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危ない熱情
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しおりを挟む未だに脳ミソは煮えたぎっているが、リアの顔を見て冷静になった。
怯えている。触れた瞬間に肩がビクンッ!と跳ね、屋上で犯してやった時とは違う、死を感じたような心からの恐怖に怯えている。
「泣け。もうギオはここにはいない、安心しろ。我慢しねぇで流した涙は、俺が全部受け止めてやる」
これは無意識だ。俺の両腕はリアの震える体を抱きしめ、口からは優しく温かい言葉が紡がれる。これが俺だとは思えないくらいだ。
ギオへの怒りやらなんやら、腹の底で渦巻くドス黒いものは一旦捨て置く。今は、リアと向き合いたい。
「ノ、ル……?ノル、ノルウェム……何回も、呼んだのにっ……うっ、遅いよ……ふ、うぅっ、ノル……」
震える声が俺の名前を呼ぶ。偽りなく呼び慣れているこの声を、俺は本当に覚えていないのか。
成長の過程で顔が変わっても、女になって化粧をしていても、声は変わらない。この耳に心地よい声で昔、俺と話をしていたのか。
もはやすっぴん同然の顔になってしまったリアは俺の背中に恐る恐る腕を回す。後頭部を自分の胸に軽く押し付けると、声を上げて泣いた。
必死にしがみついて、怪力だから俺の口からうめき声が漏れちまうほどに痛い。けどな、そんなの気にならねぇってくらい強く抱きしめてやるんだ。
俺の胸をテメェの涙で濡らすのも許してやる、特別だ。これは俺の身内の失態だからな。そもそも、ギオを信用した俺に落ち度がある。
悪いのはこっちだ。認め、謝るくらいはするさ。ヤクザと言ってもちゃんとした大人の社会人だ、それくらいの常識はある。
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