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神楽とチユニ
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しおりを挟む神楽にとってチユニはあこがれの存在だった。同時に、どうしても越えられない壁でもあった。
チユニの背中を追いかけ続けるあまり、彼は他に目を向けることをしなかった。チユニが踏んでできた道をたどるだけで、他に興味を持てなかった。
与えられたものしか見ず、自分で考え選び道を創ることのなかった神楽。それではいけないと、叱ってくれる者もいない。
そんな神楽が大人になり月のゆりかごに就職すると、今度はチユニと同じではいられない。
良くも悪くも初めて現実という名の社会の厳しさを知り、ある日ふと自分の人生を考え直す時があった。今までの自分の行いは間違っていたのか、と。
間違いというわけではない。自分を知らなかっただけ。ただ、神楽の心は揺れていた。そんな時だ、最初のmoon childに出会ったのは。
さぞ衝撃的だっただろう。それはあまりにも自分に似ていない。自由で、誰の助けも必要としない。想うがままに生きる。
神楽はどうだ?年が近い従弟同士で同居していることもあって、よく夫婦と間違われる。が、実際は親子のような関係だ。
世にいう上げ膳据え膳。家事は全てチユニが担っているし、神楽の服は一緒に買いに行ってチユニが選んでいる。神楽は「どれでもいい」しか言わないから。
仕事だけまともに真面目にこなしているだけで、ただ“生きている”だけの人形のよう。
得意なことをやるだけで、自分自身に全く興味がない。といえばしっくりくるか。今までの人生も、意味があったのか。
なぜチユニと同じ大学や職場を選んだのか?ずっとチユニの後ろにいたから。他にやりたいことはなかったのか?他に何があるのか知らない。なら、これからは?
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