ユキ・シオン

那月

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先生に拾われました

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「本当にごめん、こんなはずじゃなかったんだよ。早くお前に……あぁ、そうだったそうだった」


 チラッと隣に目を向けてみれば先生、脇腹を摩りながらガチへこみ。かき揚げがカップの直径と同じに膨らんでフタになってんじゃん、面白い。ざまぁ。


 しかもよりによって大盛りとか、食べきれるのかよ?俺がたまにカップを置いて休憩しながら食べ進めていると、先生が顔を向ける。


「お前、名前は何て言うんだ?ネコヒメって通り名しか知らないんだよ」


 はぁ、名前?今さら過ぎるだろ。でもまぁ、そういえば言ってなかったな。俺は箸をケータイに持ち替えて、画面に名前を打ち込む。


「“シオン”?こりゃあまた可愛い名前だこと。ん?“あんたは?”あー、オジサンは猫屋敷悠一。知り合いからはネコヤンって呼ばれてるよ」


 名前を知らねぇのは俺も同じだっての。猫屋敷とか、そっちの方が笑えるだろ。


 俺は本物のネコだぞ。あ、生物の猫の方だ。ネコタチのネコでもあるけどな。言えねぇのがちょっと残念。からかいたかった。


 さらに“猫アレルギーだったらウケる”と打つ。違うのは知ってるからな。


「猫アレルギーなぁ。オジサンは違うけど、オジサンの甥っ子はそうだよ。親が……いや。猫科が好きな子だから、いつも苦しんでいる」


 今、何か言いかけたか?親がどうとか。親も猫アレルギーで大変?まさか、親が猫だとか言わねぇよな?


 この世界、俺みたいな擬人化種は絶滅危惧種よりもかなり少ない。店長先輩もいるし、そう近くに何匹もいるわけがないか。


 ……俺が本当は擬人化種で、しかも猫カフェでバイトしている、そのうえ道案内までしてやった白猫のユキだって知ったら。先生はどうする?


 ネコでネコだって笑うか?それとも、ネコでも人間でもないバケモノだと突き放すのか?



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