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序章 フユマサとアキシロ
一話
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建て増しに次ぐ建て増し。縦横無尽に連なる、コンクリート建築の群れ。そのどれもが個性を主張してカラフルに塗装されている。
路地裏。
右手で男を殴りつけた。ナックルダスターの鉄で、鼻の骨が砕けた。男の鼻から血が噴き出す。男は地面に倒れた。這って俺たちから離れようとする。足に力が入らないようだ。
「返すぜ」
アキシロの投げたナイフが、男の左肩に突き刺さる。悲鳴を聞いた。高価そうな白いスーツに血が滲む。
「デリラって店で遊んだだろう。ヨイハナって名前の女の子、覚えてるはずだ」
俺が言うと男は”知らない”を連呼した。
チラりとアキシロの方を見る。キレすぎて歯茎が剥き出しになっていた。時々、相棒を獣のようだと思う。
「随分と乱暴な遊び方だったらしいじゃあないか。顔が倍ぐらいに腫れてたぜ」
「金は払っただろ、何が不満なんだ。殴られてあの娘よろこんでたぜ」この期に及んでこいつは。
アキシロが男に大股で歩み寄る。肩のナイフを乱暴に引き抜いた。また悲鳴。
「クソがッ、お前ら何者だよ。俺のこと知らねぇのかよ」男が呻くように言った。
「ミドルでは有名人なのか? サインもらっとくかアキシロ」
「いらねぇ」アキシロが抜いたばかりのナイフを、次は右肩に刺そうとした。
金属音。
アキシロが突然吹き飛んだ。俺の脇を抜けて壁に激突した。
「アキシロ!」気を失っている。呼びかけても返事がない。
男は立ち上がっていた。スーツの右が裂けて機械の腕が覗いている。
「くそったれ、サイボーグ野郎かよ」首を嫌な汗が伝った。
「本当は使っちゃあダメなんだけど、緊急事態だからねぇ」男は袖で鼻血を拭うとニタニタ笑った。
サイバネは神経や脳にも作用する。おそらく男は痛覚を遮断していたはずだ。わざと痛がって俺たちで遊んでいたらしい。趣味が悪い。
左手にもダスターを付けた。ボクシングのオーソドックスで構える。
「戦う気でいるのかよぉ、お前よぉ」男が駆けだした。
勢いにまかせた大振りの右が飛んでくる。ダッキング。屈んで脇に潜り込む。同時に右フック。股間を狙ったが効いていない。やはり痛覚を切っている。男の裏拳が側頭部を掠める。人工筋肉の駆動音がきこえた。生きた心地がしない。一度離れる。
「悪いな不能にしちまったみたいでよ」挑発する。時間を稼ぎたかった。起きてくれアキシロ。一人じゃ厳しいぜ。
「気にするなよ、どうせナニも機械にする予定だったからな」言いながら男が距離を詰めてくる。挑発は失敗。一人でやるしかなさそうだ。
路地裏。
右手で男を殴りつけた。ナックルダスターの鉄で、鼻の骨が砕けた。男の鼻から血が噴き出す。男は地面に倒れた。這って俺たちから離れようとする。足に力が入らないようだ。
「返すぜ」
アキシロの投げたナイフが、男の左肩に突き刺さる。悲鳴を聞いた。高価そうな白いスーツに血が滲む。
「デリラって店で遊んだだろう。ヨイハナって名前の女の子、覚えてるはずだ」
俺が言うと男は”知らない”を連呼した。
チラりとアキシロの方を見る。キレすぎて歯茎が剥き出しになっていた。時々、相棒を獣のようだと思う。
「随分と乱暴な遊び方だったらしいじゃあないか。顔が倍ぐらいに腫れてたぜ」
「金は払っただろ、何が不満なんだ。殴られてあの娘よろこんでたぜ」この期に及んでこいつは。
アキシロが男に大股で歩み寄る。肩のナイフを乱暴に引き抜いた。また悲鳴。
「クソがッ、お前ら何者だよ。俺のこと知らねぇのかよ」男が呻くように言った。
「ミドルでは有名人なのか? サインもらっとくかアキシロ」
「いらねぇ」アキシロが抜いたばかりのナイフを、次は右肩に刺そうとした。
金属音。
アキシロが突然吹き飛んだ。俺の脇を抜けて壁に激突した。
「アキシロ!」気を失っている。呼びかけても返事がない。
男は立ち上がっていた。スーツの右が裂けて機械の腕が覗いている。
「くそったれ、サイボーグ野郎かよ」首を嫌な汗が伝った。
「本当は使っちゃあダメなんだけど、緊急事態だからねぇ」男は袖で鼻血を拭うとニタニタ笑った。
サイバネは神経や脳にも作用する。おそらく男は痛覚を遮断していたはずだ。わざと痛がって俺たちで遊んでいたらしい。趣味が悪い。
左手にもダスターを付けた。ボクシングのオーソドックスで構える。
「戦う気でいるのかよぉ、お前よぉ」男が駆けだした。
勢いにまかせた大振りの右が飛んでくる。ダッキング。屈んで脇に潜り込む。同時に右フック。股間を狙ったが効いていない。やはり痛覚を切っている。男の裏拳が側頭部を掠める。人工筋肉の駆動音がきこえた。生きた心地がしない。一度離れる。
「悪いな不能にしちまったみたいでよ」挑発する。時間を稼ぎたかった。起きてくれアキシロ。一人じゃ厳しいぜ。
「気にするなよ、どうせナニも機械にする予定だったからな」言いながら男が距離を詰めてくる。挑発は失敗。一人でやるしかなさそうだ。
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