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悪夢再び
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しおりを挟む轟木直也はかわいそうな奴だ。昔、そんな噂があった。全てを自由に動かせる両親に両手を引かれ、自分では何もできないかわいそうな子だと。
好き勝手に生きる、親に頼めば何でもできる気楽な轟木直也。権力、容姿、表向きの性格、成績、運動、全てを兼ね備えた模範。
を、演じ続けた。
噂に、周りの人達の印象に合わせるように。そして、両親を引き立てるために。
「俺は知ってるぜ。あんたが本当はサッカーじゃなくてけん玉が好きなこと。たまに1人になったら公園に行って、帰宅孤児の子供と遊んだり勉強を教えてんの」
「…………あのガキに聞いたのか」
「いや、前にたまたま目撃した。あの時の直也、スゲー楽しそうな顔をしてたぜ?あれが本当の轟木直也。悪いことと良いことの区別も、一線を引いて立ち止まることもできてるんだろ?」
直也が初めて俺を買った時。俺にはひどく疲れたように見えた。
たとえ知らない人でも、誰かが近くにいる時は表向きの轟木直也を演じる。完全に1人きりになるまで、本性が出ないように演じ続ける。
取り巻きもいない、1人で俺に声をかけ、金を払い、俺に触れた。男相手にはあの時が初めてだったんだと思う。
俺も初めてだったし、痛くて俺が悲鳴を上げた時や血が出た時は必ず止まった。止まって、俺の様子を心配そうに見ていた。
目が合うとすぐに笑顔を張り付けて、偉そうなことを言ってさ。でも動きをゆっくりにして、俺が快楽に溺れ始めると本気になって貪り食う。
何となくで始まった直也との商売。思い返せば直也との商売は、直也から商売以上の想いを感じた。
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