moon child

那月

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決意と意志

10P

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 代わりに喝を入れたシャノンだが。彼もまた、いつものことなのでわずかに頬を緩めて傍観していた。


「主ぃ、ショックすぎて気持ちの整理がつかないんでしょぉお?あたし達だって、これでも一生懸命考えて話し合ったのよおぉ」


「邪神は必ず倒す。あわよくば、神楽さんを救う。ライトも」


「だめ、だよ………………君達がいないと、私は…………せっかく、家族になれたのに。苦しいよ。こんな……………………でも……君達がそれを選ぶのなら私は、もう止めない」


 チユニは頬を涙で濡らし、ちょっと鼻水を垂らしながら顔を上げた。黒縁眼鏡の奥にある黒い瞳は涙で揺れ、月子達を見渡す。


「私はもう逃げない。私がやるべき役割を、果たす。だからっ……」


 両手の拳を握り締め、歯を食いしばり発狂しそうになるのを必死に堪える。きっと彼女には、邪神の倒し方を聞いた時から最終的にこうなるとわかっていたのだろう。


 なにせ彼女は月子達の母親的存在。子供達が考えることなんてお見通しだ。


 そして、母親だからこそ子供達が死を選ぶのを受け入れたくなかった。何としてでも止めたい。それが我が侭だとしても、人間が滅ぼされようと阻止したいのが本音。


 いや違うな。深層心理ではそんなことを望んではいない。本当にチユニが望んでいるのは、月子達の望み通りにさせてあげること。


 だから彼女は耐えた。自分には別の、やるべきことがあるとわかっているから。離れ離れになって、月子達の最期の勇姿を見ることはできないけれど。


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