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弐号
4P
しおりを挟む新たな敵を前にして取り逃がした、しかも覚えていないのだから自分を責めずにはいられない。彼はとても真面目だ。
「…………ストップ。喉が渇いたから休憩しよう。ジュース買ってくるから、そこに座ってちょっと待ってて」
「ジュースくらい僕が買いにっ――行くのに。はぁ、もう行っちゃったよ」
ふいに立ち止まって目を閉じていたライトがそう言って、近くには見当たらない自動販売機を探しに去って行った。
仕方なくシャノンは彼が指さしたベンチに座り溜め息を吐く。気を使わせてしまった、とでも考えているのか。
ここから1番近くの自動販売機までは歩いて3分ほどだ。しかし10分経っても姿が見えない。まさか、ジュースを選ぶのに迷っている?
誰よりも仲間思いで優しいライトなら十分あり得る。シャノンは大人しく目を閉じて待った。
昨日の朝のこと、もう1度よく思い出してみよう。車から降りてビルの屋上に上がり、瞬間移動でいくつものビルを飛んだ。
ライトが言っていたモスグリーンのビルに立ってすぐ、隣のビルの屋上から卵を見下ろす黒い人を発見。
なんとなく、纏っている雰囲気から人間ではないことを悟り常に携帯している銃を撃った。もちろん威嚇射撃だ。
放たれた弾丸は黒い人の顔の横あたりを通り、一瞬だけ影に穴が開いた。人間と同じ頬の端が見えた。
そうだ、シャノンは本当はわずかに顔を見ている。だが、どれだけ思い出そうとしても脳が悲鳴を上げ激痛が走るだけで思い出せない。
黒い人に記憶を消されたのだ。黒い男が重力を操る特殊能力を持っているように、黒い人もまた何かしらの特殊能力を持っている。
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