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帰宅、アタシの居場所
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しおりを挟む彼女達みたいにトランスジェンダーを面白がったり、目を背けたりする人は多い。そんな人がいるから、同じトランスジェンダーでも隠れて生きている、ひっそりと“本当の自分”を押し殺している人達がいる。
受け入れられなくても、それでも胸を張って堂々と生きてみると案外、こんな世界でも楽しいって思えるわよ。
どんなに苦しくて辛い毎日でも。どんなに声をかけても手を伸ばしても、目を向けてくれないし振り払われる、そんな毎日でも。
どこかで必ず楽しいって思えることはあるんだから。何があっても“本当の自分”を疑ったり拒絶しちゃいけないの。
「じ、冗談よ。筆頭のことだってシャオリンのことだって尊敬し――」
「そうやって笑うて誤魔化す。行き場がないから、ここにいたいから取り繕うんやったら私があんた達を蹴り出したるわ」
小さな体に殺意をまとわせてギロッと睨むイチカを、アタシは優しく抱きしめた。
「だめよイチカ。あんた達も、スカーレット・ローズがどんな集まりかわかってるんなら口を慎みなさい。仏の顔も三度までって言うけど、アタシは仏様じゃないから…………2度目はないわよ」
イチカは優しいのよ。しゃべりはちょっと乱暴だけど、悪口には人一倍敏感。彼女自身、その体のせいで辛い目に遭ってきたんだものね。
目を伏せて言ったアタシの言葉が効いたのか、彼女達はシュンと目を反らして部屋から出て行った。
留まるのも立ち去るのも、好きになさい。アタシは引き止めないから。ううん、アタシには引き止めることなんてできないの。
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