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参号
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しおりを挟む「オッサンにはまだ早い。己はまだ29だ、お兄さんだ」
「もうすぐじゃんかー。29も30も、そんな変わら――んぶっ!し、舌噛んだ……」
「全然違う。響きが違う。お前達にはわからないだろうが、老いほど怖いものはない。肉体の衰えを実感する。己の職業上、衰えには敏感なんだ」
レンマが失礼なことを口走るたび、サクマが彼の脳天に拳を叩き落とす。レンマも懲りないな。
29歳という割に、サクマはよくもう少し年上だと思われることが多い。というのも、しゃべり方やしぐさ、立ち居振る舞いがいちいち大人びている。
自分のことを「己」と言うあたり、どこぞの道場の師範か何かだと思う者は少なくはないだろう。
実際はどこぞの軍隊の凄腕隊長だったが。月のゆりかごに入社したのがつい数年前のことらしいが、良い噂が絶えない。
率いた軍隊はほぼ圧勝、敗北しても敵の重要な情報をつかんで戻ってくるとか。優しさも厳しさもきっちり兼ねそろえた優秀な人材。
あと、嘘か真か、1人で敵の猛者100人を一気に血祭りにあげたという噂もある。これに関しては本人は目を閉じ口をつぐみ耳を塞いでしまう。
まぁとにかく、すごい人物なのだ。人間の身でありながら、人間最強の戦闘員。
「で、己も同行していいのか?」
「ん、あぁ、えぇけど。なんや緊張するわ。せや、禁煙やさかい着いたらタバコ吸ったらあかんで?」
「了解した。何年振りかだ、ゲームもだいぶ変わっているだろうから勉強したい。今の時代はどんなゲームが流行っているんだ?」
「ま、真面目やなぁ……」
サクマが言った、何年振りかは嘘だ。本当は彼は、娯楽施設には全く行ったことがない。わけあって1度も、遊びをしたことがない。
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