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追われる者
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しおりを挟む「力入れて握ったでしょ?硬いよ。病人には酷なおにぎりだね。けど…………おいしい。コンビニの方が美味しいかもだけど、たまには食べたくなる。卵焼きも、こっちはすっごい美味しい」
いけない、卵焼きが美味しすぎて気を取られていたわ。シャオリンがいつの間にかおにぎりを半分くらい食べていたの。
チビチビだけど、一口かじっては眺めまたかじっては眺めている。咀嚼もゆっくりで、だけど確かに食べている。
アタシと同じおかかが入った、ご飯粒とご飯粒の隙間が全然ないくらいしっかり握られたおにぎり。それだけ、一生懸命に握ってくれたのよ。
他と比べて小さいからって選んだんでしょうけど、アタシから見ても硬そう。大丈夫よ、しっかり噛めば甘くなるから。
シャオリンらしい素直じゃない感想。卵焼きをかじって驚いているわ。そうよね、これはプロ級よね。
「慌てないで、水分も摂ってゆっくり食べなさい。アタシも皆もそばにいるからね」
シャオリンは時間をかけておにぎりを1つ食べきり、2つ目は綺麗なものを選んだ。その間に卵焼きを3つも食べていたわね。
2つ目は昆布だったみたい。「これはこれで美味しい」って、わずかに一口の量が増えて、2つ目の半分くらいを食べたくらいで手が止まった。
お茶を飲んで、それでも手は下ろしたままセイフォンに目を向ける。
「吐くならここで吐きなさい。アタシが受け止めてあげるって言ったでしょ?汚れても掃除してあげるから、気にしないで。それでも、作ってくれた人の目の前でなんてって?」
肩を抱いて移動させようとしたセイフォンの手を外し、アタシはシャオリンの前にしゃがむ。
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