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勝利の美酒に酔いしれるは孤独なケモノ
6P
しおりを挟む「…………目が覚めちまったじゃねぇか」
ゆったりとした時間が流れて目を閉じる。が、なぜか今からバンバン働けと言わんばかりに頭がスッキリしてしまって自然とまぶたが開く。
俺は起き上がって体を伸ばすと、少し横になっただけだというのに背中がパキパキと鳴った。その背中を、兄貴が叩いた。
笑いながら「じゃあ、捕らわれのお姫様の様子を見に行こう」と背中を押す。そろそろ目を覚ましている頃合いか。
リアのツラを拝めばこの違和感の正体もわかるか。モヤモヤモヤモヤしてイライラする。まるで、記憶を失った時みたいだ。
ビルの15階には主に倉庫があり、他は狭い小部屋が5つほど。その小部屋の1つにリアをブチ込んでいる。
「こんなところで何をしてる、ジャック」
「あ、総長!お疲れ様ッス。えーっと、とりゃんすぜんだー?僕、本物を見るのは初めてで、スッゲー綺麗な人だったからもっと近くで見たいと思って!」
ドアを開けるとまず見張りの男が3人。椅子の上に正座して目を輝かせている、無邪気で元気いっぱいなジャックが振り返った。
言葉も違えばイントネーションも大間違い。新しい人種の名称にも聞こえたぞ。うろ覚えだが、男が女になっているということは理解しているな。
「ジャック、この子は見世物じゃない。俺達と同じ人間で、逆境をものともせず己を誇りに思い貫き通す強い心を持った、トランスジェンダーだ」
父親として、息子のジャックに正しい発音を覚えさせるアラン。大きな手で小さな顎をつかみ、グググッと力を込める。しつけだな。
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