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涙のあと
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しおりを挟む「――今日はね、皆に重大発表があるんだよ」
チユニはそっと呟いた。彼らの故郷らしきこの月に、彼らの魂が戻ってきていると信じて言葉を続ける。
「結婚、決めたんだ。45歳にもなってやっとだよ?もうずっと独身のままで終わってもいいやって思ってたんだけどね、そうさせてくれなかった人がいたんだ」
チユニはライトに出会うまでは仕事に打ち込み、出会ってからは彼らを家族として日々を過ごしてきた。
そしてその家族を一気に失い、新たな家族をと考えることはとてもできなかった。しかしそんな彼女をずっと見てきた社員の1人が声をかけた。
10歳年下の平社員。彼は丁重にフラれて、喧嘩になって、無視されても声をかけ続けた。3年もの長い猛アタックの末、ようやくゴールイン。
「自分でも嫌になるくらい幸せなんだよ。君達のことを考えると、私は幸せになんてなってはいけないはずなのに……」
いまだに彼らのことをズルズル引きずっているのはチユニだけだ。カラスなんて、働けるようになったらすぐに研究に没頭している。
家族も同然の小カラスを何羽も失ってもなお、自分がやるべきことに専念している。今は確か、新たに採取した月の欠片の成分を分析して生命がいるかどうかとか、研究しているらしい。
両足が動かなくなってしまった彼女は自分専用の特殊な車いすを自作。高い位置にあるものを取る時はひじ掛けから腕が伸びて取れるし、段差は足が2本生えてきて上り下りできる。
適当な場所で寝ようものなら背もたれが倒れて足元が伸びてサイドから毛布が、頭付近から枕が出現。他にもおやつや研究道具などが大量に収納されていたり。とにかくありえないほどの超多機能。
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