moon child

那月

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黒いカラス

9P

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「…………ねぇ神楽さん。カァ子はね、moon childが生まれた理由はわからない。でも、ライトが他の子達とは違う、あなたと特別な関係があるのはわかるよ」


 左手でビーカーの中身をかき回しながら、右手でパソコンのキーボードを叩きながら、黒い目は顕微鏡を覗きながら、唐突に呟いたカラス。


 神楽の手がピタリ止まり、沈黙の中に彼女が叩くキーボードのカタカタという音とかき混ぜるガラス棒とビーカーが触れるカランカランという音が聞こえる。


 そしてまたノートにペンを走らせる。その手がわずかに震えているのは、背を向けているカラスには見えない。


「神楽さん。月子を、ライトをどう思ってる?カァ子が知らないこと、知ってるんじゃない?」


 何を根拠に、なぜ今そんなことを言ってしまったのか、それはカラス本人にしかわからない。


 しかし確信はある。でなければこんなにも堂々と本人に、こんなことを言うことはない。確かめたかったわけではなく、ただふとそう思ったから口に出しただけ。


 それだけで十分だった。神楽の手を止めさせるには、立ち上がらせ、静かにカラスの背後に立つにはそれだけで。


「君は時々、鋭い野生の勘が働くなぁ。気づいても口に出さなければよかったのに」


「かぐ、ら……さん……?」


「残念だ。あぁ、非常に残念だな」



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