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柒号
15P
しおりを挟む「――ごめんライト、もう平気だから。ありがと」
命の恩人、いや、心の恩人ともいえるライトの肩を涙と鼻水で濡らしたヒロキは顔を上げ、もう1度謝った。
「うっわ、ほんっとごめん。俺が責任をもって洗濯するから、とりあえずこれに着替えて」
「これぐらいすぐに乾く。あぁ……やっと、昔の目に戻ったね。よかったよかった」
「目?あー、スゲー熱いわ。めっちゃ赤く腫れてんでしょ?しばらく誰にも見せらんない顔だよなぁ。ま、謹慎くらってるしちょうどいいか」
1度は断ったものの、ヒロキが無理矢理脱がしにかかったので仕方なく上着を脱いで彼の上着を羽織った。肩だけでなく背中のあたりまで広範囲に濡れている。
涙だけじゃなくて鼻水も遠慮なく垂らしたな。心の広い広いライトでもさすがに少し引いて「ひっ」と小さな声が出た。
ヒロキの意外な行動にライトは笑い、ジッと見つめる。昔の、ハルヒを失う前の瞳だ。
明るく透き通った、光を宿した瞳。子供っぽさはまだあるけれど、時に油断のない、力強く鋭い野心の宿る瞳。自信に満ちた瞳。
安堵したライトは立ち上がり、ドアの前で振り返った。
「スッキリしたのはいいけど、これ以上サボりはダメだよ。次サボったらその時は……ね?」
ニッコリ。ヒロキの体がビクッと震えるほどの怒りを顔に張り付けて見せたライトは、そのまま部屋を出ていった。
「次サボったらどうなるんだよ。怖いなぁ。でも…………ちょっと、怖いもの見たさにサボってみよかなぁ」
やめておけ。しかしサボるだろう。少しはマシになっても、女遊びをやめることはないんだろう。それが鳴神ヒロキだ。
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