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【1】-ザジー教団のジャイラダと呪霊箱-
■01■
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焼けた脂の薫り。
よく焼けて、縮れた鶏皮。
香ばしい鶏肉と滴る脂。
そんな良い具合に焼けた手羽元をジャイラダは素手で掴む。
躊躇なく食らい付き、手羽元の肉を口で噛み切った。
ふわりっと鼻の奥に脂の薫りが張り付き、口の中に肉汁が滲み込む。
直火で焼いた鶏をジャイラダと仲間たちは食している。
ジャイラダは年の頃30~40代の中年女性。
全体のシルエットは、ふくよかで丸い印象の女性だ。
だが、そのゆったりとした脂肪の下は、屈強な筋肉が潜んでいる。
髪は良く言えば、ウェーブのかかったセミロング。
悪く言えば手入れの行き届いていない茶髪。
彼女の周囲に座る手下達も、見るからに粗暴で野蛮な男達だった。
スキンヘッドの片側に黒い翼の入れ墨を入れた筋肉質な男。
顎鬚が汚れるのに構わず、死んだ目で鶏肉を食らう男。
その手羽元を持つ手の甲にも、鳥の翼がタトゥーで彫り込まれていた。
ジャイラダの背中、左右の肩甲骨辺りにも翼のタトゥーがある。
そんな、どこからどう見ても野盗か盗賊の類。
そして、ジャイラダと手下の前には、一列に並んで跪いている5人の男女が居る。
青年が2人、若い女が1人、身なりの良い老人が1人。
見た目の印象はバラバラだが、明らかにジャイラダ達に暴力で捕縛された風に見える。
捕虜達は、ジャイラダ達の体に彫られたタトゥーの意味を知っていた。
彼等は"ザジー"と呼ばれる集団であり、盗賊よりもタチが悪い存在だ。
「…それで…?どうなんだい…?」
「何か金目の物は持っていたかい…?」
ジャイラダは鶏に喰らい付きながら、手下へ確認する。
脂のしずくが滴るのに構わず、彼女は手羽元を口へ突っ込み、器用に骨だけを吐き出した。
そして、指に垂れ落ちた脂を丁寧に舐め取る。
「どうやら、近郊の街を行き来する商人らしくって…、大した物は持ってなかったスッ。」
「今、お頭が食っている鶏も近くの農家へ卸す予定だった品みたいスッね。」
「まあ~、多分…、身代金も期待できないスッねっ!!」
ジャイラダの顔色を伺いつつ、手下は応える。
「…そうかい、じゃあもう用済みだねぇ…。」
「"呪霊箱"を持ってきなぁっ!!」
ジャイラダの一言で、一斉に手下達が動き出す。
「待って!助けてくれぇっ!!」
捕虜の一人、老人が悲痛な叫びをあげる。
そんな声を上げた彼が、一番手に選ばれた。
「ほらっ!来いっ!!お前らは、偉大なるバトラマールナ女神の贄となるんだっ!!」
「助けてっ!!お願いだっ!!助けてくれぇぃっ!!」
嫌がる彼を男達は両脇から抱え、強引に引きずり出す。
屈強な男達相手では、老人が暴れた所で大した抵抗にはならない。
老人は土下座させられ、ぐっと頭を抑え込まれる。
手下の一人が大事そうに何かを持って現れた。
ジャイラダが"呪霊箱"と言った物体。
四角錘に近い台形な物体であった。
それには、持ち運びする用の吊り下げハンドルがついていた。
手下はその部分を持ち、まるでランタンを持つように運んでくる。
四角錘の各面には、幾重にも刻まれた複雑な文様が彫り込まれている。
文様はキラキラと輝いているが、それは、美しさよりも下品で安っぽい輝きに見えた。
別の手下が木箱を設置すると、その不可思議な"呪霊箱"を木箱の上へ置いた。
よく焼けて、縮れた鶏皮。
香ばしい鶏肉と滴る脂。
そんな良い具合に焼けた手羽元をジャイラダは素手で掴む。
躊躇なく食らい付き、手羽元の肉を口で噛み切った。
ふわりっと鼻の奥に脂の薫りが張り付き、口の中に肉汁が滲み込む。
直火で焼いた鶏をジャイラダと仲間たちは食している。
ジャイラダは年の頃30~40代の中年女性。
全体のシルエットは、ふくよかで丸い印象の女性だ。
だが、そのゆったりとした脂肪の下は、屈強な筋肉が潜んでいる。
髪は良く言えば、ウェーブのかかったセミロング。
悪く言えば手入れの行き届いていない茶髪。
彼女の周囲に座る手下達も、見るからに粗暴で野蛮な男達だった。
スキンヘッドの片側に黒い翼の入れ墨を入れた筋肉質な男。
顎鬚が汚れるのに構わず、死んだ目で鶏肉を食らう男。
その手羽元を持つ手の甲にも、鳥の翼がタトゥーで彫り込まれていた。
ジャイラダの背中、左右の肩甲骨辺りにも翼のタトゥーがある。
そんな、どこからどう見ても野盗か盗賊の類。
そして、ジャイラダと手下の前には、一列に並んで跪いている5人の男女が居る。
青年が2人、若い女が1人、身なりの良い老人が1人。
見た目の印象はバラバラだが、明らかにジャイラダ達に暴力で捕縛された風に見える。
捕虜達は、ジャイラダ達の体に彫られたタトゥーの意味を知っていた。
彼等は"ザジー"と呼ばれる集団であり、盗賊よりもタチが悪い存在だ。
「…それで…?どうなんだい…?」
「何か金目の物は持っていたかい…?」
ジャイラダは鶏に喰らい付きながら、手下へ確認する。
脂のしずくが滴るのに構わず、彼女は手羽元を口へ突っ込み、器用に骨だけを吐き出した。
そして、指に垂れ落ちた脂を丁寧に舐め取る。
「どうやら、近郊の街を行き来する商人らしくって…、大した物は持ってなかったスッ。」
「今、お頭が食っている鶏も近くの農家へ卸す予定だった品みたいスッね。」
「まあ~、多分…、身代金も期待できないスッねっ!!」
ジャイラダの顔色を伺いつつ、手下は応える。
「…そうかい、じゃあもう用済みだねぇ…。」
「"呪霊箱"を持ってきなぁっ!!」
ジャイラダの一言で、一斉に手下達が動き出す。
「待って!助けてくれぇっ!!」
捕虜の一人、老人が悲痛な叫びをあげる。
そんな声を上げた彼が、一番手に選ばれた。
「ほらっ!来いっ!!お前らは、偉大なるバトラマールナ女神の贄となるんだっ!!」
「助けてっ!!お願いだっ!!助けてくれぇぃっ!!」
嫌がる彼を男達は両脇から抱え、強引に引きずり出す。
屈強な男達相手では、老人が暴れた所で大した抵抗にはならない。
老人は土下座させられ、ぐっと頭を抑え込まれる。
手下の一人が大事そうに何かを持って現れた。
ジャイラダが"呪霊箱"と言った物体。
四角錘に近い台形な物体であった。
それには、持ち運びする用の吊り下げハンドルがついていた。
手下はその部分を持ち、まるでランタンを持つように運んでくる。
四角錘の各面には、幾重にも刻まれた複雑な文様が彫り込まれている。
文様はキラキラと輝いているが、それは、美しさよりも下品で安っぽい輝きに見えた。
別の手下が木箱を設置すると、その不可思議な"呪霊箱"を木箱の上へ置いた。
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