moon child

那月

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神楽とチユニ

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「私…………神楽君が自分から何かしたいって言うの、聞いたことないや。もっとちゃんと、話を聞いてあげればよかった」


 背後霊のような神楽を振り向き、目を合わせ、手を握っていればよかった。突き放す勇気が、チユニにはなかった。


 神楽のことを想えば想うほど、後悔があふれる。どうしてもっと早くに気付いてあげられなかったのだろう。


 いくら後悔したところで、過去はどうにも変えられないというのに。それでも後悔するのが人間。


「神楽さんはまだ自分を知らない、知らないまま闇に呑まれた。今のあの人は――」


「邪神、ですよ」


 いつからそこにいたのか、ドアを開けてシャノンが入ってきた。続いてレンマ、ルカ、ハクト、レナ、ヒロキ、ユラもやってくる。


 皆、あちこちケガだらけで血がにじんでいる所を隠している。心配性のチユニに気を使ってのことだろう。


「カラスはライトに聞いたんですよね?僕達は皆感じているんです。今の神楽さんから、邪神の存在を」


「神様は存在するんや。姿は見えんでも、誰かが“おる”言うたらそん人の心の中に生まれる。誰かの想いの強さが、神様の強さに比例するんや」


「良い神様も悪い神様も、そう。宗教団体が1人の神様を崇拝するなら、その神様は信者全員の想いを力にできる」


「神楽さんの邪神、は……主が“いる”と信じている神様が神楽さんの強すぎる闇に引き込まれて進化した、バケモノ……」


「どーして主を恨んでるのかはわからないけどおぉ、神楽さんからすごい嫉妬とか絶望とかいら立ちを感じるのよおぉ」


「それに、それを覆い隠すほどの高揚と、希望な。あの人今、本気でこの世界を神のものに造り替えようとウキウキしてる、そんな感じなんだよねー」


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