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黒いカラス
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しおりを挟む「…………ねぇ神楽さん。カァ子はね、moon childが生まれた理由はわからない。でも、ライトが他の子達とは違う、あなたと特別な関係があるのはわかるよ」
左手でビーカーの中身をかき回しながら、右手でパソコンのキーボードを叩きながら、黒い目は顕微鏡を覗きながら、唐突に呟いたカラス。
神楽の手がピタリ止まり、沈黙の中に彼女が叩くキーボードのカタカタという音とかき混ぜるガラス棒とビーカーが触れるカランカランという音が聞こえる。
そしてまたノートにペンを走らせる。その手がわずかに震えているのは、背を向けているカラスには見えない。
「神楽さん。月子を、ライトをどう思ってる?カァ子が知らないこと、知ってるんじゃない?」
何を根拠に、なぜ今そんなことを言ってしまったのか、それはカラス本人にしかわからない。
しかし確信はある。でなければこんなにも堂々と本人に、こんなことを言うことはない。確かめたかったわけではなく、ただふとそう思ったから口に出しただけ。
それだけで十分だった。神楽の手を止めさせるには、立ち上がらせ、静かにカラスの背後に立つにはそれだけで。
「君は時々、鋭い野生の勘が働くなぁ。気づいても口に出さなければよかったのに」
「かぐ、ら……さん……?」
「残念だ。あぁ、非常に残念だな」
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