった。
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