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壱号
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しおりを挟むコードネーム壱号。それが、彼が月のゆりかごで呼ばれる名前。
実験用のマウスではないのだから、かわいそうだといってチユニが新しく付けた彼の名前が、神月ライト。
最初のmoon childで、誰よりも深くどうやっても消せない、もうどうしようもない闇を抱いている。誰も知らない、ライトの秘密。
「――今、何て言ったんだい?良く聞こえなかったからもう1度言ってくれないかな、ライト」
「こうなることを知っていたと言ったんです。俺は、この光景を見ていました。わかってて何もしませんでした。あなたに何も、言いませんでした」
ミレイナの怪我が治らないと発覚した翌日の朝。研究室に月子9人とチユニ、サクマがそろい踏み。
ここにいたはずの2人はいない。代わりに、部屋を満たしていた機械と薬品の匂いは鉄の匂いで満ちている。赤と、それから黒で彩られた部屋。
床も壁も天井も、置いてある機材や仮眠をとる用の1人がけソファーも血で赤く濡れている。
黒は、小カラスの黒。5羽いたらしいカラスの小カラスは無残にも切り刻まれ、バラバラ。漆黒の羽根があたりに散らばり血でくっついてしまっている。
誰がこんなことを?神楽だ。正しくは、神楽と誰かだ。襲われたカラスは瀕死の重傷を負い、今は街の大きな病院で眠っている。
体中を鋭利な刃物で大きく何度も斬られていて、骨まで達している所もある。胸を突き刺されているのが致命傷だがギリギリ、心臓は外れていた。
かろうじて生きているものの油断はできない。ここで何があったのか、知っているのはカラスだけ。真実を知るには時間がかかりすぎる。
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