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勝利の美酒に酔いしれるは孤独なケモノ
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しおりを挟むそれは脅しか芝居か?自分は今の俺が欠落しているものを持っているから、そう言えば殺されるようなことはないと考えたのか。
それとも本気で俺の過去を知っているのか。どっちだ?俺と1番長く一緒にいるアランに目を向ける。
アランは、首を横に振った。はっきり「知らないな」と言って、リアに鋭い目を向ける。
7年前までほとんど一緒にいた兄のアランがそう断言するんだ、リアは俺の過去に関係ない。アランは俺に嘘を吐かないからな。
だが、アランから視線をリアに戻すと、驚いた。リアは悔しそうに、寂しそうに俺を見つめていたから。
「アンタにお兄さんがいるっていうのは話で聞いていたわ。でも仕事が忙しいからって会ったことはない。このビルはアンタ達の実家を取り壊した後に建てられたもので、庭にあった大きな池はまだ残っているのよね」
俺とアランは同時に息をのんだ。合っている。リアが言ったことは全て事実で、そして家族しか知らないはず。
リアは「他にも色々知ってるわよ」と、力なく溜め息を吐いた。何だ?さっきまでは強気だったのに、急にやる気をなくしてぐったりする。
俺を見てすらいない。光が弱くなった真紅の瞳はスッと影が差して、虚無を映す。
何かを諦めたような儚げな表情は、それすらも俺には美しく見えた。元が綺麗だからだろう。そうだろう。頼む、そうであってくれ。
「同じ名前だったからまさかとは思ったけど、ヤクザだったなんて……」
リアの呟きが俺の胸に突き刺さる。違和感と似ている。これが演技だとは思えないし、だとしたらこいつは誰だ?
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