アイデンティティ

那月

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ハートビート

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 イチカに何が食べたいか聞かれて「ハンバーグがいいわね」って注文してあげると、目が泳いだ。
 

 おにぎりの次がハンバーグはハードルが高かったかしら?「カレーでもいいわよ」って言ってみたけど「玉ねぎに泣かされるのが嫌なだけや、一生懸命作ったるさかいお腹すかせとき」ってツンデレ降臨。

 
 もう、いちいち可愛いんだから!可愛くて可愛くてつい、ギューッて抱きしめちゃったわ。そんな時に仲間が来ちゃったからドン引きされたのよ。
 

 玉ねぎに怯えるイチカを預け、アタシはスマホのナビを頼りにシャオリンとセイフォンが暮らす新しい家へと向かった。マンションとかアパートじゃないみたい。

 
 ピンポーン。って鳴らしたかったのに、インターホンがない。街のはずれにあるその家はボロい小さな平屋。ちょっとした山の中にあるんだけど。

 
 玄関に立っただけでセイフォンがお出迎え、周りを気にしつつ中に入れてくれた。やっぱりギオを警戒しているのね。

 
「ここ、わからなかったでしょ。住所はあるけど何年も前に空き家になった、持ち主が他界して誰も管理していない隠れ家なんだよ」

 
 リビングで待っていたシャオリンはそう言うけど、つまりは不法侵入というか不法居住よね。

 
 電気ガス水道は全て止まっているから明かりはランタン、水は少し離れた所にある井戸からセイフォンが汲んでくる。ガスは必要ない。

 
「はい、引っ越し祝い。甘くない、ビターチョコのクッキーよ。アタシの行きつけのお菓子屋だから味は保障するわ。セイフォンは……食べられないわよね?」

 
「飲食できるロボットがあれば世界中が湧いてんだろ。眠ることはできるが、飲食はできねーよ」

 

 
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